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どこかの樹海にて 16

そろそろ日も傾き始め、コロコロしている新人達の人と成り(?)が分かってきた頃… 虫拾いから1号達が戻って来た。


『カタッ!』


─ うんうん。そんな気持ち悪いのを篭いっぱいにして見せびらかさなくてよろしい。


『カタッ… カタッ!』

「えぇ~い! うっとおしい!」

『 …カタッ?』

小学生の行動を見せる1号をよそに、完全無視の4号はさっさと行ってしまった。 頼むから、コイツ(1号)を引き取ってくれよ。。。

篭から(こぼ)れた気持ち悪い虫を見て、足元をコロコロ転がる新人達がキャーキャー(?)言っては逃げ惑い、それを拾う側からまた溢す1号の頭を叩き、いつの間に戻っていたのか2号が鉈でプチプチ刺して遊んでいる。。。





───────

そうやって騒いでいる合間も、時は進み日も暮れる。

まだ不機嫌アピールをしているタゴサクに貰ったスープをすすりながらオレは今、3号とヨサクの作業風景を眺めていた。


作業… と云っても、ただ箱を開けようと四苦八苦している様子が繰り広げられているだけなんだが。


『……!』

『カタッカタッ!』

『……ッ!』

『カタタッ!』

『…! ……!!』


四隅を鉄か何かで補強された頑丈そうな箱。 その上にご丁寧にも立派な鎖が何周にも巻かれていて、絶対に開けさせないぞっ!と云う意気込みを犇々(ヒシヒシ)と感じさせている、そんな逸品。


『……! ……!』

『カタッカタッ!』


我が従魔達の注目を独り占めするコレ(謎の箱)は、3号達が怪しい館の地下で見つけた物だ。

2号の話によると、地下は食糧庫だった様で殆ど塵となった"何か"があるだけだったそうだ。 …ただ、地下室と云う事で隠し部屋の類いが有るかも?と捜索すれば、お約束の様に塞がれた横穴があり、その中に半ば埋もれる様にコレがあったそうだ。

小さな棺くらいの大きさで重量もかなり有り、まず一階に持ち上げるだけでも相当の苦労だったと一緒に連れていかれた新人から愚痴を溢された。


─ 延々と水汲みさせられた後に、コレを地下から引っ張り上げされられたのかぁ。。。


彼の不幸話は置いといて、問題はこの箱だ。

錆びが浮いてはいるものの、素材が何らかの処理を施されたものなのかはさっぱりだが、箱も鎖も大した劣化もせず今も頑として開封作業を阻み続けている。

不思議なのは鎖の端っこの部分が見当たらず、どうやって縛り留めているのか全く分からない事だ。 ずらしてみようにも弛みが無いので、鎖を外す作業すら難航している。


『……!』

『カタタッ!』


ちなみにヨサクがカタカタ言ってないのは、手持ちの道具ではダメだったのでヤケを起こして噛みついてしまい、顎を負傷してしまったからだ。 なんとも気が短い。

3号が使っている"獄卒の鉈"も、丈夫さがウリなだけで余り役に立ってはいない。 傷を付けるのが精々だった。

それでも箱と鎖の間に差し込み、何とかしようと今もグリグリしている。

単純に力が足りない… とは、4号の解説だ。


流石にココまで頑丈かつ厳重に開けられない様にされていると、気にならない訳が無いので、夕飯のスープのお代わりを手にずっと見守っていたのだが……


「もういっそ、焼くなり壊すなりしてみたら?」

『カタッ! カタカタカタッ!』


金属で補強されているとは云え木製の箱なのだから、炭になればそこから中身を出せるだろう。

……中身が燃えなければの話だが。


『『 ……。』カタッ』

ヨサクと3号は互いに視線を交わすと、まだ諦めぬとばかりにガチャガチャやり始めた。




─────

因みに今回の調査では、館内部の目ぼしい物は根こそぎ持ち出していて、夥しい数のゴミが館裏の広場に散乱している状態になっている。 箱の中身も気にはなるが、これらの片付けもして欲しい。

