02話 最近見かけない
「いしや~きいも! や~きいも!いしや~きいも! や~きいも! 甘くておいしい、やきいもはいかがでしょうか?」
なだらかな高原を低速で移動していた。異世界に似つかわしくない音を響かせて……。
『ハッハッハッ、いもはいらんかねぇ~?』って、この機能がいらんわ!!
まさかこんなことになるとは……俺はつい先ほどまでのことを思い出す……。
◇
俺は前回の反省を踏まえて、損傷がないように獲物を探して最適解を見つけていたのだ!!
それが今、目の前にいるスライムである!このスライム『+1pt』しか入らないものの、低速で引くだけでも潰れるので損傷なしに稼げるのだ。
気分は、まさにRPGで一番初めの町周辺でひたすらレベル上げし続ける苦行そのもの……。
『プチッ!』目の前のスライムが潰れる。『1000pt』と頭に浮かぶ。
お、あまりの苦行っぷりに、無心で作業し続けてたから気づかなかったが、ここまで貯まってたのか。
カーナビで何か使い道がないか調べてみるか。
お、暗転してた項目の一つ『進化』が選べるようになってるじゃないか。俺もしかしてとんでも兵器になれるのでは? もしくは人型変形とか出来るようになったりして……。
よし、選択だ!!
『1000pt消費しますがよろしいですか?』
全部もってけドロボー!!
さぁ、どうなった? 視界は特に変わらずの高さ……色々錯誤したあと、バックミラーを意識する。荷台に何か乗っている……。
武器か……違う……これって石焼き芋機じゃないか!?
『点検』を開く。
『名称 キャリイトラック+石焼き芋機』
やっぱりそうだ……。これでどうしろと……いやまてよ。何かスキル的な物があったりしないか。
いや、ダメだ。操作しようと意識しても何も起きない。これただ乗ってるだけなんじゃ……。
念のためにカーナビをもう一度見てみようか。
おお、『サウンド』が選べるようになってる。これこそが本当のスキル的なものに違いない!!
よし。選択するぞ!
一覧に『やきいも』と表示された。
これを選択してこそ、あのお荷物が真価を発揮するわけだな!
さぁ、今こそ真の力を見せるんだ……!
◇
「いしや~きいも~」
はぁ、音出るだけとかないわ~。
突然、目の前に人間たちが目の前に飛び出してきた!
「ここは通さねえぜ!!」
「有り金全部置いていきな」
どうやら山賊のようだ。
……ブオオオオオオオオオオオ!!
俺は、急加速する……この進化の憤りをやつらにぶつける為に!!
ドォン!
鈍い音と共に山賊の一人が吹き飛ぶ!
頭に『100pt』と浮かぶ。
え……ゴブリンの二〇倍!?
歩くポイント袋じゃないか!!
「くそぉ! やりやがったな」
ドォン!
「や……やばいぞ! 逃げろ!!」
山賊たちが、ちりぢりに逃げようとする。
俺は『キキィッ』と音を鳴らしながらドリフトして方向転換しながら狙いをつける!
『知っているか? トラックからはニゲラレナイ!!』
あー、美味かったわ。
俺は損傷を直しながら、走り出す……新たなる袋を求めて!!