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ああ、懐かしの武蔵御嶽山!

第3章を始めました!

今後ともよろしくお付き合いください。


ブックマーク、評価、感想など

いただけると嬉しいです。

励みになります。


よろしくお願いいたします。

 東京都青梅市にある武蔵御嶽山までは、公安の警察車両で移動。

 東京湾岸から私のアパートまで送ってくれた汐見さんの部下だと言う厳ついオジサンが、引き続き運転して連れてってくれた。


 4人乗りのセダンに私だけじゃなくてシデンまで乗り込んだので、オジサンはかなり緊張してたみたい。

 彼らにとっては、後部シートに神さま乗っけて運転してることになるんだろうから、そりゃ緊張ぐらいするでしょうね。

 助手席に女子高生乗せてるんだから、それで少しは緩和されてたら良いんだけど。


 さて、アパートのある江戸川を出発し、都心を抜け、中央自動車道を走り、2時間ほどかけて到着したのは武蔵御嶽山の参道入り口。


 只今の時刻は午前1時。


 ここへ来る途中、人家が少なくなった辺りから警察により厳重な通行止めがされていて、参道入り口に近付くにつれて街道脇の暗がりの中に自動小銃で武装した隊服姿の陸上自衛隊員をポツポツと見掛けるようになっていた。

 そして、私たちが車を降りた参道入り口にあるケーブルカーの駅周辺には、暗視スコープを付けた大勢の自衛隊員と10台以上の装甲車両やトラックが集まっていた。

 全車両ライトを消しているので夜の暗がりの中に真っ黒で大きな鉄の塊のシルエットが浮かび上がっている感じで、一種異様な風景である。


 それでも、常人より夜目の効く私には、各車両のディテールがクッキリハッキリ見えており、


 「スゴイ! スゴイよ! カッコいいなぁ! 乗せてくれないかなぁ。」


 『やっぱ、お前って軍オタだな。』


 「そんなんじゃないって! カッコいいモノは誰だって好きじゃん! 見てよアレ! 89式装甲戦闘車だよ! ライトタイガーって言うんだよ! 良いなぁ~ アレに乗って行きたいなぁ。」


 『残念ながら、あの図体じゃ山ン中は走れんぞ。』


 「取りあえず、写真撮って良いか聞いてくる! 」


 『おい! 遊びに来てんじゃないって! 』


 シデンのお叱りを無視して、その場で一番偉そうな自衛官のオジサンに頼みに言ったら、やんわりと断られました。


 作戦中だからダメ!


 ストロボ焚くなんて絶対にダメ!


 なんですって。


 「ちぇっ! 」


 口惜しかったので、今度の富士山の総合火力演習は絶対に観に行かなきゃ! 写真撮りまくらなきゃ! と心に固く誓った。

 やっぱ、これって軍オタかな?

 

 その後、トイレ行って、お茶飲んで、一息ついてたら、隊長さんらしい自衛官のオジサンから指示があった。


 「これからお二方をケーブルカーで御岳山駅までお送りします。山上にある施設に滞在者はおりませんし、従業員も避難させましたので、今は我々自衛隊員以外は誰もいません。」


 確か山上には神社以外に売店があったし、宿泊施設もあったはず。

 それらのスタッフは全員が避難を完了していると言う。


 「なんか、そういうの聞いたら身が引き締まってきた。」


 いよいよ戦いが始まるのだという実感が高まってきた。

 腹の中から込み上げてきた熱いモノが、冷え切った身体をブルッと震わせた。


 「なるほど、これが武者震いってヤツか? 」


 『いや、寒いだけじゃね? カイロ貼っとけば? 』


 ワンコの一言で、せっかく気分が盛り上がってたのに台無し。


 このワンコ、わざとやってんのか?


 まあ、10年以上ぶりにケーブルカー乗れるから良しとしよう。


 「準備ができたようですので、参りましょう。」


 隊長さんの先導で、停車中の自衛隊車両の間を縫って真っ暗な坂道を登り、木造の外観が素敵な御岳登山鉄道滝本駅の、やはり真っ暗な構内を抜けて独特な外観をしたケーブルカーに乗り込んだ。


 その途中、隊長さんは暗視スコープなしでスイスイ歩いている私を不思議そうに見ていたが、敢えて説明を求めては来なかった。

 私も面倒なんで説明しなかったんだけど、シデンの眷属だっけ? そういう関係で特殊な人なんだろうって思ってくれてそうなんで、別に良いんじゃないだろうか。

 

