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父王と息子

ずるいなぁ、と思う。

同じ年の叔父で、隣国セイリオス帝国の皇族であるアイザック・マクヴェイはナイジェルの為にこの国へ留学した筈だ。


「それなのに、あまり一緒にいられないのは何故だ?」

数ヶ月だけ年上で、母の末の弟。

前世の記憶がある為か、とても大人っぽい。


「ナイジェルはアイザック様よりチェルシーさんと仲良くすべきだろう。」

呆れたような父の言葉に、ペンを握りしめる。

「仲は悪くないですよ。手紙のやり取りはしていますし。」


自称聖女についての情報交換の為だが、嘘は言っていない。

「そう。その聖女サマはまさかアイザック様にちょっかい出してはいないだろうね?」

「叔父上は彼女とは一言も口を聞きませんから。それに、護衛とかお付きの者があしらっています。」


マリアが突進する度に、スンッと表情を消す姿は一見の価値がある。

「そうか。一時期、聖女がまともになりそうならば、アイザック様の仮の婚約者にして、動きを封じるという話もあったのだが、無理そうだな。」


うーん、と唸られ、ナイジェルは目を見開く。

「は?父……いや、陛下はセイリオス帝国に戦争でも仕掛けられたいのですか?」

良くて母に離婚を言い渡される程度は覚悟が必要だと思う。


「そこまでか?……そこまでだろうなぁ。」

そもそも、ナイジェルの為というのは建前で、母がアイザックと一緒に過ごしたくて呼び寄せた可能性が高い。


「本来ならば、あんな少女に振り回されるなんて、無能だと蔑まれてもおかしくないので。」

「あの魔力さえなければ、ただの戯れ言だからな。」

この世界では魔力が大いにものを言う。

公爵令嬢であるチェルシー相応の魔力は無視できなかった。


「もう、適当に言いくるめて、魔石に魔力を込める仕事でもして貰えば良いと思います。」

「それも大事な仕事だ。でも、みたいな言い方は良くないぞ。」


この世界のありとあらゆる動力は、魔石に込められた魔力頼りであり、魔力を持つものは結界の維持と共に、魔石作りも担っている。


「貴族が恵まれた暮らしをしているのを、庶民が許容してくれる理由ですしね。」

「やっていることは地味なんだがな。」

「結界の維持に魔石作り、それに領地経営とか魔力持ちって忙しいですよね。」


つい嘆けば、父は目元を緩めて柔らかく笑う。

「高い地位には義務が伴う。常識(あたりまえ)というやつだ。」

「どちらかというと高い魔力には、ではないでしょうか。」

それが嫌だというわけではないが、魔力を持たない生活というものは、少し羨ましかった。


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