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【最大火力の少女】9

 と、いうわけでやってきたのが町の隅にそびえる古びた教会だった。教会には小学生くらいから中学生くらいの子供が行儀よく座っている。


「ここは魔術学校ですか?」


 シャーロットが尋ねるとエドワードが答えた。


「はい、そうです。建物自体はエイシヴ教のものですが、そこでバルテス隊主催の魔術学校を開いているんです。シャーロット君は魔術の基礎こそできていますが、コントロールが不可能と見ました。対してキミヒト君は未知数です。お二人が騎士団に正式加入するには、まずここで勉強していただきたいのです。シャーロット君が魔術師試験に合格する必要がありますので」

「魔術師試験ってなんですか?」


 俺の問いに、エドワードは微笑んだまま答える。本当に、温和な人だ。


「魔術師、というのは国家資格をもった人間のことなのです。なので、シャーロット君はまだ、見習いにあたります。魔術小隊に入るには、まずは魔術師になってもらわなければ」

「なるほど」


 確かに、俺に魔術が使える保証はない。いや、大抵の異世界転生モノであれば主人公は爆発的な魔術の力を持っているのだが、俺がそうとは限らない。


「さて、ではまずはキミヒト君の実力を測定しましょうか。シャーロット君の実力はなんとなく把握していますので……」

「お願いします!」


 エドワードは懐から小さな宝石を取り出すと、俺に手渡した。見たところ、ごく普通の石に見えるが、まさか、これが異世界転生モノで有名な『魔石』か!?


「それは『魔石』と呼ばれるものです」

「まさか、これで魔力の量と測るんですか!?」

「よくわかりましたね。まさかキミヒトさんの世界にも魔術の概念はあったのでしょうか?」

「いいえ、ありません!」

「え?じゃあ、なんで……」

「ライトノベルで読みました!任せてください!」


 正直、現実世界で生きていた経験よりもファンタジーライトノベルの方が知識として役に立っているような気がする。


「でも具体的にどうやって測量するのかは不明なので、教えて下さい」

「承知いたしました。では、まず魔石を手で握ってください」


 俺はエドワードに言われた通り、左手で魔石を握った。


「次に象徴を想像します。今回は周囲を明るい光が照らす風景を想像してください」


 周囲を明るく照らす……ランタンのような感じであろうか。


「さあ、呪文を唱えてください。呪文は『ライト』です」

「……ライト!」


 すると体から力が石に流れ込んでいく感覚が全身を包み込む。


(すごい、力が流れているのがわかる……これが『魔力』か)


 周囲に明るい光が満ちた。その光は柔らかくて、決して目をくらませるようなものではない。しかし、今、確実に俺が魔術を使っているのだ。


(うわっ、結構体力使う……)


 しかし、しばらくすると体を強い倦怠感が襲った。どうやら魔力切れのようだ。


「……はい、もう大丈夫ですよ。意識を自分の体にもっていってください」

「は、はい」


 力を全身に戻すことで魔術は終了になった。エドワードは先程とは変わらない笑顔で俺の体を支え、そのまま椅子に座らせてくれる。


「そうですね。魔力自体は少量しかないようですが、コントロールが非常に長けています。あのような淡い光を出す、というのは実は大変難しいのです」

「そうなんですね」

「もしかしたら、キミヒト君の人柄が出たのかもしれませんが……とにかく、魔力量は少し少ないですがから、魔術小隊として本格的に働くことは難しそうですね」

「えっと……つまり?」

「防衛戦の際は魔術師としてではなく前衛部隊か他の場所で戦ってもらうことになりそうですね」


 戦力外通告、ということか。

「ですが、魔術は日常生活において必要になることが多いのです。しばらくはシャーロット君と一緒に魔術を学んでくださいね」

「はーい」


 まあ、戦力外通告とはいうが、これは己が身を守るためである。仕方がない。

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