強制力!強制力があるからっ!
チェルシーは少し離れたところから、マリアと並ぶナイジェルを気の毒そうに見る。
いわゆる、デートというやつだろうか。彼の側に付く護衛たちをマリアが何かを言って追い払っていた。
「えぇ……駄目じゃん?」
王位継承権を持ち、万が一に王に何かあった場合、直ぐに即位出来るのはナイジェル位である筈だ。
それをやすやすと、何の戦力にもならないどころか、足手まといな少女とふたりにして、良いのか。
「大丈夫ですよ、王弟殿下も王妹殿下もいらっしゃいますから!」
タチアナの慰め(?)の言葉に、チェルシーはそうかと頷いてから、首を傾げる。
「そうじゃないだろう!お嬢様、見えないだけで護衛は側にいますので、心配ありません。」
ジョージの説明に、ほっと一息吐く。
別に親しい訳ではないが、国民としても婚約者としても、心配するぐらいの情は湧いていた。
「それで……なんだっけ?庶民体験?」
なんかそんなイベントあったな、と思い出す。
王太子として悩むナイジェルに、マリアが街に気分転換に連れ出して、みたいな。
「そこで婚約者のお嬢様が、聖女サマに暴漢を差し向けるってやつですか?」
「そうそう、テンプレよね。そんなことはしないけど。」
なんで王子殿下が一緒にいる時に、そんな馬鹿な事をやらかすのか。やるならもっと確実に仕留める方法を選ばないと。
「仕留めるだけで良いならば、私を使った方が早くないですか?」
ジョージが不思議そうに首を傾げる。
「ほら、仕留めちゃったらゲームオーバーだから。」
あと、ゲームにジョージは居なかったと思う。
「何か問題でも?」
タチアナも仕留める方向なのか、きょとんとして言うので、チェルシーは身を震わせた。
「こわっ、え……そういうものなの?仕留めるって始末するって意味では無いってことかしら?」
もっと優しさの溢れた意味かも知れない。
そう理解してふたりを交互に見れば、顔を見合わせてからチェルシーを見て、揃って首を振る。
「始末で間違いありませんよ。」
「ちょっとはた迷惑な人間より、仕える主を優先するのは当たり前では?」
常識です。みたいな顔をされて、この世界で育った経験が正しいと訴える反面、前世の記憶が受け入れ難いと葛藤する。
「お嬢様はそのまま、純粋無垢っぽくして下されば、大丈夫ですよ。」
「えー……。」
純粋無垢とは?内心首を傾げる。
どこをどう考えても、自分は純粋無垢とはほど遠い。
「とりあえず、始末はしないでね。」
そこで始末まで行かなければ良いのかな?みたいな顔をしないで欲しい。




