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5分で片付けるから! だって5分しかないんだもの!

 汐見さんをフォークリフトの運転席に乗せ、手近で見付けたブルーシートで覆って外からは見えなくしておいた。


 (汚いシートだけど、我慢して下さい! )


 後は洲崎と小鬼、巨大イカも、この近くに来させなければ良い。

 それと、汐見さんには5分で片付けると言い残してきたが、これは本気。

 リミッターを解除してから既に10分近くが経過している。

 小鬼と戦っていた時間は正味1分も無かったし、あとは跳んだり走ったりしただけなので、未だ戦う余裕は残ってるっぽい。

 だが、リミッターを解除しているだけで、エネルギーは駄々洩れしているので、持って残り5分程度ってとこだろう。


 (5分で、小鬼全部と洲崎と巨大イカ。ちょっと厳しいけどやるしかないなぁ。)


 一先ず身軽になった私は、私は巨大イカが暴れるコンテナヤードの中央に取って返した。


 (こいつが使い物になるなら良いんだけど。)


 走りながら、懐にしまってある自動拳銃を服の上から撫でた。

 けっこう重いし、ポケットに入る大きさじゃなかったので、汐見さんみたいにベルトに挟もうとしたのだが、今日の私が身に付けているのはワンピースのアクセサリーベルトなので、拳銃なんて挟めなかった。

 しょうがないので、相良に破かれた襟元から懐に突っ込んでおいたのだが、


 (懐で暴発とかしないだろうね? )


 映画なんかで見た知識で、おそらく拳銃には安全装置的な、レバーみたいなモノが付いてるはずだと思ったのだが、この拳銃はそれが見当たらなかった。

 試しに引き金を引いてみようなんて勇気は無かったので、取りあえずは今まで汐見さんがベルトに挟んでいて何事も無かったのだから、たぶん大丈夫だろうということで納得しておいた。


 (だけど、洲崎のヤツ、汐見さんを捕まえた時、痛めつけるだけで武装解除とかしなかったんだ? 自分の力に過信し過ぎてて忘れたって感じかな。やっぱ、素人だね。隠し通した汐見さんがプロだったんだろうけどさ。)


 んなこと言ってる私だって素人なんだが、最近は自分が軍オタなんじゃないかと思うくらい、戦争映画や戦争アクション映画を見まくっていたので、頭の中はその手の知識がけっこう詰まっている。

 所詮は物語上での知識だが、戦闘時の注意事項、留意事項とか心構えっぽいことは、たぶん洲崎よりも詳しい。


 (こいつが撃てたら、小鬼ぐらいは倒せそうなんだけど。)


 小鬼は5匹いる。

 良く分からないけど、この形をした拳銃は弾が10発以上は入っているはずだから、弾数に余裕はある。

 だが、私が撃って小鬼に命中させられるかと言えば、


 (それは無理でしょ。)


 拳銃なんて初めて触ったし、どうやって狙って良いのか分からない。

 反動が凄いとも聞くし、うっかり撃った弾が明後日の方向に飛んでって、無関係の人や物に当たったら洒落にならない。


 (拳銃が使えるかどうかは後で考えるとして、今はこれで良いや。)


 走りながら見つけたロープ止めの杭である。

 長さは約1メートルで、太さは2センチほど。

 頭の部分にロープを透す円い輪っかの加工がしてあって、反対側は固い地面に突き刺さすために先端が鋭く尖っているので、手槍として使い勝手が良さそう。


 (使い慣れない実用兵器より、こんなんの方が効果的でしょ。)


 私は、これを右手に1本、左手に3本、計4本握り締めて走った。

 そして、私を探して巨大イカが暴れまるコンテナヤードの中央に戻ってきた。

 そして、目の前の惨状に呆れかえる。


 (わちゃ~ どうすんのコレ? いくら夜間で人が少ないって言ったって、絶対に誰か気付いてるでしょ! )


 巨大イカはモンスターである。

 大きな鰭を左右一対付けた長さ10メートル以上もある外套部を垂直に立て、8本の足で地面を引き摺るように移動し、2本の長い触腕を振り回しながら辺りにある障害物を薙ぎ倒し壊している。


 (イカが、あんなことできるわけないじゃん! )


 本来、軟体動物なんてモノは、陸に上がったら自重で潰れてしまい、ノロノロとしか動けないはずなのだが、こいつは自分の筋力で触手を操り普通に動けている。

 それもかなりの馬鹿力のようで、中身が空っぽとはいえ重さ2トン以上もある金属製のコンテナを空中に放り上げたり、触腕で叩き潰したりもしていた。


 (まるっきり怪獣だよ! )


