演技力対決!(違)
袖を引くマリアの手をさりげなく外して距離を取る。
「それで、どこを案内してくれるんだ。」
魔力を持たない者の生活云々を、わざとマリアに漏らしたせたとはいえ、スキンシップはやめて欲しい。
「食べ歩きとかしようよ!したことないでしょ?」
にこにこ笑う姿は無邪気だが、記憶を探ると確かマリアは8歳で男爵家に引き取られた筈。
「マリアも食べ歩きなんてしたこと無いだろう?いくら男爵家とはいえ、令嬢にそんな自由は許されるとは思えない。」
なるべく冷たい口調にならないよう注意し、不思議そうなふりをして問えば、明らかにしまったという顔をする。
「あー……えっと、こっそり抜け出して?」
ぺろりと舌を出すので、そうかと頷いてから笑う。
「マリアはお転婆だな。」
異世界転生者だからでは、と言いそうになったが、本人は申告していないので、そこには触れない。
「もー!ナイジェルまで貴族令嬢らしくないって言うんでしょ……。」
怒ったように言うが、尻すぼみになる様子に腕を引いて近くのカフェへと入った。
「どうした?悩みでもあるのか。」
チェルシーからの嫌がらせ(捏造)の話を期待して、深刻そうに聞けば、マリアは迷うように目を泳がせる。
「あのねっ……ううん、何でもないの。私が悪いだけだから。」
悲しそうに瞳を潤ませて、俯き肩を震わせる姿に、ナイジェルは感心する。
将来は舞台女優とか向いていそうだな、と呑気に眺めながらも眉を寄せる。
「何でもないというようには見えないぞ。私では君の力になれないのか?」
「そんなこと……そんなこと、ないよっ!でも、家族の……ううん、家族って思ってるの、私だけかもしれない。」
意味ありげに言って、それを否定するようにふるふると首を振るマリアにナイジェルはふたりで来た事を後悔した。
「……男爵家で何かあったのか。」
ばっさりきっぱり切り捨てたい気持ちを堪え、深刻さを出すために、声を落とす。
「あのね……妹がいるの。でも、後から来た私やお母さんが、ずっと気に入らないみたい。」
マリアが俯いたまま、ぐすんと鼻を鳴らす。
「気に入らない?」
「うん……お母さんは使用人みたいな扱いをされているし、妹は私を姉だって認めてくれなくて、態度が酷いの。」
母親の事はともかく、マリアは令嬢としての努力をしていないからでは?と言いたいが、離れた所に立つ側近が視線で堪えろと訴えている。
「……そうか。それは辛いだろう。」
「うん……妹と一緒に暮らすのが辛いんだ。」
ちらっと期待をするような視線をマリアに向けられて、そうなるかと嘆かなかったのを褒めて欲しいナイジェルだった。




