きょうだい
デートイベントをこなせたので、好感度は低く無い筈なのに、王子が手を握ってこない。
他の攻略対象者にかまけて、好感度上げを少しサボったせいだろうか。
「もうっ、チョロ殿下の癖に。」
ナイジェル・ダヴェンポートはゲームでは難易度が一番低い、いわばチュートリアル用の人物だった。
「マリア?」
声は落としていた筈だが、不審そうな様子に聞かれたかと焦る。
「も、もう!お姉ちゃんって呼んでよ。」
素知らぬふりをして、いつものように甘えた声を出せば、ジェイダはふっとため息を吐いた。
「……貴女の事は、姉とは思えない。」
まっすぐに見つめられ、どきりとする。
そういえば、爵位が低かったので忘れていたが、ジェイダも攻略対象のひとりに入っている。
ぱっと背を向けて怒ったふりをし、その場から立ち去って、近くの適当な部屋に逃げ込む。
「えー、えーっ!つまり、姉弟じゃないってこと?!ジェイダはお父様の子どもじゃない?」
可能性として考えられるとしたら、それが一番高い。特殊性癖に配慮するようなゲームではなかったので、攻略対象者と血縁関係は無い。
「何を失礼な事を言っているのですか。」
冷たい声に正面を向けば、何故か妹であろうアネットが居た。
「し、失礼なのはアネットでしょう。盗み聞きなんてはしたないでしょ!」
ふんっと鼻を鳴らして睨めば、心底呆れたようにため息を吐かれる。
「ここがどこだか、お分かりではないのですか?」
どこと聞かれて、部屋の内装を確認すれば、可愛らしい部屋だ。
「あぁ、お分かりにならないですよね。この家に来てから、一度も私の部屋に近付いた事はありませんもの。」
マリアが何かをいう前に、馬鹿にするように言われて、酷く腹が立った。
「はぁー?姉である私を差し置いて、こんな可愛い部屋に住んでいて、ずるいじゃない!」
「あら、お姉さまには子どもっぽすぎるのでは?私よりお年を召してらっしゃいますから。可愛らしい部屋なんて、お似合いになりませんよ。」
ふふん、と得意気なアネットが生意気で、思わず拳を握る。
「まぁ、怖い。お姉さまはいつまでも庶民らしさをお忘れにならないのね。そんなふうに拳を握られて、どうなさるの?」
流石に殴ったりはしたくない。
「……ふぅん、良いんだ?もしジェイダがお父様の子どもじゃないなら、あなたの母親が不貞をしたって事よね。」
マリアはジェイダと姉弟では無い事は確実なので、アネットに精神的攻撃をすれば良いだけだ。
ついでに男爵夫人の弱味になると思うと、自然とマリアの口角は上がっていた。