 だから、巨大イカが暴れた後は滅茶滅茶である。

 舞い上がった土砂や埃で、視界も最悪。


 (こんなんで私を探せんの? )


 探せているはずがない。

 ボスの相良に “しくじるな” と釘を刺されて焦った洲崎が、私諸共この辺一帯を丸ごと破壊しようとしているのか、それとも私を炙り出そうとしているのか、どちらかだった。


 (雑な作戦ねぇ。)


 巨大イカの出現時に私が一旦距離を取って、汐見さんを避難させていたとは考えてもいないらしい。

 私が、今も汐見さんを抱えてコンテナヤードの迷路の中を逃げ回っているとでも思っているのだろう。


 (洲崎って、確か勉強はできていたはずなのに、こういう実戦じゃ馬鹿になるんだね。)


 性欲と暴力欲が昂り過ぎて馬鹿になってしまったのかも知れないが、戦う相手としては都合が良い。

 前回は、人質を取られていたから全力で戦えなかったが、今回は遠慮なくガチでやり合える。

 それに、


 (これ以上、私の目の前で人が殺されないようにするには、洲崎は生かしておいちゃいけないし! )


 今の私は開き直っている。

 これまで、戦うこと、殺すことについて、散々迷ったり逃げたりしてきた。

 たぶん、これからも迷うし、逃げもするだろう。

 でも、これからは新しい自分ルールを基にして生きていくことにした。


 「異世界の馬鹿げた弱肉強食の暴力主義を、こっちの世界に持ち込んでくるようなヤツは許さない! 」


 要は、私の日常を破壊しようとする異世界のバケモノは絶対に許さないということである。

 それを行動原理にしようと決めたら、私のメンタルはもう大丈夫。

 元々が思考加速能力で強化されているから、自分で理屈に納得できてさえいるならば、もう壊れたりすることはない。

 今までタブーにしていたことを180度転換して実行しようと言うのだから、まだまだ後悔したり悲しんだりはするかもだけど、そういうのは我慢するか無視するしかないし、たぶん今の私なら耐えられる。

 少なくとも、この場で私は洲崎を殺すことに躊躇いを覚えていない。


 (さて、時間も勿体ないし、このままじゃ暫く見つけてもらえなさそうだし、こっちから行きますか! )


 地面を一蹴りした私は、幾つかのコンテナを踏み台にしながら、洲崎や小鬼たちのいる方向へと距離を詰めていった。

 視界は悪いが、敵の所在は感知できている。

 それも私の能力。

 遠く離れられたら利かなくなるが、半径20か30メートル以内なら敵の出す思念波みたいなモノがビンビンと伝わってくる。


 (いた! )


 私が今着地したばかりのコンテナから直線距離にして20メートルも無い。

 舞い上がる土埃に霞んだ向こう。

 大暴れしている巨大イカの手際を腕組みしながら眺めている洲崎と、その傍に小鬼が5匹見えた。


 (何なんだあいつ? 仕事はイカ任せかよ! )


 私の接近には全く気付いていない。

 巨大イカが暴れる騒音のおかげで、足音や着地音も消えてしまっているので、それはやむを得ないが、


 (こっちを舐めてくれるのは有難いんだけどさ、そこまで油断されたら、けっこう腹立つんだよねっ! )


 左手に抱えた杭のうち2本を右手に移し替えた私は、合わせて3本の杭を握りしめ、槍投げのポーズで振り被った。


 「んりゃっ! 」


 思い切り力を込めて投げた3本の杭は放物線を描かず、レーザービームのように一直線に飛んだ。

 私は杭を放つと同時に、その後を追い掛けるようにしてコンテナを蹴って大跳躍。

 杭と私が向かう先にあるのは洲崎と小鬼5匹。

 とりあえず巨大イカは放置。


 (どうせ召喚したバケモノなんて、主を殺せばゲームオーバーで消えちゃうもんでしょ! )


 RPGゲームなんかでは、そういうルールもあるが、この場にそれが適応されるかどうかは知らない。

 でも、残り時間で洲崎と小鬼と巨大イカ、全部倒すのは無理なので、優先すべきは洲崎、そして小鬼。

 巨大イカが消えずに残っていたら、後は警察や自衛隊のほうでお仕事にしてもらうしかない。


 モンスターとはいえ、動物には違いない。

 主が悪意を持って操っているから性質が悪いわけで、それが無くなれば大きかろうが小さかろうが、ただの “害獣” だろう。


 だから、私は一番性質の悪い方を先に始末することにしたのだ。

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