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キセキ
貴石病。
原因不明、治療法もない先天性の奇病。自身の生命力を削って宝石を生み出し続け、やがて力尽きる。
平凡に暮らしていれば出会うことなく一生を終える。権力者が囲っているのだと囁く者もいたけれど、眉唾物のお伽話と思っていた。
「なのに出会うなんてなぁ」
土埃にまみれた少女を見下ろして青年はつぶやいた。くすんだ色合いの中、淡い蒼の瞳だけが浮かび上がるようで少し不気味だ。どこかの屋敷から逃げ出してきたのだろう。見捨てるのも寝覚が悪い。
「いくぞ」
二人は旅をした。少女は宝石を生み出し続ける。青年はそれを使わず「いつかのため」と隠した。「いつか」の使い道を話しながら旅をした。
やがて少女は死んだ。青年は元来た道を戻っていく。隠した宝石を集め、たくさんの孤児院を建てた。でも最初に使ったのは少女の墓だった。約束した通りの、花に囲まれた墓をたてた。
貴石病。
その患者を見ないのは、大切に匿われているからと言われている。