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物語の強制力はあるのか


マリアの表情を見た護衛が、酷く嫌そうな顔をして、アイザックに何か囁く。

「そうだね。……ナイジェル、また後でね。お昼は一緒に食べよう。」

わしゃわしゃとナイジェルの頭を撫でてから、チェルシーへ微笑みを向けて去っていく。


「あーぁ、隠しキャラかなぁ。確認したかったのに。」

小声じゃないマリアの呟きを一同聞こえない振りをする。なんだコレ、面倒くさ。


「では私も失礼しますね、殿下。」

逃げるが一番だ、と丁寧に頭を下げて足早にその場を後にする。

出来れば巻き込まれたくない。


「よろしいのですか?」

人の気配が無くなったところでタチアナが念のためとばかりに聞いてくる。

「だって、あのこ異世界転生者で、絶対逆ハー狙いでしょう。関わってもろくなことにならないわ。」


それに、と続けようとして、本当に誰も居ないのかを周囲を確認する。

「あの娘、自分を聖女って言っているのよ。」

知っている人間は知っている事実を暴露すれば、タチアナとジョージの目蓋がぴくりと震えた。


「……え、本当ですか?聖女を自ら名乗ると立場がまずい事になるのを知らないのでしょうか。」

唖然としたようにジョージが言うので、タチアナは苦笑する。

「知らないのでしょうね。義務教育で習う事ですけど。」

「まぁ、大きな独り言みたい。名乗りはしていない所が悩みどころって話ね。」


知らないならば、早めに忠告する事が優しさだが、マリアの態度を見る限り、聞き入れないだろう。

「それこそ強制力なのかしら。一般的な常識があれば、例えそうであっても言いたくないわよ。」

何かにとらわれているようで、少し怖い。


「さくっと始末することは可能ですよ。理由はいくらでも出て来ますから。」

ジョージの言うことはもっともで、爵位差の件でもマリアは沢山やらかしている。

「そうなの……?学園では生徒は皆が平等とか、」

ゲームの中では、ヒロインはやたらとその設定を持ち出してたが。


「中等科までならば、ギリギリそれも通りますが……どこからそんなお話を?」

「学園規範読んでないの知られたわー……。」

諌められる前に白状して、首を竦めれば見逃してくれたようだ。


「これから社会に出る準備機関ですから、多少のやらかしは反省文と厳重注意で許されますが、何事も限度はあります。」

魔力がある人間が多いに越したことはない世界とはいえ、寛容では無い。


「……それこそ、魔力を持つ人間が多い分、いくらでも代わりがいると言うことです。」

そうは言うものの、マリアのような人間を自由にさせておくのは、やはり物語の強制力があるような気がして、チェルシーは安心出来なかった。


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