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アルトストーリア  作者: あきら ななせ
群青の創造主と静謐の聖騎士
1/64

プロローグ

  この世界が産まれるずっと前の話だ。

一つの、壊滅的な力を持つ魔道書があった。

その魔道書は、自らの力で四つの世界を創り出した。

一つは、魔物が跋扈する絶望の世界を。

一つは、人間同士で争う戦争の世界を。

一つは、天使が支配する正義の世界を。

一つは、何も存在しない無音の世界を。

 やがて時は違えど、その四つの世界は終わりを告げて、魔道書の元へ還ってゆく。 様々な終わりを吸収した魔道書は、そうして新たな世界を創り出した。

 全てを終えた魔道書は眠りにつく。 いつか来るべき時のために。 

創り出された世界の事を、その世界に産み落とされた人々はこう呼んだ。

『ヴァチカン』

 と。 いつしか原初に生まれた者達も命の灯火を消してしまい、この魔道書が一体なんなのか、という事を知る者も居なくなってしまった。

 だが、底知れぬ力を持つ魔道書は後にこう名付けられたのだ。

古き物語を識る魔道書「アルトストーリア」と。


───────────────────────


 薬品の匂いが漂う薄暗い実験室。  おびただしい数のフラスコが並ぶ異質な場所で、一人の男が大きな水槽を眺めていた。

 そこに漂うのは、目を閉じた白髪の少女。

「あぁ、完成だ、成功したんだ!!」

 赤髪の男は、興奮した様子で独り言を言う。  その言葉はどこか男離れしたような言葉だった。

 彼は何万もの失敗を重ね、やっとの思いで成功した目の前の「人ならざる者」を満足した表情で見つめる。

「永かった……、本当に永かったよ……。  でもこれでようやく私も体を持つことができる。  そう、生き返ることができる。

 まだ計画は始まったばかり、こいつをエスペランサの適格者に育て上げることで、私はまたこの世に生を成すことができる」

 男はひとり、くすくすと笑う。 しかし、男はまだ知らなかった。 自分の創り上げたこの少女が、自らを殺すことになることを。

そんなことも知らず、彼……いや、彼女は実験が成功した喜びに浸っていた。 

「あいつの言う通りだった! あの男の言う通りだった! これでようやく……!」

 興奮が冷めることない彼女の名はアナスタシア。 一度死んだ彼女は、自らの兄の身体を乗っ取り、非道な実験を繰り返し……、そうして創り上げた。 この目の前の白い少女を。

 少女の名を、エトワール。

のちに、稀代の魔法使いとなる少女である。

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