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弱くったっていいじゃん!

 『よっく聞けよ! 』


 未だ尻尾を離さない私に向かって前足突き付けて、偉そうに講釈垂れようとするシデン。


 「良いわよ。言いなさいよ! 」


 と、口尖がらして意地になっている私。


 そもそも、シデンのことが心配で尻尾にしがみつくなんて馬鹿みたいなことになってんのに、なんか話が違う方向に行ってる。

 なんか今の私って、


 (シデンが嫌がるからいい気味だ! 絶対に離してやんないぞ! )


 みたいな感じになってる気がする。

 まあ、離してやるかどうかは、シデンの講釈を聞いてから考えることにしよう。


 『オレが鍵穴の地を守る神さまだってのは知ってるよな? 』


 そんなのは、もう耳タコなんですけど。


 『この武蔵御嶽山から西に伸びた鍵穴の地ってのはな、異世界とこっちを繋ぐワームホールが、世界中で一番多発するトコなんだよ。界渡りしてくる異世界のバケモノどもが頻繁に出没する物騒なトコなんだよ。』


 それも聞いた気がする。

 私も子どもの頃に酷い目に合ったわけだし。


 『そんな物騒な地を、オレは一人で守ってたわけだ。』


 まあ、そうですね。

 それは認めます。


 『なんで、そんなことができたと思う? 』


 質問振られちゃったんだけど、何て答えれば良い?


 「そこ、強いからとか言って欲しいんでしょ? 」


 『当り前だ! オレが最強だから務まっていたのよ。他の神さま連中じゃ、到底務まんない役目なわけよ。分かんだろ? 』


 やっぱり、脳筋的な答えを求めていたのか。

 まあ、ウソじゃないんだろうし、それはそれで良いんだけどさ。


 『はい、それでは次の質問です! 』


 えー、めんどいなぁ。

 そう意思表示したのにシカトされた。


 『オレが弱くなって最強じゃなくなったら、どうなるでしょうか? 』


 「そりゃあ、鍵穴の地を守れなくなっちゃうよね。」


 『ピンポン! ハイ正解! 』


 「バカにしとんのかい? 」


 そんな、小学生レベルの足し算引き算みたいな質問すんじゃねーよ。

 私は高校2年生なんだぞ!

 来年は受験生なんだぞ!


 『そこまで言ったら、普通分かるもんなんだがな。オレの言いたいこと。』


 「あれ? そなの? 」


 ちょっと、整理してみよう。

 今まで、異世界の侵略から鍵穴の地を守ってたのはシデンなんだけど、それはシデンが最強だったからできたわけで、最強じゃなくなったら守れなくなっちゃう。

 で、誰も守らなくなったら鍵穴の地には異世界のバケモノが出入りし放題・・・


 「なんか、シデンの言いたいこと、薄っすらだけど分かってきた気がする。」


 『漸くかよ。』


 シデンに呆れられたけど、そんなのは無視。


 「つまり、シデンの最強が無くなったら、こっちの世界のピンチってことなのね? 」


 『そういうこと。ピンチにも色々あってなぁ、鍵穴の地が異世界のバケモノの巣になっちまうだろうってこと。但し、これは異世界の門さえ閉じてしまえば、侵入してくるのは鹿角レベルのザコだから、自衛隊がそれなりに予算を掛ければ何とかなるだろう。問題は、既に世界の一部は融合しちまってるから、ザコじゃねぇ異世界のバケモノどもも、多数こっちの世界へ侵入しちまってるってこと。オレは、そいつらとも戦わなきゃなんなかったのよ。そうするって、日本の味方してやるってサッちゃんとも約束したしな。』


 「サッちゃん? だれ? 」


 なんか、“日本のサッちゃん” で連想できる人物の中にトンデモない人がいるんだけど。


 『ああ、サッちゃんってのは日本の内閣総・・・ 』


 「ストーップ! それ以上聞きたくないわ! 聞かなくって良いわ~! 」


 危なかった!

 そういうのはノンポリ女子高生には絶対に無関係でいなきゃならない世界の人だからね。


 「なんか、ここまで聞いた話しから察する内容は、シデンが弱くなったら、鍵穴の地どころか日本も大ピンチになっちゃって、そのサッちゃん(汗)との約束も果たせなくなっちゃうんで、それをシデンは気にして、なんか態度が変になってたってこと? 」


 うーむ、私の心配とはポイント違いというよりも次元の違う話だったみたい。


 「ちなみに弱くなるって、どのくらい弱くなるのよ? 」


 『まあ、日本列島を沈めるってのは無理になるな。』


 「おいおい真面目に聞いてんだから、真面目に答えろ! 」


 『そう言われてもなぁ、何て答えたら良いか・・・ 』


 何か良い例えは無いものかと私も考えた。


 「そうだ! 満タンの魔力結石や今のシデンの力は、超強力な核兵器レベルなんじゃない? そこを基準にしたらどうかな? ちなみに、シデンとオーガの差って、どのくらいあったの? 」


 『鬼との差か? そうだなぁ、ヤツが原爆だとしたら、オレが水爆、いやコバルト爆弾だな。』


 コバルト爆弾って、SF映画とかに出てくる惑星を吹っ飛ばすほどの威力の爆弾でしょ?