 『ほほう、この車両は外観が平行四辺形なのが面白いと思ったが、車内も斜めで階段になってんだな。』


 シデンがケーブルカーの車内を見て感心していた。

 それ、初めて乗った人は、みんな面白がるんだわ。


 「私も、10年前に初めて乗った時はビックリしたもんだよ。」


 『んで、何処に座る? 』


 「そりゃ先頭でしょ! 」


 隊長さんが苦笑いしてた。

 私たちに、これから戦いに向かおうとしている雰囲気は全然出てなかったからね。

 遠足気分に見えてたのかも知れない。

 でも、私はこれでもけっこう緊張している。

 身体中がゾワゾワしてるし、鳩尾の辺りをキューッと締め付けられるような感じが、ずっと続いている。

 

 今度の敵は相良だし、洲崎みたいな人間じゃない。

 素の状態でも圧倒的な力の持ち主だと思ってたのに、魔力結石を飲み込んでパワーアップして、鬼みたいになった姿を見ちゃっている。

 それと戦おうってんだから、相良より強いっていうシデンと一緒でも不安は拭えない。

 “命懸け” なんてことが、私の人生で起こるなんて考えもしなかった。

 そんな気持ちでいるのを、他人に知られたくなかったし、紛らわすために遠足気分っぽくしてるだけ。


 『まあ、初陣なんて昔っからそんな感じで良いんじゃね? 』


 おいおい、初陣ってなぁ、


 (私は戦国武将じゃないんだけど。)


 ケーブルカーに乗り込んだのは、私たち以外に隊長さんと、その部下の武装した自衛官が2人。

 全員の乗り込みを確認した隊長さんが、外に向かって合図したら、ケーブルカーがガタガタ言いながら発車した。

 当り前だが、ベルは鳴らないし、アナウンスも流れない。

 レールの上を転がる車輪の音と、巻き上げ機の回転音以外は表を吹き過ぎる師走の冷たい風の音しか聴こえない。


 「前も真っ暗だから、あんまし楽しくないね。」


 真夜中のケーブルカーという奇妙なシチュエーション以外には楽しむ要素は一つも無く、至って退屈な5分間を過ごした後、私たちは御岳山駅に到着した。


 もちろん、こちらの駅の内も外も真っ暗闇。


 たぶん、参道に並んでるお店なんかも真っ暗。


 ここまで暗いと、周囲に邪魔する光が無いから、展望台に上って東京方面を眺めたら、すごくキレイな夜景が見えると思う。

 展望台なんか行ってる暇ないけどね。


 「我々が同道できるのは、ここまでです。ここから先へ進もうとすると、いつの間にか元の位置に戻されてしまうんです。」


 隊長さんが少し悔しそうに言った。

 それは、私が荒川河川敷のグラウンドで体験した相良の幻術と同じ。

 あの時は、シデンが相良を敗走させたので幻術による囲いは解けたけど、それまでは一歩も外に出られなかった。

 駅を拠点にして20人前後の自衛隊員が待機中だけど、彼らは幻術のせいで先へ進めず立ち往生しているらしい。


 「私たちは入れるの? 」


 シデンに聞いてみた。


 『オレを誰だと思ってんだよ。』


 入れるらしい。


 自衛隊の人は無理でも、シデンは大丈夫。

 ついでに、私もシデンと一緒なら大丈夫ということ。

 私一人じゃ無理なんだって。

 

