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えっ! 異世界からの侵略? 世界中にモンスター? 私の平凡な日常はどうなっちゃうの? そんなん もう戦うしかないじゃん! ~ 紗耶香とシデンのモンスター事件帳  作者: TA-MA41式
序章 ~ 詳しい事情は後々に語ることにしますが、とりあえず世界は今こんな感じになっちゃってます。
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装備OK! いよいよ出発だ!

 昨夜は、秋田名物のきりたんぽ鍋と能代名物のブタ軟骨焼きで、地酒の晩酌を嗜みながら、充実した夕食時間を過ごさせていただいた。

 でも、相棒ワンコのシデンは名物なんてそっちのけで、


 『オレは肉しか食わないからな! 』


 と言い張るので、ファミレスのステーキを5人前テイクアウトしてきたら、それで十分に満足してくれていた。


 (ワンコにゃ、旅行の醍醐味なんて分からんのよねぇ~ )


 そんな感じで、お腹一杯、ほろ酔い気分になって、おかげさまで昼間の不快な出来事はキレイサッパリ忘れ去ることができて、一晩寝て起きたら過去の不幸な出来事の一つとして遠い記憶になっていた。

 それでも、あんな馬鹿な連中と現場で鉢合わせしたくないという忌避意識だけはキッチリ残っていたので、今朝は早起きして7時には宿を出発した。

 ああいう知恵の足りない連中は、前日に飲んだくれて、朝寝して、ノンビリ昼頃に出発するに違いないと踏んでのことである。


 さて、本日の私のルートだが、能代市を出発し、途中のコンビニで朝ご飯と水と携帯食を買ってから、日本海側の国道を愛車で北上。

 県境を越え、青森県に入ってから直ぐにある旧観光名所 “十二湖” の入口から白神山地方向に右折。

 そして、モンスターが出没するようになってからのここ数年は全く整備が行われておらず、落石や倒木が放置され荒れ放題になった観光道路を最奥の登山道入り口まで進み、元バス停のあった広場に車を停め、そこから徒歩で登山道に入ることにした。


 「今日のターゲットはギガスが10匹だよね。」


 11段階 < 弱 0 ~10 強 > に分けられた “環境省規定の駆除の難易度レベル” では < 6 > に判定される魔人である。


 【レベル6:人口密集地域にて住民の生命に危険を及ぼす可能性があり駆除を優先すること】


 確か注意事項として “群れを作り組織的に行動するので単独で挑むのは危険” ともあったはず。


 「でも、ウチらには関係ないでしょ。」


 『だな。』


 話しのついでなので、環境省の規定にあるモンスターの識別について少し述べておく。

 まずは『魔人』だが、これはヒト型で2足歩行するモンスター全般の総称。

 現在、世界中で確認されている魔人の種類は11あり、日本ではギガスを含み5種類が確認されている。

 これに対し、四足歩行の獣型、飛行能力を有する鳥型、虫やエビやカニのような節足動物型、イカやタコみたいな軟体動物型などは、全部ひっくるめて『魔獣』と分類されている。

 よって、魔獣については種類数が膨大であり、日本国内だけで100種類以上の生息が確認されている。


 「ギガスは群れで襲ってくるから、装備は遠距離用と近接戦闘用の両方が必要だね。」


 『散開されたら面倒だし、初撃で半数は倒したいな。』


 「それは、シデンに任せるよ。」


 愛車のハッチバックを開け、装備を取り出すために防弾装甲付きトランクケースの鍵を開けた。

 駆除業務に携わる際、私たちに武装が許されているのは、登録証に記された地域の中だけである。

 今回の場合は、秋田県山本郡[三種町/八峰町]・青森県西津軽郡[深浦町/鰺ヶ沢町]の域内であり、それ以外での武装は許されていない。

 よって、駆除に必要な装備を身に付けるのは、いつも現場に着いてからの一仕事である。

 それまで武器の類いは、頑丈な鍵付きケースに入れて厳重保管管理しておかなければならない。

 剥き出しのままで屋外を持ち歩いたり、車に積んだままで放置するのは違法行為とされる。

 嵩張る装備が多いので、初めの頃は面倒に感じていたが、今は慣れっこになっていて、宿泊先での積み下ろしなんかも殆ど気にならなくなっていた。


 「近接戦用はマチェットとナイフ。遠距離用はやっぱボウガンしかないなぁ。」


 まずは腰に多機能な軍用ベルトを巻き、そこに長身のジャングル用マチェットと鋸刃付きシースナイフのホルダーをぶら下げる。

 ボウガンは、いつでも取り出せるようにバックパックにグリップを露出した状態で差し込んでおく。

 ちなみに、私の愛用のボウガンは弓無しの板バネタイプ。

 弓有りと違って横幅が小さくスリムで携帯に便利なとこが気に入っている。

 次に防具だが、暑いので重装備は止めにしてTシャツの上に防刃ベストを着るだけにしといた。

 一応、脚にはキックボクシングなんかで使う軽量なニーパットとレッグガード、腕にはエルボーガードとナックルガード付きのオープンフィンガーグローブを着けたので、要所はキチンと守れているから大丈夫。

