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甥と叔父

前世の記憶があるのは知っているから、


魔力がある人間は多い方が良い。

それは世界の常識だったのだが、時代によって時折それが何故なのか抜ける事がある。


「それを物語の強制力と呼ぶらしいよ。」

前世の記憶があるアイザックは、生前残した手記をパラパラと開いて、仕方ないよねと笑う。


「叔父上の時にも何かあったんですか?」

「隣の国でね。うちは建国の聖女が加護を与えてくれたから……困った聖女サマは出没しない。」

記録によると建国の聖女は‘やらかす’聖女サマをよく知っているらしい。


「うちにもその加護があればっ……。」

何らかの処分をするには、やることが少し弱いうえに、そうした声が上がらない。

「セイリオスの皇族は、基本的に建国の聖女の血が入っているから、加護の影響を受けやすい。つまり、ナイジェルも加護はある筈だよ。」


「あぁ……母上の。」

ナイジェルの母は、セイリオス帝国から嫁いて来た。

「だから、君が周りの人を守ってあげると良い。」

「私が……あの聖女から!?」

物凄く嫌だ。素直に言ってテーブルに突っ伏せば、あぁと嘆息が聞こえる。


「気持ちは分かるよ。だから、突き放しても良いのだけれど……。」

「友人たちは私みたいに嫌では無いようで、言い付けで側にいるのも、少し嬉しそうです。」

国の中心を担う家の息子が聖女の側にいる。

セオリーだと言われ、取り敢えず配置されたが、それが正しいとは思えなかった。


「まぁ、宰相の息子が次期宰相とは限らない。」

「教訓の物語、ですよね。宰相や騎士団長が世襲制というのはおかしいと思います。」

「国を安寧に導く者ならば、世襲でも何でも構わないのだけれど。」


聖女サマの中では、世襲制が優勢らしく嬉々として男性陣に纏わりついている。

「あー、ケイシー……宰相の子息ですけど、ヘンウィック嬢に何やら慰められてましたね。宰相を継ぐ予定は無いと言う話について。」


「宰相になりたいなら、自分の力で勝ち取る必要があるから、慰めも間違いだとは言えなくも無いと思うが?」

にやりと笑うアイザックに、ナイジェルは少し迷ってから、ひそりと声を落とす。


「ケイシーは騎士になりたくて、努力しています。……それを、宰相になることを諦めなくて良いんだよ!って。余計なお世話だと思いませんか。」

「今のはヘンウィック嬢の真似か?」


ふっ、と息を吹き出し、笑いを堪えるように口元に手を当てるが、そのままくつくつと笑っている。

「叔父上っ!」

「いや、なに。中々似ていると思うよ。良く知らないけど。」

同じ年なのに、どうしてもアイザックの前では子どものようになってしまうナイジェルは、ついっとそっぽを向いて、むくれて見せた。


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