表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/61

第32話 亡者と宝剣の真価を見せる話


 俺は今、単身でダンジョンボスと対峙していた。ここまで一緒に居たミカとキュプロには、後方に控えてもらっている。



「よぉ、ゾンビの王様。前に会った時は随分と俺を(もてあそ)んでくれたよなぁ? 今回はあの時の借りをキッチリ返しに来たぜ」


『――ガァアアアアアッ!!』



 既に奴の上半身は地上へと()い出しており、俺のことを睨みながら雄叫びを上げている。


 雰囲気でつい「借りを返す」なんて言っちまったが、コイツはダンジョンボスとして召喚されているだけだ。挑戦者を排除する以外の知性なんて存在していないだろう。


 そもそも、前回倒した奴とは個体が違うかもしれない。つまりこれは俺の完全な八つ当たりなのだが……まぁそんな話はどうでも良いか。



「早くやっちまわないと、余計に時間が掛かりそうだしな」


 奴の周りに見えるのは、数えるのも億劫(おっくう)になるほどの雑魚ゾンビたち。まるで砂糖にわらわらと群がる虫のようだ。


 それも際限なく次から次へと湧いている。早く大元を倒さないと、もっと厄介なことになるに違いない。余裕ぶっていないで、さっさと倒しちまおう。


 前回は何も見せ場もなく(とら)われの姫状態になっちまったしな……ちゃんと良い所を見せねぇと恥かいちまう。


 それに今の俺には、ミカの聖なる魔力で作られた光の盾がある。



「はははっ。誰かに護られてるってのも、不思議と嫌な気分じゃねぇな……」


 お陰で俺はロイヤルゾンビに支配されることもなく、こうして理性を保っていられる。

 苦労して腕輪を作ってくれたキュプロには、後でまた感謝を伝えなくっちゃな。



「あとはどう攻略するかだが……」


 問題は相手の物量の多さだ。

 奴の身体は無数のゾンビたちが(おお)っている。ただ破壊するだけじゃ、次が補充されて一瞬で元に戻っちまうだろう。それは俺自身が再生能力持ちだということもあって、あの厄介さは良く分かる。


 あれではまるで、動くゾンビの鎧だ。

 ここはやはり――。



「ジャトレ君! 君の持っているクロスペンダントに魔力をめるんだ!」

「分かった!!」


 使い方は腕輪と同じ。

 首に掛けた十字架のアクセサリーを握りしめ、闇魔法の魔力をぶち込むだけ。



「くっ、腕輪の比じゃない量の魔力が持ってかれるな……おおっ!?」


 一定の魔力が溜まったからだろうか。

 ペンダントから黒い(もや)が発生し、俺の身体を薄く(まと)い始める。



「な、なんだ? この(あふ)れ出る力は……!?」


「それは本来、闇をはらい、光の力を強めるアクセサリーだっただろう? それをボクが属性を反転させ、ジャトレ君の力を増幅できるようにしたんだよ」


「す、すげぇ!! 武器を握っていても、全く平気になったぞ?」



 アンデッドになったせいで長時間持つことができなかった、付与宝剣(エンチャントソード)。この宝剣も、今ではすんなりと手に馴染む。


 ククク、俺の相棒がようやく戻って来やがった。これなら、もしかしたら……!!



「覚悟しやがれゾンビ共。もう今までの俺だと思うなよ?」


 俺は自分の身体だけじゃなく、宝剣にも黒の靄を纏わせてみる。


 ――よし、成功だ。剣が反応し、ボンヤリと刀身が光り始めた。


 宝剣、月光の旋律。

 その名の由来の通り、闇夜に浮かぶ月のような神秘的な光だ。


 エンチャントの発動の合図を確認した俺は、ゾンビたちに向かって駆けだした。



『ガアアァアァッ!!』


 闇の眷属であるゾンビ共は付与宝剣(エンチャントソード)の放つ光におびえ、威圧の咆哮ほうこうを上げている。

 だが俺はそんな雑魚の遠吠えになんてビビったりはしない。



『グギャッ!!』


 ――銀光の一閃。


 横一文字に剣を振るえば、ノーマルゾンビの腹に光が走る。身体が上下に泣き別れになり、自重でズレて地面にベチャリとこぼれ落ちた。



「まだまだっ!!」


 俺は休むことなく、更に隣りの個体へと連撃を重ねていく。


 袈裟懸(けさが)け、突き、逆袈裟。

 どう斬っても、しっかりと手応(てごた)えを感じる。


 あぁ、この感覚が懐かしい。切れ味も最高だ。ノーマルもリーダーゾンビも全て一刀両断に切り捨てられる。


 奴らも必死で俺に対抗しようとするも、攻撃はミカとキュプロの盾に(はば)まれ、逆にこちらの攻撃で倒される。向こうは防具もマトモに装備していない裸の状態なので、剣筋も殆ど気にしなくて済んだ。



 こうなると、俺を止められる者はもはや居ない。生まれ出る数よりも早く切り伏せ、ゾンビ達は次から次へとその数を減らしていく。


 そして――


『ゴガァアアアッ!!』


 為す術がないのはロイヤルゾンビも同様だった。


 王を護るゾンビを減らしたことで、肉の鎧に空間ができた。その隙を逃さず、俺は付与宝剣(エンチャントソード)を滑り込ませる。



『グ、グォアアアッ!!』


「へっ。痛みは無くとも、腕が無くなったことぐらいは分かるだろう?」


 ゾンビの鎧が修復されるのは、頭や胴といった急所らしき部分が優先されていた。


 だから俺はまず、奴の右腕を落としてやった。そしてお次は左の腕。下半身はまだ地面の中だから……くははっ、今度はそのご大層な王冠を被った頭にしようか。



『ゴギュッ、ゴギギギ……!!』


「あー、修復しようと思っても無駄だぜ? ――俺が()()()()()()からな」


 宝剣の特性は何も切れ味を上昇させるだけではない。コイツの本来の力、それは斬った相手を奪うという特殊な能力だ。


 雑魚ゾンビ共を倒している時から、俺はコイツらを片っ端から喰って自分の力にしていた。自身を満たしていく力の奔流ほんりゅうに、俺はもう口角が上がりっぱなしだ。


 こうしている間にも、俺は敵の全てを喰らい続ける。文字通り打つ手のないロイヤルゾンビは抵抗すらできていない。



「――なんだ、もう終わりか?」


 ダンジョンの主は観念してしまったのか、闇の空間しかない眼窩(がんか)を俺に向けて最期の時を待っている。



「じゃあな、王様。お前の経験値ごと、俺が全部奪ってやる」



 ズンッという手応え。

 確かなトドメの感触と共に、俺は自分の種族レベルが更に高みへと上がったことを感じていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