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名探偵 エリザ −助手が優秀すぎて困るのよっ!?− 前編




(俺が、枢機卿とやらを殺すことは可能だろうし、容易いだろうが……)


 ステータスユニットとスキルボードを接続した、今の本多宗茂の本気を止められる存在は、ユグドレアには片手で数えるほどしか存在しない。


 例えばそれは――ベルナス神山の主。


 つまり、今、この瞬間に、宗茂が王都のネフル天聖教会ナヴァル王国本部に向かい、王都に駐在している3万の騎士や魔法師を打ち払い、枢機卿を殺害するのは容易だということ。


(いや、明らかに下策だな)


 だが、その行動は短慮でしかない。

 宗茂には確信していることがあり、それ故にその手段を今は使えない。


(まず間違いなく、裏から手を回している黒幕がいる)


 現枢機卿であるバルグ=オルクメリアを、今この時点で殺したとしても、トカゲの尻尾切りにしかならない。

 宗茂は、枢機卿の裏に隠れて、姑息な策を巡らしている存在がいると、例の先代枢機卿殺害事件の現場の不可解さから感じていた。


 忘れてはならないが、エリザは特等級鑑定師であり、その手の情報は簡単に取得可能てある。


 事件資料は、日本人ならばどんな効果なのかが一目でわかる、『撮影』という名のスキルで作られている。

 透隕鉄(アーティ)という透明な金属に記録保存され、アダマンタイトコーティングという、アダマンタイト粉末を用いた技術で保護されている上、特等級魔法師数名により張られた、魔力と魔素で形成された壁――結界により管理されている。


 事実上、資料のねつ造や偽造は不可能である。


 つまり、宗茂が閲覧した資料は、限りなく真実であるということ。だからこそ、宗茂の感じた違和感は真実味を帯び、黒幕の存在を感じ取ったのだ。


(まずは、先代枢機卿――)


 この事件は5年前、王都にあるネフル天聖教会本部4階にある、枢機卿の私室で、遺体が見つかったことが発端である、と、検証や推測を始めてもいいが、まずはナヴァル王国による、殺人現場の事件検証の方法を知るべきである。


 その方法とは――『鑑定』。

 ユグドレアにおいて、こと殺人事件の際における主役は鑑定師であり、その中でも最大の権限を有するのは()()()()()()

 5年前、この事件を担当したのは、当時12歳の最年少特等級鑑定師にして、()()()と庶民に尊敬されている、(あで)やかな金髪が(つや)めく超絶(自称)美少女。


 エリザベート=B=ウィロウ、その人である。


 ユグドレアにおける『鑑定』は、宗茂の出身国である日本の創作物で扱われているような、中途半端で生ぬるい低レベルな使われ方はしていない。


 ユグドレアの『鑑定』は、対象をまさに丸裸にする。


 数値化、表記化できるもの、その全てが対象である。

 身長、体重、体脂肪率、骨密度、現在の体温や平均体温などのフィジカルな個人情報。外的、内的ストレスの原因の特定や、恋愛対象の好感度や相手の特定、進捗度などといった、メンタルな個人情報も読み取る。

 当然、対象は無機物にも可能だ。

 例えば、ある武器屋に飾ってある最高級アダマンタイト製のロングソードが、実は外側にだけアダマンタイトコーティングされていた、全くのニセモノ。たまたま、傭兵の友人と一緒に、店に訪れていた鑑定師が発見、悪質営業を行なっていた武器屋を摘発、褒賞を与えられたこともあった。


 日本であれば、プライバシーの侵害と訴えられるかもしれないが、ユグドレアでは違う。


『鑑定』スキルの存在が、殺人事件の犯人を追い詰め、犯罪を防ぎ、不正を暴き、誰かの恋を成就させ、肉体改造のアドバイスで兵士は強くなり、家庭の不和を無くし、失せ物をみつけたことで大切な思い出を守り――権威の裏に隠れた邪悪を暴く一助になる。


 ユグドレアの人々にとって『鑑定』スキルとは、大切な恩恵そのものなのである。


 ちなみに、『鑑定』だけでなく、スキルは明確にランク分けされている。

 下から順に、下級、中級、上級、最上級、超級、そして最高ランクである――極。

 現在、エリザだけがまともに扱える『鑑定 極』は、極の字にふさわしい、極まった性能を有する。


『鑑定 極』は――()()()()()が可能である。


『鑑定 極』を生やした者が、()()()()()()()()のは、この性能の存在が大きい。

 なぜなら、死体への工作や加工作業などの隠蔽作業が無意味なものにされるからだ。


 そして、先代枢機卿殺人事件の遺体には、何者かにより、手が加えられていた。




 現場の不可解さと、当時のエリザが()()()公表しなかった事実が、その裏付けとなり、この事件の闇の深さを物語っていた。








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