最終話 それってとても素敵な
やったぞ! ついに逃げ出せた‼
俺はお昼寝の隙をついて、玩具箱の陰に隠れていた。
何者かが話しかけてきた。
『お前も出戻り組か?』
正体は消防車の玩具だった。
『俺は……いや、今は消防車のジョーだ。ジョーと呼んでくれ』
『よろしく、ジョー。ところでさっき言っていた出戻り組とはどういうことなんだ?』
『転生先でやらかした人間はこちらに戻ってくるみたいなんだ』
『やらかしたとは?』
『俺は転生先で魔法が使えるもんだから調子に乗って、山を吹き飛ばしたりしてな。お陰で、魔王扱いされて殺されたんだわ』
『魔法使えて……魔王扱い……魔法羨ましいな……。んー、俺はただのトラックだったし、野盗を轢いてた位で悪行なんて特には……あっ、魔物の大群に追われて逃げてたら、町に擦り付ける形になったことがあったわ。』
『お前……それって……モンスタートレインじゃないか‼』
『なるほど……それで俺は玩具になって地球に戻ってきたのか』
『ネンド……ヤダ……コドモ……コワイ……』
何か声が聞こえたと思ったら、黒い乗用車の玩具がいた。
『ああ、こいつは……ブラック。見た目が黒いからそう呼んでる』
『まんまじゃないか』
『あんたが来るちょっと前まで、粘土に包まれたまま放置されて、心が病んでしまったんだ。かわいそうになぁ』
粘土放置……恐ろしいワードが出た気がするが聞き流す……。
『彼も何かやらかしたのか?』
『ああ、勿論やらかしたさ……ただ……何というか……俺らのやらかしが赤子に思えるとしか……』
『そんな次元のやらかしを!?』
『……すまない。俺の口からは、これ以上言えないわ』
ジョーは口を噤んでしまった。
チラリとブラックを見る……。
『ネンド……コワイ……』
これではいつ聞けるか分かりそうもないなと思った。
◇
「あっ! パパ、おかえり」
「ただいま」
「出張お疲れ様、随分早かったのね」
「あの日ことを思い出してしまってね。帰りは何処も寄らずに帰ってきたんだ」
「あの日のことって……もしかして出張前のプロポーズのこと?」
「もちろんさ」
「あなた……」
「パパ、トラック……ない……」
「トラック?」
「パパ、多分玩具のトラックのことだよ」
ま……まずい……見つかる……皆は……あれ?
いつの間にか皆は姿を消していた。
くそ、置いて行かれた。
「あったぞー! ん? これはデコトラ?」
俺は男に捕まってしまった。
「デコトラって何?」
「荷台の箱の部分に絵が描いてあるトラックのことだよ。昔は、よくデコトラの玩具に絵を描いて飾ったっけなぁ」
「絵? じゃあ私は魔法少女の絵がいい! パパお願い、このトラックに描いて」
ちょ…ちょっとまってくれ。それは本当勘弁してください……。
「よーし、可愛い娘の為だ。久々だけど力作描いちゃうぞー!」
イヤァァァー! パパさん、やる気出さないでー!!
◇
「よーし、出来たぞ!」
「うわあ、かわいい」
「ぼくにもみせてー」
『ぷっ、かわいいぞ』
部屋の片隅に隠れて覗いていたジョーが笑っている。
『…………あいつら』
俺の背中には、可愛らしいピンク色の魔法少女が描かれてしまった。
確かに魔法を羨ましいと思ったさ……だけど……だけどさ……これは違うんじゃないか?
『クッソー! どうしてこうなったんだぁぁぁぁ!!』
俺の心からの叫びが木霊する中、ジョーの笑い声がより一層響き渡っていった――。
完
最後まで読んでいただきありがとうございます。
これにて『異世界無双……否! 異世界爆走は止まらない!!』は、最終回となります。
皆さん楽しんで頂けたでしょうか?
後日、語られなかったブラックのやらかし話を外伝的な形の一話で書きたいなと思っております。出来上がりましたら、活動報告にて告知いたしますのでよろしくお願いします。
もし宜しければ、下部の評価や、感想などよろしくお願いします。




