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門って、今から閉じられたりすんの?

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


本作は、間もなく第1部が完結いたしますが

第2部以降も、コツコツと書き続けて行こうと思っていますので

今後もお付き合いのほど、何卒よろしくお願いいたします。



相変わらずのお願いですが

ブックマークや評価、感想なども

よろしくお願いいたします。

 「そっか、相良は死んだんだね。」


 その顛末をシデンから聞かされた私は、複雑な思いに駆られていた。


 相良と言う名で人の皮を被っていた異世界の怪物、魔人、鬼、オーガ。

 かつては高校教師であり、私のクラス担任であり、多くの生徒たちに信頼され慕われた存在である。

 誰とも分け隔てなく接し、どんな些細な相談にも親身に応え、それでいて適切な距離感を守ることを忘れない。

 高校の教職員としての事務仕事の速さと的確さにも定評があり、同僚の評判も良好。

 正に模範的な教師だったようである。

 もちろん、私も相良を良い先生だと思っていたし、その人柄を慕っていたことは言うまでもない。

 特に私の場合、母を亡くしてからは私事でも力になってもらっていたので、強い感謝の念を抱いていた、そんな先生だったのだ。


 ところが、相良の高校教師としての一面は全て偽りだった。


 私に接近し、異世界の門を開くために必要な魔力結石を奪う作戦の一環として、生徒に慕われる教師像を演じていたに過ぎなかったのである。


 その本性は、人の命を奪うことを何とも思っていない異世界の殺人鬼。

 殺戮に喜びを感じる狂気のモンスター。

 自らの教え子であっても、同僚であっても容赦なく殺した。

 私の大切な人たちを残忍な手口で傷つけ殺した。

 私を凌辱しようとし、遂には殺そうともした。

 憎んでも憎みきれない悪魔のような男だった。


 今、私の記憶の中には、この相反する2人の相良が存在している。


 そして、言うまでも無いことだが、相良に対する憎しみは果てしない。

 だが、クラス担任として親しく接した時の記憶が、ホンの僅かだが消えずに残っている。

 だから、相良の死を望んではいたが、その死を告げられた時に諸手を上げて喜ぶことはできずにいた。

 相良を1人の悪として認識しきれずに、まるで2人の相良が同時に存在していたかのような錯覚から抜け切れずにいたのである。


 『そんなん、時間が解決してくれるって。結局のとこ真実は一つ! ってヤツだからな。いずれは納得するしか無いんじゃないのか? 』


 シデンは、そんな風に言っている。

 確かに私もそのとおりだと思う。

 こうした複雑な思いは、いずれ合理的な思考によって整理され割り切られていくものだ。

 感情が薄れてしまえば、事実だけが残るに違いない。

 だから、こんな悩み、今は棚上げにしておくべきだと思う。

 今は、そんな個人的な感情に囚われている場合では無かった。

 私にとって、私たちにとって、日本にとって、世界にとって、何よりも優先すべきことがあるのだから・・・


 『あんまり考え過ぎんなよ。』


 シデンは粉々に砕かれたトーテムを前足で踏み躙りながら言った。


 蛇モンスターとの戦いを終えてから、私はピラミッドへ駆け上がり、その最上段に据えられていたトーテムを破壊した。

 異世界の門を開く儀式を行うための中枢であった偶像を破壊したのである。


 トーテムの形は人型であり、相良の種族である鬼、オーガの姿に似せて作られていた。

 派手な飾り細工を施され、ピラミッドの天辺で下界を見下ろすように直立していたので、モデルは高貴な存在、相良たちの神さまだったのかもしれない。


 「このトーテム、木製だと思っていたけど・・・ 」


 『人骨だったな。』


 何処の誰かは知らないけれど、ここにも相良の犠牲になった人がいたらしい。


 「どうして、こういうことすんのかな? 」


 そもそもトーテムとは、部族や血縁集団の象徴として機能するものであり、宗教的に結び付けられた野生の動物や植物などの象徴のことであり、支配者が理論性を以て統治するための団結の装置でもあるとかなんとか、高校の社会の先生が授業の余談で解説していた話を憶えている。

