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どゆこと? 私ってワンコの子分なの?

 テーブルの上には追加注文した肉のお皿とカクテキにサンチュ、私の前には中ライスとユッケジャンスープが並び、汐見さんとの焼肉夕食会は漸く中盤に差し掛かったところといった感じ。


 「こんだけ食っても太らないってのは、他の女子高生には羨ましがられそうだな。ウチの娘なんか、腹減ってるの我慢して年中小食ダイエットしてるぞ。」


 「まあ、私もアレが無きゃ小食ですよ。」


 汐見さんは、私が動画に映っていた内容について、一切否定をしたり言い訳をしたりしないのが意外そうな様子だったが、刑事として職務の遂行に躊躇いはしなかった。

 どうせ、本職の刑事の事情聴取テクニックに抗うなんて素人には無理!

 どんなに頑張ってウソにウソを重ねても、最後にはドツボにはまって無様をさらしてしまうだろう。

 だから、無駄な足掻きはやめにして開き直ることにした。

 たぶん、その方が私の心象は良くできんじゃないかな?


 「紗耶香ちゃんが誘拐犯を撃退したって話を聞いた時は、まあそういう娘もいるんだろうと大して気にしてなかったけどな、流石にこの動画を観たらビックリしたよ。そのことも含めて、詳しく話してくれるかい。」


 私はタレにたっぷりと浸した上ロースと上カルビをご飯の上に乗せ、ついでにカクテキをトッピングした焼き肉丼を作りながら、


 「良いですよ。」


 と私が答えたら、それでは早速と汐見さんがタブレットを手元に持っていきボイスレコーダーアプリを開いたが、そこでちょっと待ったを掛けた。


 「その前に、私からも一つ聞いて良いですか? 」


 「ん、なんだい? 」


 と、汐見さんが顔を上げた。


 「この動画と私の関係、他に誰が知ってるんですか? 」


 警察関係者の間で周知されているとしたら、かなり厄介なことになるなと思った。

 巨大イカの怪獣と戦える女子高生なんて、要注意人物どころの話ではない。

 猛獣扱いされて、鎖につながれ、麻酔を嗅がされて、檻に入れられるかもしれない。

 人権を剝奪されて、研究機関に渡されて、生体実験をされるかもしれない。

 そんなんなったら、たぶんシデンに力づくで助けてもらうことになると思うが、


 (そしたら、お尋ね者になっちゃうでしょ。)


 平穏無事で当り前な日常生活を送ることができなくなってしまう。

 今のところ野放しにされているので、近々檻に入れられるような心配はしなくても良さそうだが、現状を知っておくことは大切である。


 「警察関係者で知ってるのは、一連の事件に関わってる中の極一部だな。他には国家公安委員会の役人とか、自衛隊関係者とか、そういう感じだ。」


 警察関係者なら全員に知れ渡っているとか、そういうわけでは無いらしいが、なんか話が大きくなりそうな予感のする単語が混じっていた。


 (怪獣案件だから自衛隊とか? ってゆーか、国家公安委員会って何するところだったっけ? )


 焼き肉丼を突く手を止めて首を傾げた。


 「あの、一連の事件ってなんですか? 」


 私に絡んだ話なら、空き巣と学校荒らしと誘拐未遂と今回の事件だが、それらを関連付けてるのは汐見さん個人の見解だと思っていたが、


 「他にもあるんだよ。日本中、いや世界中でな。」


 「へ? 」


 いきなりのスケールアップで目が点になった。


 「オレは詳しく話せない立場なんだが、もしかしたら紗耶香ちゃんの方が誰よりも詳しく知っていそうなんでな、キーワードだけ言っとくわ。」


 ノンポリな一般女子高生に、そんなことを言われても困るのだが。


 「何の話ですか? そんな大っきなことは何も知らないですよ? 」


 汐見さんは、まあ聞けと言って、けっこう驚きのセリフを口にした。


 「国際的にはG案件。GはGateの頭文字G。ピンとくるものあっただろ? 」


 あった! 私の知ってる世界的な事件。

 シデンが言っていた “異世界の門(Gate)が開いて、異世界からの侵略が始まる” とかいうヤツだ。

 Gateと聞いて、私がピンとくる話なんて他には無い。

 その話はシデンと私しか知らない話だと思っていたのに、所轄の刑事さんから聞かされるとかビックリなんですけど・・・


 「思い切りピンときましたけど、あの、もう一つ聞いて良いですか? 」


 「良いよ。」


 「汐見さんって、何者ですか? 」


 もしかしたら、この人は江戸川西署の刑事さんなんかじゃないのかもしれない。

 以前、空き巣事件の際に名刺をもらっているが、そんなのはいくらでも偽造できるし、会うのはいつも外、江戸川西署内で会ったことは一度も無い。

 だから、そんな気がした。


 「はははっ! 紗耶香ちゃん鋭いな。実はね、オレは警視庁の公安部の人間だよ。」


 「ええっ! 」


 コーアン? こーあん? KO-AN? 公安? ジャパニーズFBI?


