08話 IF
もしも、町の門を突破していた場合のお話――。
俺は、そのまま門の中へ滑り込むことにした。
『うおおおお、間に合ええええ!』
「うわああ、魔王が入ってきたぞ」
「もうだめだ。おしまいだ」
「お前ら急いで門から離れろ」
よっしゃー、門の中に侵入成功! あとは扉が閉まるのを待てば……。
キキィと音を立てて止まると、放棄された門から次々に魔物が流れ込んでいた。
「いやああああ、助けてええ」
「うわああああ」
「くそ、戦える奴は武器を取れ!」
あ、これまずいかも。俺は、慌てながら『オプション』から彼女たちを呼び出す。
「お父さん、魔王の声が聞こえてくるよ……」
『いしや~きいも! や~きいも! いしや~きいも!』
「娘よ、落ち着いて聞くんだ。あれは魔王が詠唱しているんだ」
『や~きいも!』
「いい子だ、私と一緒に逃げるんだ。いいね」
「お父さん、あれをみて。あの明かりの中に何かいるよ」
「あれは魔王の……嫁なのか!?」
『甘くておいしい、やきいもはいかがでしょうか?』
あっ、付けっ放しだったの忘れてたわ……『サウンド』をofにする。
気を取り直して、入ってきた門の方向に向き直した。
それじゃ、突撃!
俺は、彼女らと共にロケットで加速しながら、進行方向の魔物を蹴散らしつつ、門の外へと向かった。勿論『修理』連打で……。
「おおお、魔王が逃げていくぞ!」
「今のうちに門を閉めろ!」
門がゆっくりと口を閉ざした。
「あとは入ってきた残りを駆除するだけだ!」
俺は、外に残っていた魔物の群れと共に町を後にした――。