 記録用の360度4Kビデオカメラはバックパックから外して、ベストの肩に取り付けた自作の留め具に移し替えて固定。

 戦闘時にはバックパックを下ろすことが多いので、これは忘れちゃいけない。


 「んで、靴も履き替えてっと。」


 この仕事をするようになってから、靴はホントに消耗品になった。

 できるだけ伸縮性が高くて、底の頑丈なトレッキングブーツを履くようにしているのだが、だいたい一度の使用で廃棄処分になる。


 『近接戦用なら、ショットガンもあったほうが良いだろ。』


 「そうだねぇ。今回は山の中だし、持ってくかな。」


 第一種銃猟免許を取得したのも、銃を購入したのも最近だし、銃器類はあまり得意でないので周りに人や人工物のある場所では使わないようにしている。

 まあ、今回は山の中で誤射の心配も無いから練習を兼ねて持っていくことにしよう。

 で、取り出したのは銃身と銃床をソードオフした自動散弾銃。

 これに、鹿撃ち用のバックショットシェルを装弾する。

 大きな声じゃ言えないが、内部弾倉の詰め物は取り払っているので8発も装填できる。

 もちろん、ソードオフも弾倉の拡張も違法改造なので本来ならアウトなのだが、最近はモンスター駆除や自衛対策のため一般の農家などでは銃の改造を行う者が増えており、殆ど取り締まられていない。


 「さあ、これで良しっと。」


 フルに装弾して、セーフティを確認した後、散弾銃は太腿に巻いたレッグホルスターに差し込んだ。


 『準備完了か? 』


 ボウガンのボルト( 矢 )、予備のショットシェル10発入り2箱、救急用品、タオルとティッシュと水筒と携帯食、これらも全部バックパックに放り込んだ。

 以上にて、


 「完了かな。」


 『んじゃ、行きますか。』


 「あ! ちょっと待って! 車隠さなきゃ! 」


 このご時世、放置車を狙った泥棒は少なくない。

 特にここは警察の目が届かない山の中なので、昨日の連中のような素行と手癖の悪い同業者たちに見つかったらひとたまりも無い。

 私の愛車は連中に知られているので、見つかったら絶対に昨日の報復攻撃をされてしまう。

 そこで、私はバス停広場の周辺で人目に触れ難そうな場所を探し、車を林の奥にまで乗り入れて、カムフラージュネットで車体全体を覆い、さらにはそこら辺に生えている雑木を集めて周りに置いた。


 「これなら、分かんないね。」


 少し離れてみたら、木々の密集した藪にしか見えない。

 けっこう手間だったが、これで今度こそ準備完了である。

 ということで、


 「エンゲージ! 」


 抱える荷物はけっこうな重さになったが、私の女性(人間)離れした力なら全然平気。

 バックパックの強度さえ問題無ければ大丈夫なのである。

 だから、シデンも手伝う気はサラサラ無さそう。

 かつて、女子高生だった頃は非力な乙女だったはずのに、“諸事情” によりこんなになってしまったのは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか?

 どんな難所でも足取り軽く行けるので助かってはいるが・・・



 ~ ということで、お話は物語の冒頭、一番最初に戻って繋がるのでよろしく。



 只今の時刻は11時。


 歩き始めてから2時間ほど経っていた。

 スマホで確認したら現在地の標高は636メートル。

 1時間ほど前までは、荒れ放題でも辛うじて山道と言えそうな道を歩いていたが、今はけもの道みたいな所を歩いている。

 倒木を乗り越え、地崩れでできたような割れ目を飛び越えながら、一応は登山道なんじゃないかと思われるルートを、ここまで進んできた。


 『一体どこまでいけば良いんだよ! これじゃ、単なる山登りじゃないか? 』


 流石にシデンはワンコだけあって、どんなに悪い足場でも平気でスイスイ歩いているし、疲れも知らないようで、全くペースを変えていない。

 但し、長い時間歩いていると飽きてしまうようで、だんだん文句が多くなってきた。


 『まさか、このまま歩き通しで空振りなんてことにならないだろうな! 』


 「あんた、神さまだってんなら、便利な魔法とか無いの? 全方位レーダーで敵を見付けるとか、そういう機能は無いの? 」


 『イージス艦じゃあるまいし、神さまを便利な機械と一緒にすな! 』


 私も、人のことは言えない。

 見どころも何もない山の中を歩いていても、ちっとも面白くないからイライラしてきた。


 『ギガスのコロニーってのは、まだまだ先なのか? 』


 「この先にある大崩ってとこを越えた先にあるらしいよ。」


 『らしいって、衛星とかで見付けてんじゃないのか? 』


 「これだけ木が茂ってちゃ、上空からなら大まかな位置しか掴めないんじゃない。」


 『ちっ! 人工衛星、使えねーな。』


 「しょーがないじゃん! 進むしかないんだから! 文句言うな! 」


 『へぇ~い。』


 面倒臭そうな返事。

 こういうとこが、ぜんぜん神さまっぽくないからワンコだって言ってる。

 神さまだってんなら、けっこうお供え(肉ばっかだけど)してるんだから、もっと役に立ってみろと言いたい。


 『およ? 』


 シデンが急に立ち止まって、鼻をヒクヒクさせ始めた。

 そして、


 『ギガスの臭いだな。人の臭いもするぞ。』


 流石ウルトラワンコ!

