そう急くな
「どらぽるたぁぁーーー!!!」
「ひぃっ!! 何事よ!?」
俺は夢での激闘から目覚める。天使と悪魔と俺による世界を巻き込んだ大戦に勝利し、現世へと舞い戻ったのだ。
しかし、ここはいつもの俺の部屋ではない。よく見ると、俺の右にはおびえた表情の女の子が座っている。パッと見ただけでも美少女だとわかる顔立ちに透き通るような白髪の女の子だ。
「ちょっとあんたねぇ。私が起こそうとしたタイミングで飛び起きるなんてどういう了見よ。実はもう起きててタイミングを見計らってたんじゃない?」
まったく身に覚えもない戯言だ。まさかこれはまだ天魔俺大戦が終結していないということなのか? 何かの拍子でこの空間に迷い込んでしまったのではないか? すると、このあほそうな子は何者なんだ? 敵か? 味方か? いや、俺には味方なんていない。天使と悪魔を相手にしていたんだ、俺には仲間なんているわけもない。孤独の戦いだった。
「ちょっと無視するんじゃないわよ。私の話を聞きなさい」
「すまない。俺もこの状況に混乱してしまってな。ところで、天使と悪魔はどこにいった? 今頃、俺のことを探し回っているはずだ。すぐに戻って片付けなければ、世界が危ない」
「危ないのはあんたの脳みそよ。意味不明なこと言ってるんじゃないわよ」
なに? それじゃあ、ここは俺がさっきまで戦っていた世界とは別世界ということか? いや、でも一回の夢で二つの世界を股にかけるほどの大物になった覚えはない。つまり、まだ夢の途中だということだ。悔しいが俺の部屋はもっと平凡な部屋だ。こんな不思議空間ではない。
「大体状況は把握した。君は、この世界の神といったところかな? 俺に一体なんの用だ? 一刻も早く俺は戻らなけらばならない。目覚める前にこの世界を救わないといけないんだ」
「微妙に話が食い違っているような気がするけどまあいいわ。あんたのいう通り私は神よ。あんたを異世界へ送り込むために呼び出したのは私。理不尽に思うかもしれないけど、適正で選んだから文句は勘弁して頂戴」
「やはり君は神だったか。でもまだこの世界を救ってもいないっていうのに新たな世界へ旅立つのはいささか性急ではないか? 俺にはまだこの世界でやりのことしたことが山ほどあるんだ。少し待っていてくれ。すぐに俺のカイザーべリオンナックルアッパーであいつらを片づけてくる」
「一回だまりなさい。適正で選んだとは言え、まさか頭がここまで残念なのは想定外ね。今更入れ替えるわけにもいかないし、しょうがない。あんたには好きな必殺技でも授けてあげましょう? そういうの好きでしょ?」
必殺技を一つだと……既に俺には108の奥義があるというのに、そんなしょぼいレベルで俺を買収できると思うなよ。いや、でも必殺技を授かるというシチュエーションは燃えるな。それを駆使して異世界で大暴れする俺、うんいかすぜ。
「いいだろう。この俺が異世界の邪神、インバルクレイオスを討伐してきてやろう。俺に超絶奥義を授けろ」
「何なのその、話を適当にもってくるのは……まあ、状況自体は似通ってるのが腹立たしいわね。いいわ、あんたの好きな必殺技をあげようじゃない。その力で世界を救うのよ」
やっぱり新たな世界で俺を待つ人たちがいるのか。こうしちゃいられない。さらば世界よ。そして行こう、新たな世界へ。
「超絶奥義ファンタスティックロイヤルブレイクモンディベートで頼む。俺もついに超絶奥義を習得する時がきたか。これまで長い道のりだったな。俺に任せろ。世界だろうが、宇宙だろうが、銀河だろうが救って見せるぜ」
「何なのそのくそダサい必殺技は……いいえ、私がその必殺技を準備してあげましょう。私の力に土下座しながらありがたく使うのよ」
俺の108の奥義おも超越する、最強尾超絶奥義の習得。この夢はなかなかにいい味出してきてるじゃないか。天使と悪魔との戦いだけでもお腹一杯なのに、さらに別腹デザートまで用意してあるとはな。俺の想像力は無限大に広がってるぜ。
「もう説明はいらないわね? 準備はいいかしら?」
「ああ、俺にすべて任せろ。邪神オンゴラスバルカンを屠って見せよう」
「なんかさっきと名前が変わってないかしら? いいえ、もうなんでもいいわ。あんたは勇者として新たな世界へ転生するの。世界を救いさない」
世界を救うのは大得意だ。俺は数えきれないほどの世界をこの手で救ってきた男だ。間違いなく、俺よりも世界を救ったっていう人間は存在しないと断言できる。故に、俺は最強。夢の中でならスーパーヒーローなんだ。それにしても夢にしてはやけにリアルなんだよな。これも俺の今までの夢での体験が生きてきている証だ。次の世界も救ってくそったれな現実へ戻ろうか。
「俺の超絶奥義ファンタスティックロイヤルブレイクモンディベートで世界を救ってやる!!」
「それはちゃんと言えるのね。必殺技の発動には詠唱が必須よ。絶対に忘れないようにしなさいよ。それじゃ、あまり期待せずに見ておくわ。せいぜい頑張るのよ」
女の子がそういうと、俺は頭上に現れた空間の穴に吸い込まれていった。




