どこかの場所にて 3
「はぁ~。何か疲れてきたよ。」
今居るこの場所の状況や、目の前にある白い球体の正体等に対する問い掛けに、まるで要領を得ないのだ。
この言葉を介さないコミュニケーションに、正直もうウンザリしている。
中途半端にイメージやニュアンスだけでやり取りしているので、漠然とした事は解るのだが、肝心の部分がイマイチ伝わってこない。
この微妙に伝わる伝わらないと云うストレスが、疲労と共に頭と心を少しずつ虐めてくる。
─ なんだよ、このシュールな連想ゲーム。オレの想像力に対する挑戦か? 自慢じゃないがオレの知識やボキャブラリーは、タイタニック並みに偏ってるんだからな。
『…!…、……。』
「あぁ、そうじゃなくてっ! …どうにも、分かり辛いんだよなぁ」
繰り返すにつれ、どんどんチグハグになってきてる様な気がする。 一度に様々なイメージをごっちゃに送り付けてくるものだから、ますます解らん。
例え聖徳太子でも笏を投げるレベルだぞ。
「んん?」
向こうも相当根気強くこのコミュニケーションに付き合ってくれている訳だが、ついに我慢の限界か、突如こっちに急接近!
「ちょっ!何っっ!?」
─ 白い球体!動くぞっ!
完全に油断していて腕で体を庇う位しかリアクションが取れない中、体が触れるか触れないかの所で急停止する白い球体。
その直後、強烈な光を放つ!!
「あぁっ!目がぁぁーーっ!?」
どこかで聞いた台詞を叫んだ直後、大量の情報が頭の中に強制的に流れ込んでくる!!
「今度は、頭が割れるぅぅーーっ!!」
..
.. ..
... ... ...
地面に転がってのたうち回る事暫く、目眩と頭痛にクラクラしながら漸く解った。
これはアレだ。
今居る自分と言う存在は、ココに来てる時点でもう"元の存在"じゃ無くなってる。何がどう違っているとかは言葉にするのは難しいけど、兎に角もう違う存在に"なってしまっている"
そしてこの空間で形成と言うか調整と言うか、"これから行く世界"に合った存在へと"成る"のだ。
自分でも何を言っているのかさっぱりだが、これだけは解る。夢や幻想では、ないのだと。
突然やってきた理不尽と云う名の不幸だ。
─ 何だか、モルモットにされた気分だ。。。
今の現状と、これから先の事は、解った。
だが、その理由は、これっぽっちも解らない。
「 …なんでだ?」
目の前で微妙な浮き方をしている球体に聞く。
「なんでこんな事をしている?理由はなんだ?」
『…。…。…、…』
帰ってきた答えは ─"知らない"
予想通りの答えだった。白い球体の役割は、ココに来た者を右から左へ送り出す。その為だけに存在している。この真っ白い空間もそうだ。
ある意味、装置やギミックと同じだ。そこに意志や主体性など無い ───
最初は何かの冗談だと思っていたが、これが現実なんだという謎の実感がある。 洗脳されたにしても、こうもすんなり受け入れる自分に呆れ、しかも自覚している自分にビックリだ。
「最悪だ…」
悪の組織に誘拐され改造された、仮面ラ○ダーの方がマシだ。まだ目に見える形で、恨みのぶつけ処があるからなぁ。
いや、あれはアレで嫌か。。。。最終回まで休日がたった2日なんて、ブラック過ぎる。
解っている事は、現状、もう後戻り出来ない事。そして、どこかは知らないが"別の世界"へ送り出されてしまう事。
その為にココで準備をして、その"どこか世界の存在に成る"事。
ただ漠然と、そして確たる事実としてそうなのだと言う認識が、オレを支配している。
ある意味、悪い夢なのだろう。のほほんと暮らしていた所から一変、非常識の世界に投げ出されるのだから。しかも、その一歩手前の段階だ。心の準備が出来る分、不幸中の幸いと思えばいいのか、寸止めされて焦らされているだけなのか…
Mの気は無いんだけど。
オレの中に、そんな扉は無いと信じたい。
── もう、お家帰りたい。。。。
やっと我が身に振りかかった出来事を、理解した主人公。
帰りたい症候群が発動。




