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貴族の役割とは


チェルシーが前世の記憶を取り戻してからの、一番の疑問は貴族がきょうだいが多いことだ。

病気で亡くなりやすいというわけではなく、己の父や母もきょうだいがそれなりに居て、健在であること。


「どうして?」

悪い事では無い。年齢が極端に近い訳では無いので母体への負担も配慮されていそうだし。

幼い頃はそこまで考えなかったが、将来はきっと同じような事がチェルシーにも求められるのだろうと思うと、少し憂うつな気がする。


「前世の記憶が発現すると、現世で覚えた事は忘れるのですか?」

疑問を口にしただけなのに、酷く驚かれて気まずい。


「というと、幼い頃にすでに教えて貰った……?」

「魔力保持者には大事な事なので、魔力の扱いを覚える最初の授業で習います。」

魔力の扱いを覚える最初の授業、というキーワードで心当たりを探る。


「それって物心つくかつかないかじゃない?」

うっすらと引っ掛かる記憶に理不尽、と顔に出す。

「一度だけではありませんよ。記憶に焼き付けるように、教えられた筈ですが。」

「えー……。」


ゲームにそんな設定あったかな?と首を傾げる。

「……セカキミ、でしたか。そんな創作物を参考にするのは、よろしくない事ですよ。」

「どうして知っているの?」


この世界で君と出会えたなら

通称セカキミ。

誰にも話したことは無い、前世で人気のあった乙女ゲーム。


「ふふ、聖女サマが時々叫んでいる言葉なので、必要な者には周知されています。」

「警戒心強いね!」

地が出て声を上げれば、諌めるような目にぐむっと口を押さえる。


「国どころか、世界を守る為ですから。……それだけ転生者という存在は危険なのですよ。」

「危険……え、それって私も入っていますか?」

ぶるりと身体を震わせれば、視線が逸れて小さなため息が聞こえた。


「チェルシー様が貴族であろうとする限り、問題はありません。」

「貴族であろうとする限り……。」

「……世界は魔力を持つ者によって維持される結界で守られています。」


魔力を持つ子どもが多く産まれた年は、気候が安定し、作物も豊作となる。

農耕がメインのアトラス王国では、特に重要な事案だ。


「結界の維持?……そういうのは聖女の祈りとかによるものじゃないの?」

少なくともゲームではそうだった。

だからこそ、聖女は大切にされていたのだが。


「ひとりの少女が世界を背負えと。」

「でも……そういう設定、」

創作物を参考にするのは良くない。

言われたばかりの教えを思い出して、言葉を噤んだ。


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