一人黙々と分別をしている新人が、余りにも可哀想だ。


3号達は否定しているが、ぱっと見、ほぼほぼゴミだ。

足が半分取れたテーブルの天板は、まだ何かに使えるだろう。 だが、砕けたお皿やカップ類は完全なる不燃ゴミにしかならない。 さらに、何かの取っ手部分やスカスカな(ほうき)だった物、割れたレンガやでっかい貝の置物なんかは、どうするつもりなのか理解に苦しむ。


まぁ、錆びたり欠けた包丁やらナイフやら、銀製のお盆なんかの使えそうな物もけっこう有るので、全てがゴミでは無い事が救いだが。。。

特に、残った衣類の中に比較的まだ使えそうな物があったのが嬉しい。



「う~ん…… 大体の服はこんなに傷んでいるのに、なんでコレとかは、こんなに丈夫なままなんだろう?」


1号が物色している衣装ケースか何か分からないが引き出しごと持ち出され、中身の衣服は見た目は綺麗なままではあるが、ちょっと引っ張っただけで破れてしまう物が多かった。 何十年かそれよりもっとか、兎に角、長い長い年月のせいで素材が傷んでしまったのだろう。

しかし中には、作られた当時のままの強度というか… 劣化が進んでいない服等が幾つか有る。 生地自体はしっかりしてても、縫い糸が千切れてしまったりボタンが取れてしまったりと、素材の違いによるものか、微妙な服もあったが……


「おっ。 コレなんか着れそうだな」


外套と呼ぶべきかコートと云うかべきか? おんなじ意味だっけ?

兎に角、何かの皮を使った服だ。

裏地の布も傷んでいないし、縫製もしっかりとしたものだな。 ポケットも何も無いとてもとてもシンプルな作りで、ベルトを通す枠も穴も無いんだが… 腰に当たる部分に跡が残っているのを見るに、着た上で適当に巻いていた様だ。

丈の長さは膝上くらいで、ハーフコートって言うんだっけ??


「うん。なかなかいいじゃないか」


前を留める物が何も無いのでただ羽織っただけだが、袖の折り返し部分や襟の所のデザインなんかがカッコいい。

……ただ惜しむらくは、腰の所にポケットが欲しい。 手を突っ込めないから、何か締まらない。


『カタカタッ』

「ん?」


振り向けば、1号がボロボロに裂けた服を2号に着せようとしていた。 いや、着せていくうちに、ボロボロになっていってると言った方が正確かな?

2号はされるがまま、どんどん服だった物を着せられていく。


「おお… なんかそれっぽいな… 」

『カタッ… 』

『 ……。』


篝火に照らされて、亡者ルック(?)の骸骨が完成した。 ねじくれた棒をタゴサクに渡されて、2号も諦めたのか投げやりな感じでポーズを取り始める。


─ もしかして、2号もまんざらじゃないんじゃ…?


まだ修復されていないコロコロ(新人)達がどこからともなく"死神"の足元へと転がりこんで、インパクトは絶大だ!

惜しむらくは、棒じゃなくてでっかい草刈り鎌とか持ってて欲しかった。 残念。

一方、動ける三人組(新人達)はと云えば、タゴサクの変わりに炊事場に立ったりゴミの片付けをしていたりと、忙しく動き回っている。 約一名程、未だ水汲みをやっているのが居る様だが。。。


─ ホントに、働き者だなぁ。。。いや、まったく手伝ってないオレが言うのも、なんだけど。




取り敢えずは、めぼしい物があんまり無い中でもジャージの上から羽織れる物が手に入った。 後は、あのゴミの中から使える物が幾つかあるか… だが。


『カタカタッ』

周りから囃し立てられる2号を余所に、諦めの悪いヨサク&3号コンビは未だ謎の箱(アレ)に夢中なのであった。

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