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ナツキは無理しちゃダメだからねっ! そんじゃ~ 行ってきます!

本話にて第2章を修了します。

ここまでお読みいただいた皆さん

ありがとうございます。


引き続き第3章をよろしくお願いいたします。



よろしければ

評価、ブックマークなど

いただけると嬉しいです。


ご感想などもあれば

ぜひよろしくお願いいたします。

 ずっと聴こえてるわけじゃない。

 私が悩んだり、困ったりした時、唐突にナツキが話し掛けてくる。


 (これって、私の自問する心の声なのかなぁ。)


 私のナツキへの思い入れのせいで、心の声がナツキの声を借りているだけなのかも? って思ってたんだけど、


 (それにしちゃ、妙にハッキリしてんだよね。)


 もしくは、実はナツキにもテレパシー的な能力があったとか?

 んでもって、今回の事件が引き金になって目覚めちゃったとか?

 そういうことってあり得るのだろうか?


 『人間に、そんなような能力があったのは1万年以上前の未開の時代の話だぜ。とっくに失われてるって。』


 なんか、シデンが凄いこと言った。

 人間は原始の頃にテレパシーを持っていたみたいな、SFトンデモ本に載ってそうな珍説を口にした。

 私はシデンが何を口走っても、そんなに驚かなくなってるけど、今の一言で人類学とか研究してる人は、ぶっ飛ぶと思う。

 ってか、シデンて2000歳ぐらいじゃなかったっけ?

 なんで、1万年も前のこと知ってんの?


 『そりゃ、神さまだからな。情報通なんだよ。』


 情報通って・・・流行情報じゃないんだから。


 『人口が増えて言語が充実してから、あっという間に退化して、今じゃ完全に失われた能力だから、お前の友だちが備えてる可能性はゼロだな。』

 

 「先祖返りとかは? 」


 『それは無い。先祖の形質が時代を飛び越えて現れるってのは聞いたことがあるけど、超感覚的な能力が再現されるなんて有り得ないだろう。』


 あっさり言い切られた。


 「でも、世の中には超能力者だって人いるじゃん。」


 ノストラダムスとか、なんとかケーシーとか、ジーンなんとかなんて、私でも知ってる有名人たちは超能力者じゃないのだろうか?


 『おいおい、あんなんは全部イカサマだぞ。手品や詐欺の類いなんだぞ。ホンモノなんて一人も見たこと無いって~ 』


 なんてことだろう。

 ESPだって、真剣に研究してる人がいるのに、シデンの今の一言で全否定。

 この無駄に長生きしてるらしいワンコ、人類史の謎とか太古のロマンとか、そういうのを片っ端から否定しちゃいそう。

 そんなことされたら世の中つまんなくなるから止めて欲しい。

 知ってても黙ってて欲しい。


 『でな、先天的な可能性は否定するが、お前の友だちが後天的に能力を身に付けたっていう可能性はあるぞ。』


 「なにそれ? そういう可能性ってあるの? 」


 「無いことも無いって話だが。」


 曖昧な答え。

 神さまだってんなら、もっと確かな返事してくれないかな。


 『神さまはデータベースじゃないんだから、情報通って言ったって知らないことだって沢山あるんだよ! だから、確信は持てないって前提で、可能性についてだけ言っとくが、その友だちは重傷を負って死にかけてた時にオレの魔力で命を繋ぎとめてんだわ。その時に軽く能力の切れっ端みたいなモノが乗り移ったのかも知れん。』


 そう言えばそうだった。

 ナツキが洲崎に重傷を負わされた時、シデンが治療してくれてた。

 シデンは私の意を酌んで親友の命を繋ぎとめてくれていた。

 そうでもなければ、無傷で回復なんてできるようなレベルの怪我じゃなかった。


 「それって、私が子どもの頃にシデンに助けられて、今、こんな可哀そうな身体になっちゃったのと同じ感じ? 」


 『なに可哀そうとか言ってんの? 凄い能力が身に着いたんだぞ! バトルモードなら人類最強だぞ! 』


 そういうのが、女子高生には不必要で可哀そうな能力だって言ってんのに、分かんないワンコだな。

 なんで、普通の一般人の乙女が人類最強を喜ぶと思ってんだろ?


 「もしかして、ナツキも人類最強になっちゃったりすんの? 」


 戦う女子高生2号が新登場するのだろうか?

 技の1号、力の2号みたいな感じ?


 『それは、いくらなんでも無理。お前には魔力結石を渡しただろ? 友だちはオレの魔力で治療しただけ。同じにはなんないよ。しかも、お前は10年モノなんだから特別なんだよ。』


 10年モノってなぁ、人を熟成味噌みたいに言ってるし。


 「んじゃ、テレパシー能力だけ移ったのかな? 」


 『その程度のことなら、十分あり得るんじゃないかな。』


 一瞬、ナツキが2号になるなら、ちょっと心強いかなと思ったけど、やっぱり違くて良かった。

 こんな、アホみたいな能力が身について悩むのなんか、私一人で十分。

 親友のナツキには、身体と心が癒えたら普通の人生を歩んで欲しい。


 (なんか、これって改造人間の悲哀に似てんだけど。やっぱ、1号の宿命みたいな感じなのかな? )


 取りあえず、そんなオタクな話は脇へ寄せておくことにして。

 あとは、今少し気になっていること、


 「戦ってる最中に聴こえた声は、私が置かれてる状況とかも知ってたっぽいんだけど。私を元気づけてくれたりもしたんだよ。でもさ、ナツキは知らないはずじゃん? 」


 『テレパシー的な能力を持ってるなら、お前の頭の中にアクセスした際に記憶が漏れ伝わることもあるさ。それに、オレの能力が移った時、一緒に記憶や知識の一部も移ってたって不思議はない。』


