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どこかの廃墟にて 1

雲一つ無い抜ける様な空の下、連なる四つの影が黙々と進む。


夕暮れと呼ぶにはまだ早い、そんな麗らかな午後。

土を踏みしめる音や体が触れる草擦れの音、あとは時々吹き抜ける風が巻き起こす草木の静かに揺れる音。聞こえてくるのはそれくらいだ。

オレ達が歩くこの小さな道もしっかりと踏み固められていて、迫る草々に足を取られる事もなく意外と歩き易かった。


傍らを通り過ぎる、緑がこんもりと小山になった所や、崩れてはいるがまだ姿を保った廃屋達。

石垣だろうか?少し遠くに所々断片的に並んだ石組みが、微妙に線を成しているのが見える。

この小道もそうだ。これらの人工物達が集落(村?)のかつての様子と、その時の流れを物語っていた。


オレ達以外には動くものが無いこの廃墟と豊かな緑。

少なくとも気配と呼べるものは感じない。…気配を感じるだけのスペックを持ち合わせていないとも言う。


1号達との出会いの場面を考えると、きっと日中のアンデッドはどこかに隠れるか眠っているのだろう。いや、本当に寝てる訳じゃないだろうけど。

ある程度接近しない限りは気付かれる事もなく、やり過ごせるのではないだろうか?

もっとも、居場所が判れば苦労はしないのだが。

そんな事を考えていると、すぐ隣にあった緑の小山から土やら何やらと一緒に骨の塊が飛び出してくる。



─ ですよね~。居ると思った。


慌てず騒がず落ち着いて、一番近くにいた2号が駆け寄りそのままの勢いで斬り掛かる。


─ おっ?思ったよりもすばしっこいな?


2号の振り下ろした鉈はあっさりと(かわ)され地面を叩く。

襲撃者の正体は、白骨の四足獣だ。

犬か狼か狐か?鼬では無いと思う。骨だけじゃまったく判断がつかないな。

だが、骨になっても獣ならではの(しなや)かさは健在の様だ。

名前は忘れたが、コイツもアンデッドだ。なので燦々と照らすお日様の下では、その素早さも落ちている筈なんだけど……


「うわっとぉ!」


ここで生きている者はオレだけで、白骨の獣(アニマルデッド)のターゲットも、勿論オレな訳だ。

足元から延び上がる様に飛び込んできた所を、横合いから無言の1号が鉈でフルスイング!白骨の獣(渾身のストレート)を捉える!


─ 危なっ!! 刃が、カスッたんじゃないの!?


見えていた獣の牙よりも、意識の外から突然現れた凶刃に冷や汗が止まらないよ。



─バラバラッ…

四肢を砕かれ、頭部と僅かに残った胴体では真面(まとも)に動く事も叶わぬその獣。

しかし、此方を向いて未だガッチンガッチン牙を鳴らしていたのであった……




~・~・~・~



実は廃屋を出てからこれまでの道中、瓦礫や廃屋やそれだったモノの近くに差し掛かる度に、ガサガサモゾモゾ音がしてはアンデッドがひょっこり顔を出していた。

アンデッドの巣窟と言うだけあって、あちらこちらでひょっこりはん。もうそろそろ、飽きてきたよ。


最初の頃は、先頭を抜き身の鉈を持った1・2号に任せて、袋や荷物を両手に抱えたオレと両手に鉈と短杖を持った新入り改め3号が後ろに続く。

そんな順番で一列に進んでいたのだが、前よりも横からひょっこりされる事が多いので、こうした怪しいポイントに近付いた時は1・2号が盾になるように、自然と2列になって歩いていたのだ。


先行偵察させようにも、1号達にアンデッドがまったく反応を見せない様で、その後にオレが通った時だけひょっこり出てくる。

かと言って道を外れては歩きにくいし、動き難くなって守られづらい。

オマケに外れた先で出くわさないとも限らない。死角が多いのだ。



「お前なぁ~。絶対狙ってやっただろ?」


『カタカタッ?』


知らばっくれた態度をみせる1号に、憤りが止まらない。

幸い鉈の刃に触れる事がなかったみたいだが、生身のオレには斬られたら物理的なダメージの上に、属性やら負の何かが乗っかって、オマケで生命力まで吸われてしまうのだ。

掠り傷でも致命傷になりかねない。


そんな1号に厳重注意をしている最中にも、2号はお構い無しで素振りをしている。

先程(かわ)されたのが悔しかったのか、それとも1号の真似をしたいのか判らないがブンブン振り回している。

一方、後ろに控える3号は、鉈と短杖をだらんと提げて力無く立っていた。影が薄いな……




ここまでの十数回を越えるアンデッドの襲撃は、幸いにも殆どが単独もしくは2体くらいだった。

数をこなせば自然と連携を生む様で、2号が先手を狙い1号が控えとして援護していた。

3号はその間の警戒とオレの護衛だ。


─ 2号はやや小柄で、静動の差が激しく、大人しいのか活発なのかよく解らない。


─ 1号はオレと大体同じ背丈で、いつも斜に構えたような性格をしている風に見える。正直、よく解らん。


─ 3号は一番大柄で、大人しい…と言うか印象が薄い。リアクションが小さいのだ。


文字通りの三者三様だ。ただ…オレが思い浮かべる魔物(モンスター)のイメージ像とは違う。




喋れない事を除いて、人間とほぼ同じなのだ。

まぁ、スケルトンってヒトの骨やら無念の魂(?)やらから生まれているので、似通って当然なのだが。

しかし、ホラーな印象を刷り込まれた人間としては、戸惑ってもいいと思うのですよ。


感情の無い無機質な動きと雰囲気で、黙々と恐怖と暴力を振り撒くマシーンをイメージしていたのですよ!


何この人間味溢れるリアクション。いったいどこに需要があるの?

"ヲイラと愉快な仲間たち"なんて、オレ求めて無かったんだけど?


さっきの骨の犬(?)なんかは、正しくアンデッドの姿を表していたと思う。

己の身に頓着せず、ただ生者に殺意有るのみ。まさにアンデッド斯くあるべし。


同じアンデッドでこの落差、原因は一体何処からやって来たのだろう?

オレか?オレのせいなのか?

又は[従魔術・改]のせいにしようか?




お犬様(?)の魔石を回収し、再び歩を進めるスケルトン(メンバー)達。

両手で抱えた荷物の上で、ウンウン唸りながら着いてゆく。


プライベートを一切見せずにミステリアスで硬派なイメージを保ち続けた所に、無理なオファーで初めてお笑い番組に出演したヴィジュアル系みたいになってしまった。

現場がどう(いじ)っていいのか、戸惑っているのがお分かりだろうか?



今後の活動方針に真剣に頭を悩ませていると、先を歩いていた1号が立ち止まり、その背にそのままゴッツンコ。


「っと、また出たのか?」

……考え事していたとは言え、油断し過ぎだな。反省、反省。


『カタッ』


1号が指差す先を見れば…

蔦に覆われ物凄く外観が解りにくいが、しかし形をしっかり保った大きな館が"背景として"(そび)えていた。






………。


……そして、その前面には(おびただ)しい数の亡骸が、足の踏み場もない程に埋め尽くしていた。。。。。


「……え? ええぇぇ?? ココが目的地っ!?」


『カタカタッ』(訳:そうですが、何か?)

引っ越し先には、問題が…?

良い物件が残っているのは、それなりの理由があるのです。

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