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第33話 亡者が行列に並ぶ話


 冒険者と商人の街、レクション。

 国内でも最大規模の広さを誇り、第二の王都として多くの人々が訪れている。


 この街をここまで拡大させたのは、ひとえにダンジョンのお陰であろう。

 街の周囲には上級から初心者用までのダンジョンが幾つも存在し、それを目当てにした冒険者たちであふれ返っていた。


 冒険者がアイテムを持ち帰れば商人がそれを買い、彼らが街に滞在すれば宿屋や店が儲かる。そうした発展の勢いはとどまることを知らず、街の規模は年々拡大し続けていた。



 飲食街にある酒場。

 ここは昼夜を問わず、多くの冒険者や商人たちが(さかずき)を交わし合っている。


 酒が入れば、口も財布の(ひも)も緩む。

 儲かる穴場を見つけただとか、伝説のドラゴンの(ひげ)を手に入れたなどと、嘘か(まこと)か分からない与太話が飛び交っている。新人の商人なんかは先輩に連れられ、どの話が本当か見極める修行をさせているほどだ。


 その中でも確実性が高く、多くの冒険者が口々に噂をしているホットな場所がある。


 それはこの街から南へと向かった先にある、比較的小規模なダンジョン。小さな山の(ふもと)にポッカリと空いた洞穴の中にある、初心者向けの迷宮だ。


 冒険者たちはそれを岩窟ダンジョンと呼んでいた。

 かつては冒険者に成り立ての新人が向かう登竜門として知られていたが、今ではその様相も変わってしまった。


 ダンジョンが突如レベルアップし、上級者ダンジョンへと様変わりしてしまったのである。



 事の発端は、とある新人パーティに起きた災難だった。


 彼らは先日冒険者になったばかりの若者で、剣士に魔法使い、盾使いや道具使いといったバランスの取れた4人組。才能にも(あふ)れ、仲間想い。

 周囲からも将来を期待されていた彼らは、いつか国選の冒険者となることを夢見て岩窟ダンジョンへと挑んだ。



 しかし彼らは初日で撤退を余儀なくされた。出現してきたモンスターが想像以上に強く、手も足も出なかったのだ。


 チームリーダーの盾使いが巧みに攻撃を防ぎながら仲間を逃がしたため、幸いにも誰かが欠けることは無かった。しかし大事な盾をモンスターに破壊され、当分の間ダンジョンへ潜ることができなくなってしまった。


 彼らにも多少向こう見ずの所があったとはいえ、十分に踏破できるだけの余力があった。だがそれも、そこが初心者向けのダンジョンであればだ。

 彼らが踏み入れた時には既に、そこは上級者向けの迷宮へと生まれ変わっていた。



 この情報はレクションの街に居る冒険者たちへと伝わった。

 ダンジョンがレベルアップするなど、数十年から数百年単位でしか起きない珍事である。当然、彼らに大きな衝撃が走った。


 同時にこれをチャンスだと取り、野望の炎を燃え上がらせる者も多かった。

 何しろ未踏破のダンジョンは宝が眠っている可能性が非常に高い。過去に新ダンジョンをクリアした者はその成果を持ち帰り、王に認められて国選冒険者として名を残している。


 蛮勇な冒険者であれば、その座を狙って自分も挑戦しようとするのも頷ける話だったのである――。



「まぁ、冒険者にも事情があるのは分かるけどよ……だからこそ言いたくなかったんだよなぁ」


 俺の視界には今、多くの冒険者たちが岩窟ダンジョンの入り口でたむろしているのが見えていた。


 あれは恐らくダンジョンに入る順番待ちなんだろう。彼らをターゲットに食事を提供する屋台すら出ている始末だ。先日俺がミカを連れて訪れた時には人っ子一人居なかったのが、まるで嘘のようである。



「やっぱり人の口には戸が立てられないですねぇ……」

「そりゃそうだろうねぇ~。こんなオイシイ話、誰も無視しないだろうよぉ」


 ダンジョンの進化を伝えた新人冒険者には悪いが、俺達は()えてココのことを黙っていたからなぁ。


 正確に言えば、ダンジョンが進化していたとは知らなかったわけだが。あくまでもボスが剣聖であることと、奴が呪いの宝玉を持っていることは極力誰にも知られたくなかったのである。


 それに、もしかしたら俺たちの前後にここへ訪れていた奴がいたかもしれない。

 なにせ街からすぐの場所にあるし、雑魚狩り専門の連中が居るぐらいだ。


 ただあの剣聖に挑んで返り討ちにされたか、俺と同じように口を閉ざしていたかは知らないが。



「ジャトレさん。こうして見ていても仕方がないですし、私達も並びましょうか」

「……そうだな。ここまで準備しておいて諦める訳にもいかねぇし」

「ボクは家に帰って研究をしていてもいいんだけどねぇ~」


 今回はミカに加え、キュプロも一緒にダンジョンに来ていた。

 彼女は正確に言えば冒険者では無いが、墓場ダンジョンで十分に戦えることは既に分かっている。


 元々ソロでダンジョンに潜り、神鳴り(カミナリ)の研究をしていたほどだ。よってコイツの実力は保証済みというわけだな。


 それに研究者をしているだけあって、知識も豊富なのも頼りになる。つまり、今では彼女も俺たちにとって欠かせないメンバーというわけだ。家で研究三昧(ざんまい)になんてさせるかよ。



「さて、俺達が向かうまで倒されてくれるなよ吸血女王(ヴァンパイアクイーン)!!」


 最奥で待っているであろう元剣聖ヴァニラへ、俺は闘志を燃やす。


 そして細身の黒装束男、教会の聖女、白衣を着た研究者といった異色の三人組は大人しく列に並んだ。



 ……うん。

 今更気付いたが、かなり異様な面子(メンツ)だな!?



 そんな目立った格好をしていたせいだろうか。とある集団が、列の外からこちらへと近付いてきていた。


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