 「試してみたのですが、ここから先はヘリやドローンでも進めないんです。残念ですが、我々はここからお二人を見送ることしかできません。」


 『しょーがねぇよ。気にすんな。こっちが終わったらココに帰ってくるからさ、小鬼なんかが襲ってくるかもしれないから、頑張って死守しといてくれ。』


 「ありがとうございます! マカミ様! 絶対に死守します。」


 ここでも、皆がマカミさまを知ってるみたい。

 シデンって、かなり有名人じゃなくて有名犬だったんだね。

 ワンコに励まされて嬉しそうにしてる隊長さんがちょっとカワイイ。


 『まーたぁ、イヌじゃねえって言ってんのに! 』


 「ハイハイ! 神さまなんでしょ~ 神さま、神さま~ 」


 ウチらのやり取りを聞いてた隊長さん、東京湾岸で私のご飯を買いに言ってくれた救急隊員の女性と同じで、やっぱり困った顔をしている。

 神さま相手にフランクな接し方するなってんでしょう。

 神さま怒らしたら、日本が無くなっちゃうかもしれないもんね。


 「絶対に、そんなことすんなよ! 」


 『オレに指図すんじゃねぇ! するわけねぇだろ馬鹿! 』


 「人のこと、簡単に馬鹿馬鹿言うヤツの方が、馬鹿なんですぅ! 」


 あ、隊長さん、溜息吐いてる。

 みんな、心配性だね。

 気持ちは分かるけど。


 「ところで、神月さん。」


 『あ、はい? 』


 隊長さんから駅舎の横に設置されたテントへ案内された。

 その中には暗視スコープ外した自衛官が2人待機していたが、明るさを最低限に絞ったカンテラの光で浮かび上がったのは、


 「うわっ! 武器いっぱい! 」


 そこは仮設の武器、弾薬の集積所だった。


 「神月さんには必要な装備があったら、何でも貸し出すように上の方から言われてますが、どうしますか? 」


 「へ? 私にですか? 」


 おいおい、女子高生が自衛隊の武器なんて持たされたって、扱えるわけないじゃん!

 誰が、そんな無茶なこと言ったんだろう?


 「非常事態ですから、どれでも貸し出しますよ。武蔵御嶽山から奥多摩まで、今は完全に無人ですし、山の中でなら使用になっても問題ありません。但し、紛失だけは絶対に避けて下さいね。」


 早速、隊長さんは手近にあった自動小銃を一丁取り上げて、


 「こちらが標準的な装備です。持ってみますか? 扱いはカンタンですよ。」


 と、差し出してきた。

 確か89式小銃だっけ?

 5.56ミリNATO弾撃つヤツ。


 「いや、勘弁して下さい。」


 私は力一杯首を振って遠慮した。

 そんなもん、私が撃ったって当たるわけないじゃん!

 間違って自分の足を撃つ未来が見える。


 「拳銃ぐらいは持っていった方が良いでしょう。撃てるって聞きましたが? 」


 撃てません!


 確かに撃ったことはありますし、洲崎を退治しましたけど、ほぼゼロ距離でぶっ放したわけで、狙って当てたわけじゃないです。

 

 「懐に隠し持っておけば、いざという時の護身用になりますから、拳銃は持っていった方が良いです。」


 そんなこと言って隊長さんが勧めるので、なんか断るのもアレなんで預かることにしました。


 それにしても、飛び道具なんかじゃなくて、もっと振り回せるような武器無いのかな?

 棍棒とか刃物的なヤツなら、なんとか扱えそうな気がするんだけど。


 「それなら、これをどうぞ! 」

 

 隊長さんが渡してくれたのは、持ち手のゴツイ短剣。


 「これって、銃剣ですよね? 」


 確か、“89式小銃用多用途銃剣”だっけ。


 「ええ、突く、切る、叩く。近接戦闘には心強いですよ。」


 ナルホドと数秒考えてから、これは納得して受け取った。

 さらに続けて幾つかの武器の説明をされたけど、チンプンカンプン。


 何聞いたって、


 (そんな、おっかないもん、女子高生に持たせるんじゃないよって感じ。)


 そんな中で、一つだけ使えそうに思ったモノがあったので、それはいただいといた。

 閃光発煙筒フラッシュバンってヤツ。

 この暗闇の中なら、閃光と音で敵の動きを止めるのに役立ちそう。

 他には? なんて念を押されたけど、それ以上の携帯は丁重にお断りした。

 重いし、嵩張るし、失くしたら怒られそうだし、どうせ私にゃ扱えそうにないモノばっかだし。


 『おーい! そろそろ行くとするか! 』


 テントの外で待っているシデンの声だった。


 「だね~、行きますか! 」

 

 私は預かった装備の使い方を一通り教わって、それらを多機能ベルトとかいうのに括りつけたり、身体のあっちこっちやバックパックに仕舞ったりくっ付けたりしてから、テントを出た。

 けっこう重い荷物が増えたんだけど、身体強化されてるから全然平気なのが、ちょっと嬉し悲しい。


 『ここからは歩きだぞ。』


 「それは良いんだけどさ、行き先は分かってるんだよね。」


 『任せろ! 』


 シデンの頼りがいのある良い返事。


 いよいよ大詰めである!


 相良をやっつけて、異世界の侵略者たちの野望を阻止して、そんな感じの流れで世界を救うのである!

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