07話 魔王襲来
今回は、町に住む人たちの視点の話になります。
草木が寝静まる頃、町の城壁の上では数人の男達が警らしていた。
「なぁ、いい酒が手に入ったんだが、勤務後に飲まないか?」
「お、いいね。ご相伴に預からせてもらうわ」
「おい、向こうの地面に星が見えないか?」
「おいおい、酔うにはまだ早すぎるぞ」
「ハハハハ……まったくだ」
「いや、冗談じゃないからな。ほらお前も見てみろよ」
男は、仲間に望遠鏡を手渡した。
「んー、んん? なんだありゃ? こっちに近づいてきてるぞ」
「ほら、言ったとおりだろ」
「おい、あの光の後ろになんか蠢くものが見えるぞ」
「蠢くものって風で草木が揺れてるんじゃないか?」
「いや、違う。あ……あれは……ま……まものだ。とんでもない数がいるぞ」
「な……何なんだあの群れは……敵襲、敵襲だー! 警鐘を鳴らせ!!」
警鐘が鳴り響き、町中がどよめいた。
知らせを受け城壁の上には、多数の兵が臨戦態勢に入った。
「魔法部隊は、あの魔物の群れに攻撃を仕掛け数を削れ!」
「了解」
大きな火の玉が浮かび上がり、光の後方へと飛んでいき爆発を起こした。
「よし、その調子でガンガンいけ!」
『いしや~きいも! や~きいも!いしや~きいも! や~きいも! 甘くておいしい、やきいもはいかがでしょうか?』
「な……なんなんだ。あの不気味な光は……それにあのよく分からない声は……ま……まずい詠唱か!? 弓部隊あの光に矢を放てー!!」
不気味な光に向けて矢の雨が降っていく……。
「ダメです。まったく効いてません」
「なぁ……あの悍ましい姿に、不気味な光。それにあの詠唱といい、おとぎ話に出てくる魔王なんじゃないか?」
「ま……まおう⁉」
兵たちが一斉にどよめきたった。
「皆の者、狼狽えるな! 例え魔王だろうが怯むな! 怯まずに戦え! 現に魔王の手下たちは数を減らしているぞ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおお」」」」」
兵たちの士気が高まり一斉に奮起の声を上げた。
「門を閉めろ。魔王を入れさせるな!」
魔王はどんどん、近づいてきたが、何故か急に曲がり始めた。
「魔王が敵わないと思って逃げるぞ。魔法部隊、奴を狙え! ここで逃がせば後々面倒になるぞ」
魔王の右前方で爆発が起きる。
「クソ、外したか」
次弾が、魔王の真上を捉え、爆発が起きる。
「……やったか?」
土煙と共に爆炎から走り抜ける姿があった。勿論、魔王だ。魔王は炎を噴き出して、一瞬のうちに豆粒のような大きさまで離れて行ってしまった。
「チッ、逃がしたか。魔王は逃げた! あとは残党を始末するぞ!!」
「「「「「おー!!」」」」」」
◇
「報告します。町の外にいた魔物は全て片付きました」
男が、統括らしき男に報告をした。
「うむ、ご苦労。疲れているところ悪いが、早馬で各地に魔王降臨と特徴を伝えてくれ」
「ハッ、直ちに伝えます」
こうして、魔王襲撃は幕を閉じたのであった――。