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クリスマスのお届けもの

作者: 玉庭ひとり

 こぐまのぬいぐるみのアンは、4 歳の女の子、チヒロちゃんのぬいぐるみです。

 アンは今日、チヒロちゃんと一緒に公園で遊びました。


 夜になってチヒロちゃんが眠ると、アンはチヒロちゃんのベッドから起きました。

 そして、「あ、チヒロちゃんにつけてもらったリボンがない」と気が付きました。


 チヒロちゃんに右耳につけてもらっていた赤いリボンが、いつの間にかなくなっていたのです。

「きっと公園で落としたんだ。」

 アンはそう考えて、公園に探しに行くことにしました。


 夜の道はとても暗くて、アンは不安な気持ちになります。

 けれど、クリスマスのために飾られているツリーはどれもピカピカと光っていて、ツリーを見つけるたびにアンは楽しい気持ちになりました。


「あら、ぬいぐるみさん、どこに行くの?」

 途中、アンは誰かに声をかけられました。

 声のした方をよく見ると、真っ暗な中に黄色の目が二つ、キラッと光っています。

「公園に、探し物に行くんだよ。君は誰?」


 二つの黄色い目が段々近づいてくると、アンはそれが夜のように黒い色の猫だとわかりました。

「私はノエル。お散歩をしていたの。あなたの名前は?」

「私はアン。チヒロちゃんにつけてもらった名前よ」

 ノエルはアンの探し物が気になったので、アンと一緒に公園に行くと言いました。


 寒空の下公園にたどり着くと、公園は昼間と違って、誰もいませんし、とても寂しいところのようにアンは思いました。

「全然見えないや。」

 それにアンはこぐまのぬいぐるみなので、ビーズの両目では暗いところはよく見えません。

「じゃあ、私も一緒に探してあげる。私は夜でも、よく見えるのよ。」

「ありがとう。赤いリボンを探しているの。」


 二人は一緒にリボンを探しました。

 けれど、ブランコにも、滑り台にも、砂場にも、それから鉄棒にもリボンはありません。

「どうしよう、リボンがないとチヒロちゃんが泣いちゃうかもしれない。」

 アンはリボンが見つからないので悲しい気持ちになりましたが、どこでリボンを落としたのか、思い当たるところがありません。


 どれだけ探してもリボンが見つからないので、仕方なくアンは公園を出て家に帰ることにしました。

「ノエル、一緒にリボンを探してくれてありがとう。」

「見つからなくて、残念だったわね。でも今日はクリスマスだから、きっと良いこともあるわ。」

 そう言うと、ノエルはどこかへ行ってしまいました。


 ピカピカと光る幾つものツリーを見ながら、アンは家に帰りました。

 そして、気持ちよさそうに眠っているチヒロちゃんが、リボンのついていない自分を見て悲しみませんようにとお祈りをしてから、チヒロちゃんの隣で眠りました。


 次の日の朝、アンは目が覚めると、右耳にリボンがついていることに気が付きました。

「おはよう、アン。新しいリボンのプレゼントだよ!」

 チヒロちゃんはそう言ってアンを撫でました。

 ピンクのリボンをつけてもらって、アンは幸せな気持ちで一杯です。

 そしてアンは、新しいリボンをつけてくれるために、チヒロちゃんが前のリボンを外したんだと思いました。


 それからチヒロちゃんは、

「新しいお友達もいるの」

 と言って、アンと同じくらいの大きさのぬいぐるみをアンに紹介しました。

 それは夜、公園で一緒にリボンを探してくれた猫にそっくりのぬいぐるみでした。

「黒猫のノエルっていうの。仲良くしてあげてね!」


「あら、また会ったわね」

 ノエルがアンに言いました。

「リボンが良く似合っているわ」

「ありがとう。君がリボンを届けてくれたんだね」

 ノエルはキラッと光る黄色の目で、にっこりと微笑みました。


 お昼になると、アンとノエルはチヒロちゃんに連れられて、公園に遊びに行きました。

 おひさまの照らす公園はとても気持ちのいい場所だなと、アンは思いました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とてもかわいらしいお話で、楽しかったです
[一言] 新しいリボンおめでとうございます。 同時に新しいお友達もできて、新年も楽しい年になりそうですね。
[一言] なんとそういうことでしたか! 優しいラストに思わずにっこり。 お友達も増えましたし、これからますますみんなで遊ぶのが楽しくなりますね。
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