 もしかしたら、このトーテム、支配する側(鬼、オーガ)の姿を、支配される側(人間)の肉体の一部を材料として作ったことに重要な意味があったのかも知れない。

 でも、そんなことのために殺された人がいたなんて・・・


 『だから、考え過ぎんなって言ってんの! 別に、そんなこと知らんでも良いわ。』


 「うん、だよね~ 」


 今日1日で、私は大勢の小鬼を退治し、洲崎を射殺、鹿角と因縁の対決、さらには蛇モンスターとの一騎打ち、最後に相良が死んだことを告げられたりした。

 僅か半日ほどの間に衝撃的な出来事が沢山起こり過ぎて、心が疲れてしまい、少しナーバスにもなっていた。

 今は、何でもかんでも難しく考えてしまいそうな面倒臭い自分になっていそうなので、そこら辺は頑張って自己修復しなければならない。


 「思考加速でメンタル強度高くなってんだから、しっかりしなきゃねっ! 」


 『だいたいお前さ、真剣に悩んでるっぽく独白してるけど、焼きそばパン20個頬張りながらだと、全然深刻さが伝わってこねーなぁ。』


 シデンめ! 余計なことを言いやがって!


 「ほっとけ! 」


 これは(汗)、こればかりはしょうがないのである。

 リミッターを解除して暴れまわった後には、大至急エネルギー補給しなければ気を失ってしまう。

 蛇モンスターとの戦いで9割方のエネルギーを消費してしまった私は、大慌てでバックパックを拾い、持参してきた大量の調理パンを取り出して腹に詰め込まなければならなかったのだ。

