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第八話 ただの風景 または猫たちの戯れ・2

 学校。正面玄関に入り廊下に出て教室に向かう。相沢さんはいつもぼくより先に登校しているのでいつも通りなら今頃教室で友達だちと談笑しているはずだ。早く会いたい。この問題を解決しなければ。ぼくは早歩きで階段を昇り、やがて教室へと辿り着く。

 そこでぼくは絶望した。

 彼女はぼくに気づかない。

 なんてことだ。相沢さんは視界の範囲にぼくが立っているはずなのにぼくをまるで認識していない。絶対に相沢さんだったらどうにかしてくれると思ったのにと思うと、どうやらこれは自分で思っているよりもかなり絶体絶命の事態が発生しているのだということを思う。どうしても気になったのでぼくは霊力を込めて相沢さんに触れてみるが彼女は気づかない。というよりすり抜けた。というか霊力を込めるという作業自体が、できない。

 なぜだ。なぜ彼女はぼくに気づかない。いや、もしかしたら相沢さんはそれほど強力な能力者ではないのかもしれないなどという根拠のない考えが頭をよぎる。よぎらせないと不安で堪らない。だからイリスなら、と思うが、教室に入ってきたイリスはパジャマ姿のぼくを視界の範囲に入れたはずなのに何も反応がない。「おはよう」と言って自分の席へ向かう。だから当然ぼくとすれ違う。なのに反応がない。イリスですら気づかないなんて。ならば殊袮だ。そう思いぼくは教室を出る。この時点でぼくは天使たちには解決のできない問題なのではないかと思っていた。おそらく殊袮もぼくを認識することはないのだろう。彼女の教室へ向かい彼女を待つ。別のクラスの人間がやってきたというのに例のごとく生徒たちは何も反応することがない。

 だいぶ疲労が溜まってきたが、しかし一方で冷静な自分が維持されていた。まあなんとかなるんだろう、という発想があるのもあったが、そういえばこの異常事態にさほど混乱していない自分の心が気になり始めた。なぜぼくはさほど堪えていないのだろう。確かにパニックに陥っているが、だが心まで次元を超越したのだろうか。本当に、今朝になって何が起こったのだろう。昨晩は確かに母親に水を持ってきてもらいお休みと言ったらお休みと返してくれた。だからその時までは異変など発生していなかったことになる。寝ている最中に何かあったのか、目覚めた瞬間何事かが起こったのか。わからない。何もかもがわからない。それともひょっとしたらぼくは寝ている最中に鬼哭アルカロイドに襲われでもしたのだろうか。それならそれで鬼哭アルカロイド関連の異常事態なら相沢さんたちがぼくに気づかないはずがないと思うのだが。ちなみにこの時点で殊袮の反応にもぼくは絶望していた。案の定、彼女もぼくに気づかなかった。

 ならばどうする。

 ぼくはアジトへと向かう。もしかしたら麗子さんがいるかもしれない。彼女はフリーランスのシステムエンジニア。アジトで仕事をしていることもある。だからもしかしたら朝からアジトへとやってきているかもしれない。その可能性は充分にある。ぼくは歩いていく。隊員の三人には何もできなかったが、副隊長の麗子さんなら何かをしてくれるはずだ。ぼくの希望であり今のぼくにとって麗子さんは女神だった。もちろんぼくはここでも苦笑するのだった。

 アジトへと向かう。天国ではなかった学校ではあったが、学校は別に不思議な組織の団体ではないから仕方がないという風に考えて、なんと言っても不思議な組織の本拠地である陰陽連合のこの辺りの支部アジトならぼくは救われるはずなのだ。と、ここでぼくはちょっと考える。そういえば不思議な組織の隊員たちが通っている学校は本当に我々と無関係なのだろうか。学校は学校で外陣的な活動をしている可能性もあるのでは。もちろんそんなことを言い始めたら宇宙が存在しない可能性も存在してしまうのはわかるのだが、不思議現象について実際のところはほとんど何もわかっていないぼくはどうしてもそういう可能性を考えてしまう。実のところみんなグルなのではないか。もしかしたら登場人物が全員何かしらの補助を我々にしてくれているのでは。その結果この世界の平穏は守られているのでは。

 そりゃ、ないな。

 相当疲れているのだろう。かなりどうでもいいことを考えるようになっている。仮に今考えたことが全てその通りだったとしてもぼくがそれを知ることはないのだろうからあまり関係のない真相だとは言えるのだ。大体、全員がグルなのだとしてそれをぼくがわかっていないということは、グルたちはぼくにそれを知らせないように日々頑張っているということなのだからぼくがそれを知ることはないのだろうという結論に至るのだった。あるいはそれを理解したときぼくの世界に異変が起こるのかもしれないがそしたらそのとき絶望なり何なりすればいいことなのだ。とにかく今絶望すべきことは何が何だかわからない可能性の話についてではなく自分の未来についてである。

 とにかくぼくはアジトへと向かっていく。そうすることで、とにかくぼくの未来には何らかの可能性が生まれるはずなのだから。

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