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そりゃあ、気になるに決まってるよねぇ~

 不満そうな顔してる私に気付いた汐見さんが、


 「まあ、相手は神さまなんだから、しょうがないんだよ。」


 そんな風に言って宥めてくれたが、イマイチ納得がいってない。


 だって、眷属って言ったら、吸血鬼に血を吸われた人とか、アイテムとか呪文の詠唱なんかで呼び出されるモンスターでしょ。

 他には、カプセルに入ってて主人公がピンチの時に時間稼ぎするとか、主人公のお手伝いで呼び出されるしもべだったりとか、いずれにしろ操り人形とか手下の一種とか、そんなヤツらのことでしょ。


 アレ? 違ったっけ?


 「うーん、神さまの眷属ってのは、そういうのとは違うと思うんだけど。たぶん、身内とか子どもとか、そんなニュアンスじゃないかなぁ。ああ、巫女さんみたいなのかもしれないかなぁ。」


 家来よりは良いかもしれないけど、一番納得いかないのは、どっちにしろ私が下なのねってこと。


 「でもね、紗耶香ちゃんが授かった能力ってのは、マカミさまじゃなくて、シデンだっけ、そのシデンさまから戴いたモノなんだろう? それに相手は2700歳近いって話だぞ。17歳の紗耶香ちゃんじゃ、目下でもしょうがないんじゃないかなぁ。」


 ビックリした。

 そういう話が、汐見さんの口から、大人の人の口から出てきたことに驚いた。


 そもそも、シデンは2000歳以上だって自称してるけど、正直言って私は今も半信半疑である。

 口の利けるワンコだし、戦闘能力高そうだし、並みのワンコだとは思っていないけど、神さまってのはちょっとね~ という感じ。

 だって、雰囲気が全然、神さまっぽくないし、威厳が備わって無いんですよね~

 それに、2000歳でもマジか? って感じなんだけど、2700歳近いって、もしかして皇紀と同じってこと? 日本書紀だから? 

 でも、皇紀って初めのところはフィクションなんでしょ?

 だいたい、日本書紀や古事記なんて神話なんだからさ、物語なんだからさ、そんなのが根拠じゃ超ウソっぽいじゃん。


 そういうのを、いい歳した大人の汐見さんが信じてるってことには、ビックリせざるを得ない。


 あと、それから、シデンじゃなくてマカミさまだっけ?

 その存在を国家権力が知っているって事実にも驚いてんですけど。

 っていうか不思議なんですけど、いったいどういうことなんでしょうか?

 

 「その辺については、日本国の歴史的な最重要機密事項なんでオレからは話せないんだが、そのうちに紗耶香ちゃんはマカミさま、じゃなくてシデンさまから直接聞けるんじゃないかなぁ。」


 歴史的な最重要機密事項ってねぇ、ちょっとビビる。

 うーん、シデンが教えてくれるかなぁ。

 聞いたら答えるかもしれないけど、あいつホラ吹くかもしれないし、面倒臭がって適当なこと言うかもしれないしなぁ。

 それに正直言って、そんなのノンポリな私にはどうでも良いことなんだよね。


 ってか、シデンに “さま” 付けるのって、なんか変。


 「おっと、話が逸れちゃったけど、元に戻すよ。」


 「あっ、はい。」


 何やらこの面談、もう少し時間が掛かりそうみたいなんで、汐見さんがノンアルビール、ついでに私はウーロン茶を追加で頼んだ。

 こんな話しの途中で店を変えるより、このまま居座った方が良いだろうってこと。


 「ちなみにさっきの話だと、紗耶香ちゃんが能力を使ったのは、最初は誘拐未遂事件の時、次に先日の荒川河川敷での事件の時、その2度だけなんだね。あとは練習の時にちょこっとか。」


 「はい。そうです。」

 

