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ほうれんそう

報告・連絡・相談


「お時間を頂いて申し訳ありません。」

丁寧に頭を下げて謝罪するジェイダに、アイザックが軽く手を振るのでナイジェルは頷く。


「学園の中だし気にするな。話があるのだろう?とりあえず座ると良い。」

「はい。ありがとうございます。」

ジェイダが座れば侍女がお茶の準備を始める。

アイザックはそれを眺めつつ、話を向けた。


「他に聞かれたらまずい話か?」

「……はっきり申し上げられなくて恐縮なのですが、どちらかというと?」


マリアの身の危険という面では、聞く人間は少ない方が良いかもしれない。

何かを察したらしいチェルシーが、扇で口元を隠して目を細めた。


「マリアさんのお話ですものね。」

「ふーん?では、他の者は下がらせても?」

「メインはこの国のお前たちだ。そこは私に許可を得なくても構わない。」


頷くアイザックに、お茶の準備が終わった侍女たちが下がって行くが、護衛がひとり背後に残る。

「お前、話を聞いてたか?」

「そうですね。」

アイザックの護衛はしれっと頷くが、動く気は無いようだ。


「……まぁ、待ては出来ると思うから、気にしないで欲しい。」

気にするなと言われれば、気にしてはいけない。ジェイダは昨日のマリアとのやり取りを、余すことなく伝えた。


「その、らすぼす?というのは、何かの役職だろうか。」

「私にも理解出来なかったのですが……アレに聞くのも、ちょっと。」

ナイジェルの疑問にジェイダは申し訳無さそうに身を縮める。


「……チェルシー?」

互いにマリアの厄介さを共感し合う側で、チェルシーが天井を見て考え込むので、アイザックはとりあえず声を掛けた。


「その……ラスボスというのは、そうですね、こちらの世界で分かりやすく言うならば……魔王?」

ちなみに魔王は居ない。

魔物っぽい生き物はいるが、害獣扱いレベルなので、通じるかは不明だ。


「魔王……あぁ、建国の聖女が書いていたね。魔物を物凄く強くした生き物。」

「あ、そう言う感じなんですね。」

「……闇落ちした皇子が叔父上みたいな話で、そこで殺気撒き散らしてる男は気にしない方向か?」


うんうん、と頷くチェルシーに、ナイジェルが不服そうに言うが、自分に殺気を向けられていないので、気にしない。


「その闇落ち要因は確か……フランク第一皇子殿下ですね。えぇと、従兄が優秀でいつも比べられるから、なんとかって。」

少しばかり雑なチェルシーの説明に、アイザックは額に手を当て、頭痛を堪えるのか何かを考えているのか、難しい顔をしていた。


「フランクと他の甥姪を比べるような事はさせてない筈だが……。それとも私の知らない所で?」

お祖父ちゃんの顔で呟く姿に、本当に前世の記憶があるんだなーとチェルシーは呑気に思うが、護衛とナイジェルが顔を見合せて、頷き合う。


「従兄というより、叔父上と比べられて、かと。」

「闇落ち、しそうか?」

年齢が同じで同性という面では、弟妹やいとこたちよりは、比べられる可能性はあるかもしれないとアイザックが首を傾げた。


不思議そうにしているアイザックの顔に、異世界とはいえ、前世の記憶があるチェルシーは分かるなぁとこっそり頷く。


「失礼ですが、アイザック様からはナイジェル様やフランク第一皇子殿下を孫として見ているように見えます。あまり同じ年という実感がないのでは。」

「あー……でも、フランクと同じ年の私からしたら、比べられても叔父上は叔父上だしなぁと思う。」


叔父上は次元が違う、と苦笑するナイジェルに、ジェイダはよく分からないという顔をして、チェルシーに救いを求めるような視線を向けた。


「まぁ、それは良い。今は私の可愛い甥が闇落ち、という話だったかな?」

すっと、温度が下がった。

いきなり雰囲気が変わって、チェルシーは怖っという気持ちを懸命に秘める。


「アイザック様。」

ソファに座るアイザックに身を屈めて囁く。

「うん?お前の殺気は平気なのに。殺気は出していないぞ。」

アイザックがむぅっと子どもっぽくむくれる。

威圧とその可愛いさにギャップがありすぎて風邪を引きそうだ。


「複雑だ……。」

身悶えるチェルシーにナイジェルが不満そうな顔をする。どうしてこのふたりはそんなに可愛い顔をするのだろうか。


「ナイジェルの焼きもちは、後にしてくれ。それで?チェルシーは詳しく知っているみたいだけど?」

マイルドになったアイザックの態度に、チェルシーはピッと背筋を伸ばす。


「はい!ゲームではまずフ……殿下がご自身の、あーうー、うぅん、あちこちの国を滅亡させるので、この国の聖女が時を戻します。」

まさか実在する皇子や国の名前を出すのは憚れるので、迷いながら告げる。


「ちょっと待って、聖女にそんな力はない筈だよ?」

アイザックが手のひらを見せて止めてくるので、生命線長いなぁと眺めながら、チェルシーはへらりと笑った。


「あー、ご都合主義というやつです!異世界では創作物で逆行転生という物もありますので、そこから持ってきた設定だと思います。」

ナイジェルとジェイダがせってい…ごつごうしゅぎ…と呟きながら、どこか遠い目をする。


「うーん、とりあえずフランクは闇落ちしていないから、時を戻す必要は無いけれど……。」

「昨日も転送装置で叔父上の所に突撃していましたからね。」

そんなに気安く転送装置使って良いの?と聞きたいが、話しがそれるので、ぐっと堪える。


「もし、万が一にでもマリアに時を戻す力があったとすれば、自分に都合が悪い状況になったら、時を戻す可能性もありますよね。」

ジェイダの恐る恐るの発言に、ナイジェルはうーんと唸った。


「彼女ならもう何度か戻していても不思議ではないけれど……。」

「えぇ……そう言うのは分からない感じですか?」

「時を戻したかどうか?叔父上は分かりますか?」

期待をするような視線が集まって、アイザックはきょとんとする。


「分からない事に何か問題はある?」

返答からして、分からないという事だろうけれど、あれだろうか。分からないとか言ってはいけない教育をされているのか。


「勝手に時を戻されたりしたら、嫌だと思います。」

ナイジェルが礼儀正しく手を上げて発言するので、アイザックはクスクスと笑った。


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