 遂に目標発見か?


 『ちょっと遠いけど、別な道を通って登ってきてる人間がいるっぽいぞ。ウチらよりかなり先行してるが、ギガスの臭いも同じ方向から匂ってくる。こりゃ、間もなく鉢合わせするな。』


 別ルートから登ってきている人間?

 それは、おそらく同業者だろう。

 そうじゃなきゃ、モンスターが出没して危険だなんて言われてるような山に登るわけがない。


 「別ルートねぇ? そんなのあるんだ。」


 どうやら、山道なら他にも幾つかあるらしい。

 っていうか、今歩いてるとこが正しい登山ルートかと聞かれたら自信がない。

 途中から道らしいところを全然歩いていないので、正規のルートから外れてスマホのGPSで方向だけ確認しながらオリジナルコースを歩いているような気もしている。


 「でさ、人間って、もしかして昨日のあいつら? 」


 『そうかもな。憶えのある臭いだし、たぶん、人数は10人以上。』


 「うえっ! 最悪! 」


 『どうする? 』


 「うーん。」


 昨日の連中とギガスが間もなく遭遇するというのなら、こちらが今から出向いても既に駆除は終わってしまっているかもしれない。


 『それは無いだろ。』


 「どして? 」


 『ノロノロ進む人間に、その倍以上の速さでギガスが近付いてるからな。』


 「へぇ~ 臭いだけで、そんなことまで分かるんだ。」


 まあ、こういう特殊な能力を発揮されると、流石ウルトラワンコと言わざるを得ない。


 「んじゃ、ギガスの狩りってこと? 」


 『だな。ヤツらのフォーメーションまでは分からんが、獲物を急襲するつもりいるのは間違いない。で、それに人間たちが気付いているのかどうかは分からない。』


 たぶん、気付いてないだろう。

 ギガスは、巨体の割に敏捷な魔人で、森や林の中を音もなく素早く移動することに長けている。

 体色が緑なので、それが保護色の役目を果たし、ある程度の距離まで接近しないと視認が難しかったりもする。

 私は昨年、伊豆の修善寺で関わった駆除案件で初めてギガスの群れと戦ったが、市街地に下りて来てる時には大した相手じゃなかったが、一旦山に入ると発見が難しく駆除に手古摺った記憶がある。


 「あの連中、見掛けはゴツイけど経験は浅そうだし、ギガスより馬鹿そうだから、やられちゃうかも。」


 『助けにいくか? 』


 あまり、気は進まないが、人が殺されようとしてるのを放置したら寝覚めが悪そう。


 「今から行って間に合う? 」


 『そりゃ、間に合わないだろう。もう、2、3分もすればバッタリだぜ。いっそ、ここからオレが熱線の遠距離攻撃で・・・ 』


 「へ? 何言ってんの? やめてよっ! 」


 シデンの熱線攻撃なんて洒落にならない。

 何千度だか何万度だか知らないけど、とんでもない超高温で、一瞬のうちに街一つ焼け野原にしてしまえるほどの威力がある。

 個々のモンスター退治に使うような攻撃手段ではない。

 軍隊とか大勢を相手にする時にしか使えない。


 「世界自然遺産が消滅しちゃうでしょ! 」


 『そりゃま、そうなんだが。』


 なんか、残念そうにしてる。

 熱線攻撃したかったんだろうか?

 危ないワンコである。


 『あ、雷撃ならピンポイントで狙えるぞ。』


 「あんたの雷撃って、ホンの数キロ離れただけで平均誤差半径が50メートル超えてんでしょ。そんなピンポイントあってたまるか! もっと近づかなきゃ使っちゃダメ! 」


 そんなんじゃ、ギガスだけじゃなく助けるべき相手も纏めて殺ってしまいそう


 『ちっ! 』


 このワンコ、今、舌打ちした?

 何考えてんだろう、この歩く大量破壊兵器は・・・


 「現場まで全力で走ったら何分くらい? 」


 『直線距離取れないのが辛いけど、お前の足なら7、8分ってとこかな。』


 ウルトラワンコのシデンほどではないが、私だって常人じゃない。

 こんな足場の悪い山の中でも本気出せば、熊と駆けっこして良い勝負ができるかもしれない。

 まずは、走るには邪魔なミリタリーコートを脱いでバックパックに戻し、トレッキングブーツの紐を確認。


 「よしっ! 走ろう! シデン先導して! 」


 『へいへい。』


 あまり乗り気じゃなさそうな返事をしながらも直ぐに駆け出したシデンの後を追って、私も駆け出した。

明日からは、夕方の時間帯で投稿します。


よろしければ、ブックマーク、評価などもいただけたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い意味でなろうらしくない作品ですね。 古典的なラノベというか、硬派というか……。 けど、そういうの嫌いじゃないですよ! [気になる点] まだまだ入口いった所ですね。 この先、どこに向かう…
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