 「正確には、警視庁公安部外事四課。」


 これは重い!

 かなり重いカミングアウトである。

 警視庁公安部って、私がアルバイト先のお弁当屋さん“あじさい”の一人息子 “仁太君” に感化されて時々見る古い日本の戦争映画なんかに出てくる戦前の “特高警察” の現代版って感じですよね~

 んで、外事第四課って、スマホでちゃちゃって調べたら、国際テロとかスパイなんかを捜査対象とする部署じゃないですか。

 つまり、私のステレオタイプで貧弱な知識で考えたら、汐見さんはボンドとかハントとかソロとかバウアーと一緒、その筋のホンモノってことでしょ。


 (異世界からの侵略ってテロなの? 確かに小鬼たちの暗躍はスパイとかテロ活動っぽいけど? )


 これは流石の私でも話を聞く前にインターバルが必要である。


 「すみませんが、続きはご飯食べてからにして良いですか? 」


 話を聞いてからだと箸が進まなくなるかもしれない。

 そんな私のお願いに、汐見さんは笑って良いよと言ってくれた。



 ◇



 焼き肉丼完食、ユッケジャンスープも飲み干して、今はデザートのシャーベットをいただいている。


 「焼き肉なんて、久しぶりだったんで調子に乗っちゃいました。すみません、遠慮無くって。でも、すごく美味しかったです。」


 こういう食事が経費で落とせるのか、汐見さんの自腹なのか分からないが、自腹だとしたら、たいへん申し訳ないくらい食べてしまった。


 「ああ、大丈夫。大人なんだから、こんなの痛くも痒くもないから。」


 ということは、どうやら自腹らしい。

 痛くはなくても、痒いくらいはありそうかなと思った。

 一飯の義理を果たす必要が発生してしまったようだ。


 「未だ、汐見さんからの質問聞いてないですよね。それでは遠慮なくどうぞ。」


 公安相手に素人が太刀打ちできるわけがないので、覚悟を決めて大人しく質問を受けることにした。

 

 「それじゃ、まずは最初に、キミの知り合いの “オオクチノマカミ” について教えてもらおうかな。」


 それが、汐見さんの第1問目だったが、


 「へ? 誰ですかそれ? 」


 そんな人知らないんですけど。


 「オオクチノマカミ、又はマカミとかマカミさまとか呼んでるかもしれない。」


 全然知らない。


 「本気で知らないんですけど。」


 そう答えたら、汐見さんが困っていた。


 「うーむ、最近、マカミさまが女の子を眷属にしたって情報が入った時に、真っ先に思い浮かんだのが紗耶香ちゃんだったんだけど。こりゃ、当てが外れたかなぁ。」


 眷属って何? 情報って何処からの?

 焼肉のお礼に、汐見さんが望む答えを返してあげたいのだが、知らないものはどうしようもない。


 「それじゃ、紗耶香ちゃんの能力について教えてくれるか? どんな能力なのか? いつから備わったのか? 今まで何回使ったか? まずは、この辺を詳しく教えてくれよ。」


 まあ、それなら答えるのは簡単。


 「能力は、一言で言えば “身体能力強化” って感じですね。普段でも普通の人の何倍も力持ちですし。」


 「それって、どのくらい? 」


 ここから先の話は、あまり大きな声で言わせるべきではないと判断した汐見さんが、タブレットのマイクを私に近付けながら、自分は身を乗り出してきた。


 「えっと、全力疾走で50メートル 3秒以内で走れました。握力はリンゴ握りつぶせるくらい。垂直飛びはアパートの2階の窓に手が届くくらい。あとは、思考速度が通常の3倍以上って感じです。」


