どこかの樹海にて 13
「せっかくのスケルトンだが… やっぱり勿体無いな」
元々、そんなに動き回れる状態では無いスケルトン達を、改めてきつく縛り倒して転がしておく。
一つ所に集めて繋げて置けば、後で見つけ易いだろうしな。 余裕が出来たら、従魔達に取りに来て貰うとしよう。
高度な放置プレイをしつつ、暗闇の帰路を辿る──
─────
あの場から更に戻る事、30分くらい…… 新入り達が潜む藪にどうにか辿り着いた。
『カタタッ!』
「あぁ… 待たせたな」
大破した中でも一番マシだったヤツが、棍棒を支えにフラフラしながらも手を振っている。 …隠れる気は、全然無かったのか。
松明も無く真っ暗な中を警戒しながら来たせいで、もうクタクタだ。 普通に歩いてるつもりでも、足元がよく見えない上に疲れているのかその足が上がらず、何度も躓いちゃったしな。
「ふぅ~。 さすがに此処まで来れば、大丈夫だろう」
『カタッ』『カタカタッ』
「まぁその間、休憩させてもらうよ。4号、水をくれ」
従魔達が宝珠の取り合いをし始めたのを横目に、そのまま座り込む。 『カタッ?』4号が篭から取り出したボトルが空になっているのが見えて、道中で飲んだり洗ったりした事を思い出した。。。
「しょうがない。 倉庫に着くまで我慢かぁ~… 」
『カタタッ』
「いや、いいよ。どうせ帰るんだし。その辺の水ってだけで遠慮したい」
『カタッ… 』『カタカタッ?』
気が利く3号は兎も角、あっちでジャンケンをしている1号達には、もうちょっと主に対しての配慮の心を持ってもらいたい。 …って、コッチにもジャンケンがあるのか。 それに両手首が無くなってる1号が、どうやってやるのかが非常に気になる。
───
「全然足りんな。。。」
やはりと云うか予想通り、新入り達を全員完治させるには魔石が足りなかった。 …と言うより、1号達でほぼ使ってしまった。 勿論オレの魔力も含めて。 もうちょっと残るかと思ったんだが。
4号の魔力も使おうかと考えたが、不測の事態が起こらないとも限らないので温存する事に。 熊や狼なら兎も角、ゴースト相手くらいならほぼ安定した殲滅力を発揮するしな。 今はまだ夜、朝日が昇るまでは時間があるのだ。
ボロボロに大破している9体の新入り達のうち、状態のいい2体を少しだけ治し、魔石はこれにて完全に終了。
「このまま夜明けまで、ココで休もうか… 」
『カタッ!カタタッ』
「え~。 さすがにココまで来ないんじゃない?」
『カタッ』『カタカタッ』『カタッ?』
「 …わかったわかった。帰ればいいんでしょ?帰れば」
確かに周囲は疎らに生えてる木立と生い茂る草むらばかりで、陰になる物が多く余り見通しが良くない。 身を守る盾となりそうな物がその辺の木くらいしか見当たらないこんな場所では、魔物になんか絶対に逢いたくない。 …しかも居そう。
でも正直、体力の限界なんですよ。 もう動きたく無いのよ。
ぶっちゃけ、寝転んでゆっくり休みたいのよ。。。
『カタタッ!』 なぜか張り切っている1号が、号令を掛ける。
護衛戦力としての1・2号を除いた全員で、自力で歩けない新入り7体をそれぞれおんぶしたり肩を貸しつつ倉庫へ出発。
「帰りが一番しんどいな。。。」
『カタッ!』 …2号にも伝染した様だ。
~・~・~・~
夜が明ける前には、ヘロヘロになりながらも倉庫へ到着。
途中で幾つかアンデッドに遭遇したが、縛る為の縄も従魔にする気力もとっくに失っている。 早々に魔石の補充へと回ってもらった。
─ 出掛けたりせずに、ずっと待ってればヨカッタよ。。。
この日1日の感想は、これだ。 行き当たりばったりの思い付きでは、早死にしてしまう事が身に染みてよく解った。
"奇跡を待つより地道な努力"と云う名言は、誰の言葉だったか?
幸いにも従魔達は全員生還(?)出来たし、結果的には新たなスケルトンも少しは増えた。
ただ、オレが今背負っているこの新入りも、この先ずっと存在し続けられるかは解らない。 なんの強化も施していないただのスケルトンを、一端の戦力として活用出来る術を考えなきゃ、維持する事すら難しいのではないだろうか?
……なんて頭では真面目に考えているけど、体の方はもうホントに限界だ。
おんぶしていた新入りスケルトンを地面に放り出し、フラフラと入り口へ向かう。 食事する元気も無いので、そのまま藁の寝床へダイブ。
「もう… 無理。後はヨロシク~」
『カタタッ?』
ゆっくりと朝焼けを感じつつ、眠りに落ちる──
────────
──────
─── …夢の中での記憶は、ハッキリ覚えてはいないけれど
見覚えのあるシルエットを前に、幾つか話をしていた様だ……
─ あの時、オレ達を相手に一人で闘ったお前は、どんな気持ちだったんだろう
─ 弱い格下だと見縊っていたのだろうか?