 そりゃま、あんな能力、日常生活に必要無いし。

 でも、重い荷物持つ時は楽になったので、少しだけ便利かもしれないくらいには思ってる。


 「それじゃあさ、今から大事なことを聞くけど、よく考えて答えて欲しいんだ。良いかい? 」


 「はい、わかりました。どうぞ。」


 改まっての念押しで、汐見さんの口調が少し重くなった。

 この辺を境にして、何となく場の空気が変わった気がする。


 それまでは優しいオジサン風だった汐見さんの顔が、仕事中の警察官らしい真剣な表情に変わった。

 口調や表情は穏やかなままだが、私に向けて放つ圧の量が変わった。


 (やっぱ、公安の人なんだもんなぁ。)


 尋問や取り調べってほどじゃないけど、真剣味が10倍ぐらいに増したかなって感じ。

 そういう風に来られたら、私も真顔で応えるしかない。


 「さて、これから先のことなんだけど、紗耶香ちゃんは自分の能力をどうしたいと思ってるんだろうか? なんてったってオリンピックや世界選手権に出たら全種目ぶっちぎりで金メダルとれるぐらいの凄い力だよね? 格闘技の世界でだって世界中で紗耶香ちゃんに適う人間なんていないじゃないかって思うよね? そんな能力、日常生活の中じゃ持て余すと思うんだよね。」


 「それは、そうかもですね。」


 もちろん、その自覚はある。

 50メートル1秒台で走れる人間なんて、いるはずないし。


 「例えば、紗耶香ちゃんは能力を生かすためにオリンピックなんかに出たいと思ったりするかな? 」


 これは考えるまでも無く即答でしょ。


 「出ないですね。こんな力、人間枠じゃないですから。」


 それに、自分で努力して身についた力でもあるまいし、もらいモノの力なんかで世界記録なんか出してもちっとも嬉しくないし、努力した人に失礼だろう。


 「なるほど、そういう風に考えられるところは、紗耶香ちゃんの良いところだね。」


 なんか、感心されたっぽいんだけど、何か私、良いこと言っただろうか?

 極々普通な意見だと思うけど?


 「いやいや、人によっては超人的な力を身に付けたなら、それで金儲けしようとか、大勢の人を従えようとか、気に入らないヤツをやっつけてやろうとか、そんな風に考える者も少なからずいると思うよ。その逆にさ、正義のスーパーヒーローを目指す者がいたりするかもしれないね。」


 それは確かにあるかも。


 でも、私は大勢の人の上に立つなんて面倒臭そうだと思っちゃう人間だし、そんなに正義感が強いわけじゃないし、面倒臭がりだからスーパーヒーローみたいにプライベートを犠牲にしてまで人助けに精を出すのも無理だと思う。

 もちろん、お金はあるに越したことないけど、大富豪みたいになったらしがらみが多そうだから、そういうのはパス。

 地位なんて高校生にゃピンとこないから社会人になってから考えるとして、今のところ名声なんて学校なんかで褒められる程度で十分。

 つまり私の理想は、“お金は生活に困らなくて、一般庶民レベルで、偶に多少の贅沢ができるぐらい” の平凡にちょこっとプラスアルファ的な生活ってこと。

 超能力を駆使して、世のため、人のため、自分のために、“何か凄いことやったろう! ” とか“有名になっちゃるぞ! ”とかは、これっぽっちも思わない。

 もちろん、その逆、“世界征服するぞ~! ” なんてのも絶対にあり得ない。


 そんな風に意思表示したら、


 「なるほど、流石マカミさまだね。けっこう人を見る目があって良かったよ。」


 と、汐見さんがウンウンと頷きながら笑顔で言った。


 「それって、どういうことです? 私、そんなに大した人間じゃないですよ。」


 身に覚えのない褒め言葉や買い被りは背中がムズムズして気持ちが悪い。

 そもそも、能力を授かったのなんてホントに偶然なんだし、


 「こういう凄い力はですねぇ、私よりも真面目で立派な考え方を持っていて、世のため人のために生かせるような人が持つべきだと思いますよ? 」


 この意見に汐見さんは、ゆっくりと首を左右に振って、


 「一人の人間が超人的な力で以って世の中を変えようとする行為なんて、それはエゴなんだよ。絶対にあっちゃいけない考え方だとオレは思うんだ。」


 そんなことを言った。


 うん、こりゃあ、けっこう重たい話になって来たなぁ。

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