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どこかの場所にて 7

まだ(ひらめ)いた訳じゃないけど、何かのヒントになるかも知れない。

アイテム(プレゼント)は一旦保留にして、白い球体(先生)に向き直る。


「魔物の詳しい情報が欲しいんだけど、このカタログみたいなのはある?」


『…、…。』


若干の間を置いて、さっきと同じ様にニョッキと生えて滑り落ちる。

…やっぱりあるんだ。。。。


再び込み上げる苛立ちを、すぐに(かが)んで隠しつつ、足元に落ちたソレを拾い上げる。



───


魔物の図鑑とも呼ぶべきソレは、さっきのカタログと全く同じ装丁(そうてい)で、しかしかなり薄かった。

内容は思った通りの1ページ1種類の図鑑風だが、説明書きが無い分、イラスト集や写真集に感じが近いかも?

これもページに触れると、その魔物の情報が頭に入ってくる。



今閲覧しているのは、ファンタジーでのモンスターの定番"ゴブリン"だ。


図鑑には名前や特徴、生態や平均的な身体能力、好き嫌いなんて情報まで有る。さらに、身に付けている事が多いスキルやその大まかな戦闘パターンまであった。

描かれているゴブリンは小柄で緑色の肌、頭皮が残念な典型的キャラクターをしていた。


─ 一体どんな進化をすればこうなるのだろう?


緑色の猿でもいたのか?

突然変異か魔法のせいかは知らないが、なんでヒトや猿の特徴をこうも備えているのだろう?

人間から奇形が産まれて、そのまま繁殖でもしたのだろうか?

オークだのコボルトだのミノタウロスだのと、色々な動物とのミックスも居る様だが、あっちの人間達は節操が無いのだろうか。。。。

そうでなかったとしても、オレが知っている神話や伝承の生き物が多過ぎる。人が想像出来る限りの妄想を具現化したのが、それらのモンスター達の筈だ。

そのモンスターが普通に生活している"どこかの世界"とは、いったい何なのだろう?


……尽きない疑問に思考の海で溺れかけていると、やがて諦めの境地に達した。

どうせ白い球体(R2D2)に聞いた所で、真面(まとも)な答えが反ってくるとは思えない。信楽焼きのタヌキに聞く方が、よっぽど有意義だろう。


ちなみに平均的なゴブリンの総合能力と、今の自分とを比較すると…まぁ一対一なら大丈夫そう。何もスキルも持っていない、戦った経験がまったく無い素人でも勝てそうって思えるとは……さすがゴブリン。

でも現実には、単独行動はほぼしない群れで行動する魔物なので、このまま出逢うとコッチが餌になるんだよね。。。。


それに例外だって存在する。

多くの魔力を持つものを倒すなり食べるなりして吸収していくと、その種族とは別の独自の特徴が現れ始める。

そして新たなスキルを身に付けたり、その個体によっては、まったく別の魔物の様になってしまう。当然、能力や生態も変化してしまう訳で、そうした独自に変化した個体は総じて強力になり易い。

もう何でもありだな……。



例えばこのウサギだ。

名前はホーンラビット。ちっちゃい角の生えた可愛らしい見た目とその臆病な性格から、魔物と言うより愛玩動物だ。実際、人に慣れるみたいで飼えるらしい。

昔飼っていたペットを思い出す…。

だがこのウサギ、魔力を多く吸収するとだんだん角が伸びてきて狂暴になってくる。この図鑑では隣のページにその姿が掲載されていた。

かなり変化した場合の様だが、その面影はあまり留めていない。ウサギだろうと言う共通点があるだけだ。

草食だった筈の生態が、どの段階で肉食に変わったのか激しく疑問に思う。

齧歯類(げっしるい)特有の前歯が、明らかに牙に生え変っている。奥歯はいったいどうなっているのだろうか?

攻撃色なのか、矢鱈と派手なカラーリングに彩られたその体毛は、何故か痛々しい印象だ。

個体によって変化の度合いも違うらしいが、これは変わり過ぎだろう?

魔法が存在し、非常識がまかり通る"どこかの世界"では、弱肉強食の考え方もアクロバティックな方向に進んでいる様だ。


ペットを飼うにも、命懸けだな。まぁ魔物を選ばなければいいんだろうけど。



……。


ここ迄の所、だいたい種族を問わず弱い魔物は群れで、強さを持つ魔物は単独か少数でって言うのが多い傾向にあるみたいだ。


─この辺は常識的なんだな…。


この強い弱いは、具体的な数値が載ってる訳じゃ無いけど、それが持つ迫力と感覚とを、文字通り体感出来るのでとても貴重な情報源になる。

主な判断基準は、どれだけ多くの魔力とスキルを持っているかと、単純に大きさだ。

ただ商品カタログと違って、その種類は断然少ない。ファンタジーでは定番の"ドラゴン"がいない所を考えると、雑魚…と言うか一般的な魔物のみを載せてるんだろう。他にも有名なモンスターが魔物として存在する(はず)なのに、何処にも見当たらない事で、まず間違いないだろう。

その辺りの強力な魔物は、頭の中の(インストール)情報だけで予想していくしか無い様だ…。

あくまで予想であって、会いたいとは微塵も思わないけど。



「これ無理じゃね?」


図鑑を読み終えた印象は、一人の"普通"の人間では一対一で対処出来そうな魔物が、想像よりもかなり少ない…だ。


ますます戦闘系を目指す可能性は、無くなったな。特に矢面に立つ様なのは、絶対に無理だよ。

最低でも後方支援とか、技術・生産系だな。

って、現地の人達とやっていけるだろうか…やっていけないと、完全に詰んじゃうよなぁ。。。。

まぁそれはどこの世界でも一緒だと思うけど。




そうなると残るのは、やはり使役系かぁ。

強い魔物をいきなり従える事は出来ないんだったら、育ててみるしかなさそう。


従えるとして、自力で何とかなりそうな魔物は、虫とか小動物とかゴブリンくらいだし…。

スケルトンとかも、いけそう?いやいや…[術魔術]効かないじゃん。かといって[死霊術]なんか身に付けたりしたら、デメリット…と言うより、リスクがデカ過ぎるんだよなぁ。

でも人型で、ある程度器用さがあれば武器が使えて、少しは強くなるんじゃ?

少なくても、ゴブリンよりは色々出来そうだし、怪我とか関係無く戦ってくれそうだし。




「一応確認なんだけど…スキルの効果を、変えたりとか出来ないよね?」


『…?……。』


「いや、従魔術でアンデッドとかを従えたり出来たらいいなと思って」


『……。…、』


「出来るの?」










─ ホントに?

最初に却下した使役系に、一周回って戻ってきた主人公…

優柔不断なのか、慎重なのか…?

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