─ …… ……
─ そうか、やっぱり仲間の事が心配だったのか。
─ ……… ……
─ えっ?番? ヨメさんだったのか。
─ … …
─ そうか、やっぱり恨んでいるんだな。
─ ………………
─ そう云うものなのか? オレにはよく解らん。
─ … …… …
─ なら、他にいくらでも当てがあっただろうに。ままならんもんだな。
─ ……
─ なぁ…? お前は、どうすれば良かったと思う?
─ いや違うか… なぜ後悔せずいられるんだ?
─ …
─ ん? 何か間違っているのか?
─ …… …… …… …
─ 何だろう。 お坊さんの説法聴いてるみたいだ。
─ ……
─ え~っと、お坊さんと云うのはだな……
──────
────
「 …んんっ」
体の痛みと一緒に目が覚める。 傷の痛みと云うより、バキバキになった節々の痛みだな。 今、何時くらいだろう?
「てててっ。 …ヤケに早い筋肉痛だな」
大体2日後になってやってくる筈の痛みに、まだまだ元気なんだと思う事にした。 決して我が息子を見て思ったのでは無い。
「ん~… 」
珍しくハッキリとした目覚めなのはいいのだが、寝起きとしては妙な気分だ。
「 …何だろう?このモヤモヤした感じは」
あの夢のせいだろうか?
死にかけたとは云え、夢にまで出てくる程のショックでは無かったと思う。 それ以上にショッキングを通り越してトラウマレベルの出来事が、"この世界"にやって来てから目白押しだったからな。
初日からそれはもう、無理やりおかわりを重ねる"わんこ蕎麦"状態だったし。。。
それに魔物の倒し倒されなんかも、幾らでもあった。 …その大半がアンデッド達だが。
あぁ… あの"焼きゴブリン事件"もあったな。 思い出すだけで、ダイエットに効果バツグンだ! …ぐへぇ。
何が引っ掛かっているのだろう?
襲われる事自体はいつもの事だし、何とか倒した事で達成感もある。 ケガをした事なら、その前に瀕死になっていたからな……
「んゃ? 取り替えてくれたのか」
自然と腕の傷に目が行くと、新しい布が巻かれていた。 恐らく、3号かタゴサクの仕業だろう。
相変わらず、素肌にボロ布を纏った変態チックな姿は変わってはいないが。。。
入り口から射し込む光を遠目に眺めて、想いに更ける。
気が利く従魔が居て、本当に良かった。 1号とか4号みたいなヤツばっかりだったら、色々と終わってたからなぁ。。。
しみじみそう感じていると、不意に気が付いた。 このモヤモヤの正体。
─ ああ、同情しているのか
あの狼の行動は、今まで出会った魔物達とは目的が異なっていた。 モンスターとして敵には違いないが、ある種の人間味が感じられたのだ。
敵だらけの場所で、今にも死にそうになっている番を見棄てず一人残った、愛情。
仲間が未だ遠い中、守るべき存在に近づく敵に対して、単身で挑む勇気。
……そして、死に際に見せた、守れなかったと云う無念。
共感と憐憫とを覚えさせるそんな行動を取るヤツなんて、今まで居なかった。 あの最期の姿を見た時には、居た堪れない気持ちになったものだからな。
それとも、オレが勝手にそう思い込んでいるだけなのだろうか?
「う~ん。。。」『カタタッ』
藁まみれで腕を組んで座っているオレに、タゴサクが気が付いた。 ごはんを用意しているそうだ。
──────
「え~っと… コレは何?」
『カタッ?』
洗濯が終わって返ってきたジャージと下着に着替えたオレは、炊事場近くでイスに腰掛けて待っていた。 原始人と変わらぬ姿からの変貌ぶりに感動の涙を流していると、目の前に─ドスンッ─と云う効果音付で置かれた鍋に対して、発した言葉がそれだった。
改めて述べるとすれば、過去にTVで観たラーメン屋さんの寸胴を思い浮かべて貰えれば幸いだ。 敢えて例えるなら、それが一番見た目が近い。
他に適当な大きさの鍋が無かったと云うのならば仕方がない、使える物は何でも使えばいい。
だが、問題はそこでは無い。
何の料理か知らないが、そんな鍋一杯に並々と入っている事だ。
漂う具材の大きさと香りで、スープかルーの類いだと思われるが、この付近でコレを消化吸収出来る… つまり食べれるのはオレ一人だ。
『カタタッ?』(訳:お腹減ってるでしょ?)
「一人でこんなに喰えるかっ!?」
ブクマと評価までが増えてた事に、今さらながら気付きました
((; ゜Д ゜))
皆様、本当にありがとうございます。
…正直、流し読みされてるだけだと勘違いしてました。スイマセン
閲覧数をチェック出来るページに、ついでにポイント増加数が分かる様にして欲しいですよねー




