聖女の時戻し
「でも、何も不都合なことは起きていないよね。」
しれっとしているのは、懐が広いからか。面倒くさいから、深掘りしたくないだけか。
ナイジェルは確かに、と納得しそうな顔をするが、直ぐにアイザックの意見に流されるのは少し心配だ。
「ナイジェル様。ご自身のご意見を、ちゃんと教えて下さい。」
とんっと腕に触れて促せば、ぱちぱちと瞬きをする。
「私の意見……。」
「それは私も聞きたいな。不都合なことは起きていない。それでも嫌だと感じる事があるのだろう。」
アイザックには適当に丸め込まれると思ったのに、チェルシーの口出しを切り捨てる事なく、ナイジェルの背中を押すように微笑んだ。
「……失敗したからといって、なかったことにするのは、違うと思います。」
「うん、そうだね。」
上手く言えない、という顔をするナイジェルに、アイザックは目を細めた。
「まぁ、全然上手くいっている気配は無いから、そんな力は持っていないだろう。」
「……時を戻していて、あの礼儀作法は酷いです。」
ジェイダが深刻そうに項垂れるので、チェルシーは同情したくなる。
「時戻しの力が発動する条件はあるのか?」
マリアの礼儀作法には興味がないアイザックがチェルシーに聞いてくる。
ゲーム上での答えは分かるのだが、内容が内容だけに言いにくく、視線をさ迷わせればそれだけで察したらしい。
「なるほど、帝国もしくは国々が滅んだ時か。」
身も蓋も無いアイザックの解に、ナイジェルが新たな疑問をはさむ。
「それでは聖女も被災するのでは?それともそれがきっかけ?」
「いや、聖女がいるからこの国は滅びないで、らすぼすに立ち向かうのだろう?」
ご都合主義というやつだ、と笑うアイザックに、チェルシーは感服する。
「ご明察です。ちなみに、これはIIの話になるので、攻略対象が新たに出てきます。」
答えは聞きたくないけれど、聞かないでいるのも怖いとジェイダが質問を挟んで来た。
「聖女はマリアのままですか?」
少しだけ期待するような気持ちに、容赦なく答える。
「マリアのままですね!これⅠの完璧な記録を引き継いだ物でIIを進めて一度ラスボスを倒すと、聖女の力で、強くてコンティニューになって、ラスボスが攻略対象に加わります。」
ナイジェルが頭痛が痛いという顔になる。
「攻略対象、というのは聖女の恋仲になる相手だったよね。」
「はい。ちなみにⅠではナイジェル様、ジェイダ様に騎士団長、宰相、辺境伯のそれぞれのご子息が攻略対象です。」
チェルシーは前世を思い出して、楽しくなってきたが、ジェイダは名前を出されて、物凄く嫌そうな表情をしていた。