 これらは一応、退院後の夜間、人目を避けつつ密かに試してみた結果である。

 50メートル走はスマホを持ってストップウォッチアプリで測ったので正確な数値は出せてないが、3秒以下なのは確実。

 ローファーを履いてアスファルトの上を走った数値なので、ランニングシューズを履いてグラウンドを走ったら、もっと早いかもしれない。


 「なかなか凄いな。でも、それが普段ってことは、そうじゃない時ってのもあるのか? 」


 「戦闘モード的な感じになると、もっと凄いことになります。リミッターが解除されるみたいなもんですね。動画のイカ怪獣と戦ってる時のがそれです。体感ですけど、たぶん50メートルは1秒台で走れそうですよ。着地で怪我しそうですけど垂直飛びなら学校の4階の窓に手が届くんじゃないかなぁ。あと、このテーブルくらいならパンチで穴開けられると思います。もちろん手も無事じゃ済まないと思いますけど。」


 「そりゃ強烈だな。」


 汐見さんが呆れたような顔で私を見ている。


 「見掛けは華奢で可愛らしいお嬢さんだってのに、中身はウルトラガールだったな。」


 “可愛らしい” に照れつつも、ウルトラガールは無いだろうと思った。


 「なんか、その呼び名、昭和っぽいですね~ 」


 現在40代の汐見さんは。ギリ昭和生まれだったはず。

 

 「そう言えば、さっき燃費が悪いって言ってたじゃない。それはリミッターが解除された時の話? 」


 「そうなんですよ。リミッター解除したまま全力で戦い続けたら、たぶん10分もちませんね。」


 しかも、洲崎や巨大イカとやり合った後は、エネルギーを使い果たして病院で2日間も意識を失って寝込んでしまった。

 つまり、リミッター解除すれば最強戦闘モードに入れるが、グズグズしてたら10分後に私のウィークポイントがやってくるということである。

 なんというか、これこそ諸刃の剣というヤツだろう。

 先日は、汐見さんが持ってきてくれた高カロリーな差し入れのおかげで、なんとか回復できたわけだが、それが当てにできない状況にある時は、戦闘後に速やかにエネルギーを補充できる準備をしておかなければならない。


 「昔の3分しか戦えないヒーローみたいだな。」


 と、洲崎さんは又もや昭和ネタで感想を述べた。

 まあ、似たような感じなので分かりやすくはある。


 「さて、それじゃ次の質問、紗耶香ちゃんはいつから能力が身についたんだい? 」


 これについては話せば長くなるのだが、包み隠さず話しても信じてくれるモノだろうか?

 別にシデンに口止めされているわけでもないが、誰に話しても信じてもらえなさそうだし、何となく正気を疑われそうなので、これまで内緒にしていたのである。

 それでも、一応は言うだけ言ってみようと思った。


 「この能力はですね~、ウチで面倒見てるシデンという常識外れでモフモフなワンコから戴いたものでして・・・ 」


 10年前の武蔵御嶽山での話、夏休み中の児童公園での出会い、何者かと戦って怪我してウチのアパートに転がり込んできてから今までのことを全て話した。

 その流れの中で、魔力結石のこと、100日間餌を与え続けてたら能力が授かっちゃった話もした。


 (シデンに許可なく話しちゃったけど。まあ、事後報告でいっか。)


 後は、汐見さんが信じてくれるかどうかだが、


 (あれ? )


 汐見さんがコメカミを押さえながらヤレヤレと溜息を吐いている。


 「やっぱり、マカミさまの眷属って、紗耶香ちゃんだったのかぁ。」


 また、変な名前が出た。


 「知りませんよ、そんな人。だいたい、眷属って何です? RPGの召喚獣みたいじゃないですか? 」


 そう言って再度否定したら、汐見さんが手のひらを立ててストップの合図。


 「あのね、オオクチノマカミさまは、キミの言うシデンってワンコのこと。日本書紀に登場する狼の神さまで、日本武尊を助けたりしてるんだよ。知らない? 」


 ん? なんか、その話聞いたことがあるぞ。

 以前、シデンが偉そうに語っていなかったけっか?

 そんなん、ぶっちゃけどうでも良いんで、すっかり忘れちゃってたんですけど。


 でも眷属って何?

 私が眷属? ってことは私が下ですか?

 家来ってことですか?

 しもべ的なヤツですか?

 私って飼い主じゃないの?


 (ふざけんな! あの馬鹿ワンコ! 他所でそんなこと言ってまわってたのか! )

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