だって、心配なんだからしょうがないじゃん!
「ハッキリ言いなさいよ! 溜めてた魔力をババッと放出したら、シデンがどうなっちゃうのか聞くまで、この尻尾は絶対に話さないんだから! 」
シデンのモフモフな尻尾を抱え込んだ私。
なんか、馬鹿っぽい絵面になってるなって分かってるんだけど、実は真剣。
開き掛けた異世界の門を閉じなきゃならないってのは分かるんだけど、そのためにシデンの体内に蓄えた魔力を使わなきゃならないってのが大問題。
私には魔力の大切さなんて、本当のところはこれっぽっちも分からない。
だから、見当違いの心配をしている可能性も考えられる。
でも、
「なんで、ハッキリ言わないんだよ! 」
さっきから、こっちは何度も心配して問い質してるのに、
『大丈夫なんじゃね? 』
とか、曖昧な答えばっか。
こうこうこういう風にやって、こうすれば門は閉じるからオーケー! みたいな明快な返事が欲しいのに、それが無い。
それと、何となく伝わってくる。
シデンが何やら重々しい覚悟を決めてるってこと。
たぶん、蓄えてた体内の魔力を放出するってのは、シデンにとってかなり深刻なことなんだと思う。
だいたい、余りモノとは言え300年分も溜め込んだ魔力結石がスカスカになるほどの量の魔力を使って開いた異世界の扉なんだから、閉じる時だってそれなりの量が必要に決まってる。
魔力結石が放出した量以下ってことは、たぶん有り得ない。
「シデンの魔力量って、いったいどれくらいなのよ? 」
そんな風に聞いたら、
『いっぱいに決まってんだろ。汲めども尽きずって感じよ。』
そんな風に言ってるけど、尽きないわけがない。
満タンになって余分が溢れ出してるってからには、容量があるんだろう。
その容量が魔力結石の何十倍もあるってんなら、心配しないんだけど、そんなわけじゃないみたい。
魔力結石1個で日本列島を海に沈められるとシデンは言ってたっけ。
シデンも、そのくらいのことができる力があるって言ってた。
でも、この大ボラ吹きが、それ以上のことを言った記憶が無い。
ユーラシア大陸を沈められるとか、アメリカ大陸を吹き飛ばすとか言ってたのなら、魔力結石よりもかなり凄いんだなぁと納得できるんだけど、今のところ、私には魔力結石よりも多少は多いくらいってイメージしか持てていない。
せいぜい2倍もあれば良いとこかなって感じ。
こんな物差しの使い方が適切かどうかなんて知らんけど、こんな考えをぶつけたら、
『そんな心配すんなって。大丈夫だからよ。』
こんな返し方されたんじゃ、大丈夫なんて思えるわけないじゃん。
ってわけで、
「この尻尾は絶対に離さん! 」
そう言い切ったら、このワンコ、盛大に溜息吐きやがった。
「なんてヤツなの? 」
この私の真剣な気持ちが、どうしてわかんないんだろ?
やっぱ、ワンコだから知恵が足りないんだろうか?
ワンコだから、あんまり難しいこと考えるの苦手なんだろうか?
ああ、困ったなぁ。
『このやろ! 真面目に心配してるかと思えば、相変わらずオレさまを知恵の足りないワンコとか抜かしやがって』
「言われたくないなら、正直に全部話せ! 溜めてる魔力をガバッと使い切ったら、シデンがどうなっちゃうのか教えろ! そうじゃなきゃ尻尾は離さん! ってか、教えたとしても内容次第じゃ、やっぱり離さん! 」
そう言って、私は全力で尻尾にしがみ付いた。
『ああ、もう! 勘弁しろや~! 』
流石にシデンは呆れ顔。
このまま根負けしろ!
さっさと折れて、正直に話せ!
『分かった! 話す! 話すから離せ! 』
「ん? 今、何て言った? 」
『オレが魔力結石に溜まってた分くらいの魔力を一気に放出したら、どうなるのかってことをキッチリ教えてやるって言ったんだ。』
「おや? 」
それって、私の勝利ってことで良いんじゃない?
根競べに勝ったってことで良いんじゃない。
『ハイハイ、分かったよ。お前の勝ちな。』
「よっしゃ! 」
と、ガッツポーズ。
あ、でも、根競べに勝つのが目的じゃなかった。
シデンの口を割らせるのが目的だったんんだ。
「だから、未だ離さないよ! 話を聞き終わるまで離さないから! 事と次第によっちゃ聞き終わっても離さないけどね。」
『まったく、とんでもねーヤツだぜ。』
そりゃま、人知を超えたパワーと超能力を持った戦う女子高生だし、とんでもないに決まってんでしょう。
その原因を作ったのはシデンなんだけどね。
「まあ、そんなんは良いから話していただきましょう。」
『はぁ~ 分かったよ。』
ってことで、シデンは漸く口を開いた。
『一応、最初に断っとくが、オレが死ぬとか消滅するとか、そういうわけじゃないんだってこと。そこが肝心なんだろ? 』
そうなのである。
そこが大切なのに、そこがハッキリしなかったから尻尾にしがみついているのである。
『なら安心しろ。魔力が空っぽにならない限り、オレが死ぬことは無い。ちょこっとでも残ってりゃ、いずれ回復して元通りだ。』
「ホントに? 」
『ホントだよ。』
それならば、どうしてシデンは私を安心させるようなこと言わないのだろうか?
何か言わずに隠してることあるのだろうか?
『そりゃ、まあな。』
「それ言いなさい! 」
『おい、なんで威張ってんだよ! 』
「良いから言えっての! 」
『お、おお・・・ 』
思い切りキツーク、脅し口調で言ったらシデンがビビった。
偶には、こういうのもアリだね。
ちょっといい気分。
それで?
『命に別状は無いんだが、大量に魔力を消費するとな、流石のオレさまも弱っちまうのさ。そう簡単に回復できないくらいになぁ。』
「そうなの? 」
それは、確かに大変だ。
力自慢のシデンがヨワヨワのヨボヨボになってしまったら、只のモフモフなワンコになってしまうわけだ。
そんなんになっちゃうなら、死なないのならどうぞってわけにはいかない。
いつだって偉そうにしてるシデンが、寝たきりになったりしたら辛過ぎる。
『いや、別にヨボヨボとか、寝たきりとかにはならないんだが。』
「そなの? 」
それなら、どうなるというのか?
『ハッキリ言ってな、今までのように最強じゃなくなっちまうってことさ。』
なんかシデンが変なこと言った。
なんか、私とは意識に大きなすれ違いが生じているみたい。
「はぁ~? さいきょおぉ~? って、なんじゃそりゃ? 」
普通、力を使い果たして弱るって言ったら、ヨワヨワのヨボヨボでしょ。
それが最強じゃなくなる? って・・・だけ?
「なんか、シデンの言ってることがホントなら、私とは価値観とか感性とかに相違があり過ぎなんですけど。」
ハッキリ言って心配して損したって感じ。
『そう言うと思ったぜ。』
このワンコ、今、舌打ちしながら溜息吐いたぞ。
なんか、私を馬鹿にしてない?
『あのなぁ、知恵の足りないお前に教えといてやる! キッチリ聞いとけよ! 』
なんですって?
私が知恵足りないって?
ワンコが言った?
言いやがった?
ようし、良いだろう!
何を言うつもりかは知らないが、キッチリ聞いてやろうじゃないか!
私を納得させられんだろうなぁ?




