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吸鬼  作者: キツネ魂
6/6

5 悪魔の少年


「すっっっっっげえ馬鹿だね……キミ…」



初対面での言葉だった

正直、自分でも馬鹿をやったと思っているから言い返せなかった。


「舐めてかかって、ばっちり負けるって…どういうギャグ?」


言い過ぎだと思う。

流石に何かを言い返そうとしたが、口が震えてるし、腰も抜けてるし……



とりあえず、肩を貸してもらった。




───────────────────




「俺はカイ、お前は?」


「私はレーヴ……貴方、種族は?」


「デーモンだよ、下位だけどな。」


デーモン、

最もありふれた悪魔。

悪魔といえばデーモン、

デーモンといえば悪魔、


下位種、中位種、上位種の三種類存在する。


9年前の大悪魔狩りでは、その数により人間に多くの被害を出したが、現在は壊滅的に数が少ない。



「そう…私は淫魔(サキュバス)よ。」


「サキュバス?すげえ、初めて見たぜ。」


自己紹介混じりの、他愛もない会話を交わしながら、レーヴはカイの肩を借りて歩く。



「…所で、これは何処に向かってるの?」


「ああ、俺の…っていうか、俺たちの家だよ。」


「……“たち”?」



───────────────────


「おーし、ここだ、ここ。」



連れてこられたのは、ただの断崖だった。


「親父!ただいま!開けてくれ!」


カイが岩肌に向かってそう叫ぶと、霧のように岩が消え、扉が現れた。

扉を内側から開いたのは、顔に大きな傷をつけた大柄の男…

いや、悪魔だった。欠けているが、角が生えていた。


「カイ…!大きい声を出さなくても扉は現れるって、いつも

言っているだろう…!」


「ごめんごめん…それより、生き残り見つけてきたぜ!」


そう言うと、大柄の悪魔はレーヴの方を向いた。



「何?おお…お嬢ちゃん、サキュバスだな?」


「ええ…レーヴよ、よろしく。

 私が淫魔(サキュバス)だってわかるのね。」


「俺はガイウス、そりゃあな、お嬢ちゃんは俺の昔の主人に似てるからな。」


「…貴方の昔の主人って?」


「ああ、リーベル様だ。」


その言葉を聞き、レーヴは目を見開いた。


そこまで聞き覚えのある言葉ではないのに…何故…?

胸のざわめきが抑えられない。


「…おい、嬢ちゃん?大丈夫か?」


ガイウスが心配そうに覗き込む。


「…ええ、大丈夫。」


「そうか、とりあえず、立ち話もなんだし、中に入りな。」




───────────────────────────



ガイウスは、9年前の大悪魔狩りの生き残りだった。

9年前、盗みに来た人間の賊を追いかけて城外まで出ている間に、

人間に攻め入られ、目の前でリーベルの国が破滅したらしい。


ガイウスはカイの頭を撫でながら言う。


「あんときゃ大変だった。何とか妻とこいつと一緒に逃げたんだが、

 もう少しってところで妻が矢に貫かれてな…」


「それは…大変だったわね。」


カイ達の”家”は、小さな火口に作られた村だった。

総勢、約35人、半数以上が老人と子供。

戦えるような人間は至極、少ない。


しかし、村の周りには魔法障壁が施されており、

仮に攻撃を受けても、傷つくことはない。


その魔法を施したのは…


「おい、ガイウス、定例会議の時間だ。来い。」


そう言ってガイウスを連れて行こうとする男。


緑の長い髪に、鋭い目つき、腰に据えた剣には

鞘越しでもわかるほどに魔力が込められている。


この男、旧リーベル軍8番隊長。

蝋燭(ロウソク)のクライアスが、村を守る魔法障壁を施したとされている。


「ああ、クライアスさん。

 息子が外からサキュバスの女の子を連れてきてね、ちょっと話をしていたところです。」


クライアスがレーヴを見る。


「…そうか、ここは外に比べれば安全だ。

 安心して過ごすといい。」


クライアスはそう言うと、ガイウスと共にその場を後にした。



───────────────────────────


「…レーヴ、これからどうするつもりなんだ?」


カイがレーヴに話しかける。


「どう…って?」


「お前……ずっと外にいたんだろ?

 ちょっと休んだら…出て行っちゃうのか?」


カイは心配そうにそう言いながら、レーヴを覗き込む。


「……そうね、また外に出るのもいいかもしれないわ。

 けど、また今日みたいに危ない目に遭うのは嫌。

 しばらくはここで過ごさせてもらうかもしれないわね。」


「……そっか。」



そう言って、レーヴに背を向けたカイの姿は、どことなく

嬉しそうだった。


───────────────────────────



……奴隷から逃げ出して二日目、やっと定住地を見つけることができた。


カイの話によると、どうやら最近だと悪魔の殺し方を()()()()()()の方が少ないらしい。


ここには強い悪魔がいる、何かあっても、逃げ込めば助けてくれるだろう。

それに……ガイウスとクライアスには何故か胸騒ぎを覚える。

そのことについても知る必要があるだろう。



……”国”という大きな悪魔のコミュニティに居た者たちだ。

もしかしたら、自分の出生について知れるかもしれない。


……というか、今日はもう寝よう……。

これ以上難しいことは、明日考えれば…………



………………………………………………………………………………………………


レーヴの寝顔は、普通の少女のように安らかであった。





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