 それならば、私の記憶や考えが読めていたなら、ナツキは私のせいで酷い目に会ったんだと知っていたはず。

 それなのに恨み言の一つも言わず、自暴自棄になっていた私を叱ったり、戦いに迷った時には励ましてくれたりしていたのである。

 

 (そっか、やっぱナツキはホントのホンモノの親友だよ! 嬉しい! 泣けてきちゃうよ! )


 そんな、ナツキとテレパシーで心を通じ合わせ、いつでも会話ができるなら、これから戦いに臨もうとする私にとって、こんな心強いことは無い。


 『いくら何でも、そりゃ無理だわ。』


 なんだかなぁ~

 せっかくの私の前向きな考えは、シデンに即却下されてしまった。


 「え? なんでダメなの? 」


 『あのな、テレパシーって、もの凄く体力消費するんだぞ! 受けるだけならともかく、送る方はたいへんなんだ。お前は色々と強化されてるから、遠隔地にいるオレとの会話も不自由なくできてたけどな、並みの人間の体力じゃ、二言三言の念を送っただけでフルマラソンコースを走り切ったぐらいのエネルギーを消費しちまうんだぞ。』


 「マジか? 」


 確かに、ナツキの声が聴こえるのは時々だった。

 ずっと聴こえ続けていたわけではなかったが、そういう事情があったのか。

 今し方も、ハッキリと声が聴こえたのに、それっきり、こちらから話し掛けても返事は無い。

 その前の時も、そうだった。

 少し長めの会話を交わしたら、その後は暫く音沙汰が無くなった。


 『流石に、お前の体力に合わせての会話は無理だな。交信し過ぎたらぶっ倒れちまうぞ。』


 ううっ! そうだったのか。

 知らなかったとはいえ、ナツキにとんでもない負担を掛けてしまっていた。

 次に話し掛けてきたら、もう無理はするなと言っておこう。

 ってか、私を体力馬鹿みたいに言うの止めろ!


 『お友だちの話は、そのうち本人に会って確かめれば良いこととしてさ、そろそろ出掛ける準備終わったのか? 』


 そうなのだ!

 東京湾岸から一旦帰宅した私は、これからシデンと一緒に武蔵御嶽山に行かなきゃならない。

 魔力結石を奪って逃げた相良を追って、その息の根を止めるために。

 そして、異世界の門が開くのを阻止するために。


 「武蔵御嶽山とは、よくよくご縁があるんだけどさ。異世界の門を開く場所って、なんでアソコなわけ? 山奥だし雰囲気っちゃ雰囲気なんだけど、他の、例えば新宿とか渋谷とかの街中じゃダメなの? 」


 『街がダメとかじゃない。偶々、武蔵御嶽山の辺りが門を開くのに都合の良い条件が揃ってるってだけ。あっちとこっちを隔ててる壁が一番薄いってことさ。“鍵穴の地”って言われててな、世界中探しても、他に適した場所は無いんだよ。』


 「ふーん、そういうもんなのか。」


 『で、出発準備は? 』


 「ほぼ完了! 」


 東京湾岸から帰宅した私は、血や土砂や埃を被ってドロドロになっていたので、まずはシャワーを浴びてスッキリ。

 その後、アウトドアに良さげで、寒さ対策に適した服装に着替えた。

 ベースレイヤーはウール100パーセントのロングスリーブ、ミドルはフリースと起毛付きのベストで保温性バッチリ、アウターは動きやすさ重視で中綿入りのポンチョを羽織った。

 ボトムも、もちろん動きやすさ重視で、裏起毛のショーパンに厚手のレギンスである。

 

 『滑り止め付きのグローブとかあった方が良いんじゃね? 』


 「ああ、あるよ。お母さんが昔使ってた防寒作業用のヤツ。」


 『靴は? 』


 「それも、お母さんが昔使ってたトレッキングブーツがある。サイズ一緒だし。」


 父母共に存命だった10年以上も前に使ってた、家族のお出掛けグッズが、今頃になって役立つとは思わなかった。

 もう2度と山歩きなんてしないつもりでいたであろう母が、何故アウトドア用の手袋やブーツを処分しないでいたのか?

 たぶん、父との思い出の品を大切にしたかったのだろう。

 そして、それらを身に付けた私が向かうのは思い出の武蔵御嶽山である。


 (そういうのを絆って言うのかもね。)


 ちょっとだけ感傷的になりながらも、これでお出掛け準備は完了。


 『ところでさ。』


 「なに? 」


 『なんで、これから山ン中で戦おうってのに、お出掛けメークしてんだ? 』


 「あれ? 」


 お肌の寒さ対策したつもりだったのに、いつの間にか普通にメークしてたわ。

 なんとなくシデンとの会話に気を取られてたら、間違っちゃったみたい。


 『大丈夫かよ? 』


 「山ン中で匂いするかな? 居場所バレちゃう? 」


 『その心配はいらん。どうせ、オレやお前の体臭なんて素のままでも嗅ぎつけられるだろうし。』


 「ええっ! 私、そんなに体臭キツクないもん! 」


 『ハイハイ、分かったから。そんじゃ行くぞ! 』


 「了解! 」


 シデンに促され、玄関先に置いといたリュックを担いで家を出た。

 リュックの中身は、もちろん食料。

 いざという時に燃料切れになったりしないよう、小まめに補給するための高カロリー食、炭水化物で満タンである。


 「『さぁて、戦闘開始だ! 』」

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