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吸鬼  作者: キツネ魂
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5 安住の地


悪魔の村を見つけた次の朝。

私はガイウスとクライアスに連れられ、ある場所に来ていた。


昨日の夜にガイウスとクライアスが会議をしていた小屋である。

小屋の机の上には、古びた台座が置かれていた。


「さあ...嬢ちゃん、この台座に、血を垂らしてみてくれ...」


ガイウスは私に指を切るよう促し、クライアスは後ろから黙って様子を見ている。

ガイウスの持っているナイフに指先を押し付けて、流れた血を台座の上に垂らした。


「...どうだ、何か変化は?」


クライアスが口を開いた瞬間、黒色だった台座が赤褐色に変化した。


「く...クライアスさん、この色は...?」


「...ああ、本当に淫魔(サキュバス)のようだな...」


クライアスの口元が不気味に歪み、笑みを作った。


「問題は、この娘がどの程度リーベル様に近い血を持っているかだが...

 ともかく、この娘が淫魔(サキュバス)であることは、我々の計画の糧となるだろう...!」


どうやら、あの台座は、血を用いて種族を判別するものらしい。


変化なしは悪魔、

赤褐色は淫魔(サキュバス)

その他は..まあそれぞれの色に変化するらしい…


「...淫魔(サキュバス)を見つけて、どうするつもりなの?」


「リーベル様を復活させる。」


クライアスは事もなげに答えた。


「リーベル様と”同じ濃度の血”を、

 リーベル様と”同じ重量まで”集めれば、復活させることができるらしい。」


「...その情報の出所は?」


「リーベル様本人からだ、ご存命だった時に、私が倒されたときにはそうしろと仰られた。」


...


リーベル本人の言葉、

であるなら、本当なんだろう。

レーヴは、リーベルと関りがあるわけではないが、なぜか信じることができた。


そしてクライアス、こいつはリーベルの狂信者だ。

リーベルを復活させるためなら、私を食いつぶすことも、自分の身がどうなろうともいとわない…


確かに、悪魔を統べ、人間を恐怖に陥れたリーベルが復活すれば、今の絶望的な悪魔の状況は劇的に改善するだろう。


...しかし、そんなことどうでもいい。

自分が生まれた年に死んだ、悪魔の王のために死ぬつもりはさらさらない。


「...悪いけど、リーベルのために死ぬつもりは無いわ。」


「何を言っている?お前が死ぬ必要は無いぞ。」


........あれ?


「...私の血を使うのでしょう?」


「それはそうだが...何も死ぬほど集める必要は無い。

 お前の血の中にあるリーベル様の因子があれば良いからな。

 淫魔(サキュバス)の血と、リーベル様の因子を調合して、リーベル様の血を調合すればいいのだ。確かに多少の血は必要だがな。」


...どうやら、また早とちりをしてしまったみたいだ。

悪い癖だ。


「本当はリーベル様直系の淫魔サキュバスの血があれば、調合も必要ないんだが...9年前の悪魔狩りで、そんな血を持つものはあらかた狩られてしまったからな...」


クライアスは少し残念そうに呟いた。


「...ともかく、お前が淫魔サキュバスであれば、小さくとも我らの躍進の足がかりになる。」


「…本当なら、兵士でもないお前にこんなことを頼むのは心苦しいのだが…。

俺たちのために、悪魔のために、お前の血を貸してくれ。」


クライアスは、レーヴのことをまっすぐと見つめて言った。


クライアスは、リーベルの狂信者であることは確かだが、それ以上に悪魔の立場を憂いている。

…この男なら、信じられるだろう。


「わかったわ、私の血と因子、役に立てて。」


「ありがとう、レーヴ。」


初めて名前で呼ばれた。


「…私の血を抜く前に、質問を答えてくれるかしら?」


「質問…、了解した、俺の知っていることなら、どんなことでも答えよう。」


「じゃあ…貴方、マルタ・イシハラについて知ってる?」


クライアスの眉間に皺が寄った。


「マルタ・イシハラ……、我ら悪魔の、リーベル様の仇について、か…」


クライアスは記憶の奥を探るように、顎に手をやり、考え始めた。


「…俺が奴について知っていることは少ないが…、9年前、人間どもに攻め入られたときに一瞬だけ見たことがある。」


奴の姿は、長い髭に白髪、東洋の鎧に身を包み、片目、片腕を失った姿はまるで死にかけのようだった。


だが、残った片手に槍を持ち、戦場を駆け悪魔を殺す姿はまさに「鬼神」だった。


多くの悪魔は奴の姿を見て、混乱し、逃げ惑い、奴に向けた背ごと核を貫かれ死んでいった。


奴は…俺達よりも、よほど、悪魔だ。


「…だが、リーベル様が蘇れば、あの老兵も打ち倒し、糧になさるだろう。」


「…なるほど…」



クライアスの話だと、マルタ・イシハラは相当な化物、ということしか分からないわね…


そんなことを思った時だった。


「クライアスさん!ここより西の森に『悪魔狩り』です!」


「……状況は、」


「アンドゥとリラがやられました」


「……そうか、わかった。」


一瞬だけ、クライアスの身体から立ち昇る魔力が“ブレた”気がした……


「クライアスさん、俺が行きます。」


「いや、いい。ガイウス。

 俺が行く。」


そう言うと、クライアスは掛けられていた白毛のコートを手に取った。


「……レーヴ、お前は来い、

 戦い方を教えてやる。」


「……わかったわ。」



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