 それと原爆なんて差があり過ぎじゃん!

 シデンVS相良が、そんなハンディキャップマッチだったなんて驚いた。

 スーパーヘビー級とミニマム級が同じリングで戦ってたようなもんだったのね。


 「そんじゃ、シデンが弱くなったら、どんな感じの爆弾になるの? 」


 『なんか変な物差しだが、まあそれで強弱を測るってんなら、弱くなったオレは通常弾頭のミサイルぐらいかな。』


 そりゃまた、随分なグレードダウンである。

 コバルト爆弾が通常弾頭のミサイルになっちゃうなんて、シデンの態度がおかしくなるのも分かるわ。


 『つまり、今までのオレは超戦略級の強さだったってこと。それが戦術級の強さにダウンしちまうんだから、日本を守るなんてスケールのことはできそうにないのよ。』


 そういうことだったのか。

 戦術級の強さでも、私なんかから見たら十分に強いと思うんだけど、異世界の怪物相手に連戦するんじゃ流石に物足りないってことなのね。


 それにしても、


 「シデンは律儀だねぇ。」


 そもそも、鍵穴の地を守ってたのだって、2000年も前に日本武尊とした約束だからでしょう。

 んで今回は、サッちゃん(汗)と日本国を守る約束したわけなんだけど、それが果たせそうになくなるんで気に病んでるわけだ。

 かなりお人好しな気もするんだけど、そういうのって嫌いじゃない。


 「はぁ~ もう止めないよ。シデンの好きにして良い。」


 私は、それまで抱えていたシデンの尻尾を手放した。

 必死で抱えながらも、モフモフな尻尾の感触を楽しんでいたので、ちょっと手放すのが惜しい気もしていたけどね。


 「私にはどうするのが一番正しいのかなんて分かんないけど、異世界の門が開き切るのはやっぱ嫌だなぁ。だから、門は閉じられるんなら閉じて欲しいと思ってる。もうオーガなんて危ないヤツとは会いたくないもんね。」


 この考え、たぶん日本中、世界中の人々の代弁で間違いないと思う。

 たぶん、サッちゃん(汗)も同じことを言うと思う。


 「だから、シデンが異世界の門を閉じてくれたら、皆が感謝してくれるだろうし、それが原因で弱くなったシデンを責める人なんて誰もいないよ。」


 サッちゃん(汗)だって、責めるどころか労ってくれると思う。


 『ま、そう願いたいところだな。』


 私の話を聞いたシデンが、ちょっと照れたような素振りを見せ、それをごまかすように首をコキコキ鳴らしていた。


 「そんじゃ、早速始めるの? 」


 『そうだな。やるとするか。』


 シデンの返事で、遂に異世界の門を閉じるための大仕事を始めることに決まった。

 これが成功すれば、異世界からの侵略による被害をある程度食い止めることができる。

 オーガの帝国みたいな大規模な侵入者を許さずに済むということらしい。


 「なんか手伝おうか? 」


 『いや、そこで飯でも食いながら見てろ。』


 シデンはそう言い放つと、相良が儀式の祭壇として残していったピラミッドへと向かって歩き出した。


 『そういやぁ、オレが気にしてたことの一つには、お前のこともあったんだぜ。』


 シデンは振り返らずに念だけを送ってきた。


 「私の? 」


 思わず首を傾げてしまったが、


 『好むと好まざるとに拘わらず、眷属にしちまった以上、オレには責任ってもんがあるのよ。親としちゃ、娘を守らなきゃならんのよ。一応、家族だからな。それをやるには、弱いオレじゃ心許ないんでな。実のところ、それが一番引っ掛かってたわけなんだけどなぁ。』


 その言葉、けっこうジーンときた。

 もちょっと早く言ってくれたら良かったのに。

 シデンと出会ってから今までの中で一番感動したよ。

 ちょっとだけ、身体中がプルプルしたし。


 すごく嬉しかったから、お返ししてやんなきゃならない。


 「シデンが弱くなったらさ、私が守ってやるよ! これからは、そういうことだってあるかもしれないし! 私はちょっと楽しいよ! ワクワクしてる! これからは、シデンと私は相棒だねっ! 」

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