 それで足りなきゃ、おにぎりも大量に買い込んであるから片っ端から補充である。

 でも、そういうトコは、できればスルーしておいて欲しい。


 「私のことよりも、あれってさ、ホントにどうにかなるもんなの? 」


 21個目の調理パン(唐揚げサンド)を齧りながら、私が指差したのは夜空の一点。

 チラチラと小雪が降り注ぐ曇り空、その僅かに開いた雲の切れ間に月が見える。

 そして、その直ぐ隣に全く同じ姿をしたもう一つの月があった。


 地球に衛星は1つだけのはず、それが何故か2つも。


 「ええっと、“世界融合” だっけ? あの2つの月が合体して1つになっちゃったら完成しちゃうんだっけ? 」


 ガッカリなことに、トーテムを破壊したけれど、時すでに遅し。

 儀式は既に終わってしまっていたらしい。

 トーテムを破壊されたことで、融合速度は多少鈍ったとシデンは言っているが、それで解決できたわけじゃない。

 こうしている間も世界融合は着々と進行中らしい。


 「なんてことなの! 期待を込めて見送ってくれた自衛隊の皆さんに合わせる顔が無いよ~ 」


 せっかく蛇モンスターをやっつけて目的達成したと思ったのに、手遅れだったのかと落胆しかけたら、何故かシデンに待ったを掛けられた。


 『手遅れってわけじゃない。まだ間に合うさ。』


 「でも、門を閉じなきゃいけないんだよね? 今から、そんなんできんの? 」


 私は齧り掛けの調理パンを片手で持ち直し、開いてる方の手でショーパンのポケットから1個の石を取り出した。

 トーテムに組み込まれていたシデンの魔力結石である。

 取り返してから、今までポケットに突っ込んでおいたのだが、


 「この魔力結石、空っぽってわけじゃないけど、もうスカスカだよ。」


 相良が行った儀式により、蓄えられていたエネルギーの大半を消費してしまったらしく、手に持った際に以前よりも軽くなってしまったのが実感できるほどになっていた。


 「こんなんじゃさ、門を閉じるなんて無理でしょ。」


 シデンが300年分の魔力を蓄えた結石。

 異世界の門を開けるためには、それがスカスカになるほど、大量の魔力を消費するらしい。

 おそらく、閉じるのだって同じような魔力量が必要になるだろう。

 でも、魔力結石はこれっきり。

 似たようなモノがもう一個あったけど、それは相良と共に失われてしまった。


 『まあ、なんとかなるんじゃね? 魔力結石じゃなきゃダメってわけじゃねーし。』


 自信満々というほどじゃないけれど、なんかシデンが余裕そうな発言をする。


 「何? どゆこと? ぶふっ! 」


 『おい! 汚ったねーなぁ。飲み込んでから喋れよ! 』


 人類のピンチ、世界の危機なんだから、パンと唐揚げとレタスの切れっぱしが、ちょこっと飛び出したぐらいで騒いでる場合じゃないだろう。

 気にせずに話を続けよう。


 『まったく! 』


 何か怒鳴ろうとしたっぽいけど、それをシデンは飲み込んで、その代わりに私に聴こえるように大きな舌打ちをしやがった。


 『そもそも、魔力結石ってのはオレの余分な魔力を300年分溜め込んで作ったモノだからな。余分じゃない魔力ってのもあるんだぜ。』


 「え? あ、そっか。」


 そう言えば、魔力結石はシデンが保有する魔力の余りモノを300年分ほど集めて作ったと聞いている。

 そもそもシデンの魔力量は膨大であり、使っても使っても直ぐに満タンになるということで、エネルギー問題に苦しむ人類には羨ましい限りのウルトラワンコだったりする。

 でも、過剰に生産される魔力は放っておいたら体内から溢れ出し、垂れ流し状態になってしまうわけで、そんなことになったら原発の放射能漏れと一緒で世間の迷惑になってしまうらしい。

 そこで、肋骨の一部を魔力貯蔵タンクにして、適当に溜めといてから取り出して保存し、後で“良いトコ使い”するために取っておいてるんだとか。


 「つまり・・・? 」


 余りモノがあるということは、余っていない魔力、つまり体内に蓄積してある魔力もあるってことになるのだが。


 「魔力結石と、どっちが凄いの? どっちが魔力量多いの? 」


 『そりゃ、オレの体内にある分の方が凄くて、多いに決まってんだろ。』


 「それ使ったら、門は閉じられるの? 」


 『ああ、閉じられんだろ。もう開いた分は取り返しつかないけど、これ以上は開かないようにできるぞ。』


 「なるほど。」


 ちなみに、ここまでに私たちが何の話をしているのかキチンと整理しよう。


 まず、シデンから聞いた話では、相良の儀式によって異世界の門が半分くらい開いちゃっていて、2つの世界が合体する “世界融合” とかいうのが始まっちゃったとのこと。

 で、既に融合してしまっている分は取り返せないんだけど、今、門を閉じさえすれば、これ以上の融合を食い止めることは可能だから、それをやろうってことなんだけど、


 「シデンの体内にある魔力ってさ、使っちゃって大丈夫なの? 」


 余分なモノ、体外に排出したモノなら消費しても問題無いだろうけど、体内に溜めてあるということは必要だから溜めてるモンなんじゃないだろうか?

 シデンの魔力回復能力がどれほどのモノかは知らないけれど、異世界の門を閉じるために消費する魔力がどの程度で、それを元通りに回復するにはどれほどの時間を要するのだろうか?

 そんなことをして、シデンは無事でいられるのだろうか?


 とっても気になるというか、


 「だって、心配じゃん! 」


 人間だって、カロリーやたんぱく質や水分や塩分とかを体内に溜め込んでるけど、それを消費し過ぎたら病気になっちゃうし、死んじゃうことだってある。

 私なんか、リミッター解除の10分間でエネルギーEMPTY状態になったら気を失っちゃうわけで、速やかにエネルギーを補充しないで放っといたら死んじゃいそうな気がする。


 異世界の門を閉じるのは人類を救う行為だし、それをすることで地球の全生物が無事に生存を全うすることができるという最良の結果を齎してくれるだろう。


 でも、


 「シデンは大丈夫なの? シデンが死んじゃったりしたらダメなんだよ! 」


 私は、この半年に満たない期間で沢山の友人や知人が傷つくのを見た。

 親しい人たちの死を見せられてきた。

 もう、そんなのを見るのは嫌だから、覚悟を決めて戦ったのである。


 「シデンだって、大切な家族なんだから! 大切な相棒だし! 大切な友だちじゃん! 」


 もし、シデンがいなくなったりしたら、私が戦った意味が無くなってしまう。

 シデンがいなくなるなんて、そんなのは絶対に嫌だ!

 そんなのは絶対に認めない!


 「そんなんになるんだったら、門が全開になって侵入してきた異世界のモンスターと戦ってた方がマシだよ! 」


 そこ、スゴク大事なところなんで、分かってもらわなけりゃ困る!

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