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どこかの廃屋にて 6

「まだこの近くにも、アンデッドは居るのか?チラッと見た時には、ウジャウジャ(ひし)めきあってる様には見えなかったんだけど。」



なぜか拗ねてしまった2号を横目に、1号と再度情報の擦り合わせを行う。

ここが亡者の巣窟って話だったし、すぐ隣の家に従魔になる前の2号が居た事もあって、軽はずみに姿を晒す事の危険性を再認識させられた為だ。

出来れば戦力となる従魔を、もう少し増やしたい。


しかし、まだ扱い切れない魔力の問題もある。2号を従魔にする際に、かなり消耗した感触があった。

後どれだけ[従魔術・改]が発動出来るか判らないが、最低一体は従魔に出来るのではないだろうか?

……と言うか、出来ないと困る。


まだ日が落ちるには早いが、そう残された時間がある訳ではない。

正直、喉も渇いた。お腹が空いた。眠気も疲労もかなりのものだ。

ぶっちゃけ、動きたくない。もうお家に帰りたい。


だが、このまま夜を迎える訳にはいかない。

頭に浮かぶのはゾンビ映画のそれだ。このままだとどう考えても、途中で姿が消えてしまうモブキャラ以外の配役は期待出来そうにない。

その後の再登場なんて、やっつけメイクを施されたエキストラの一人だろう。……せめてラブシーンのある役に出世を計りたい。



~・~・~・~


なぜか理由がさっぱり解らないのだが、2号の(いじ)けっぷりが止まらない。

仕方なく、隅っこで地面に何かを描き始めた2号の頭をペチペチ叩いて正気に戻す。


「再度、スケルトンの一本釣りをしようと思う。1号頼んだぞ。…それと、2号。いい加減に機嫌を直せ。」



散歩に出掛ける気軽さで歩いていく1号をよそに、2号は鉈を鞘から抜いてボーっと眺めだした。

ちなみに1号は、鉈を置いて行った。野良スケルトンの誘き出しに武器は要らないと、自ら判断した様だ。


─ 万が一を考えて武器を渡したオレの立場は、いったい…?


その(かたわ)ら、まだ鉈を穴が空く程見入ったまま微動だにしない2号に、言い知れぬ不安が(よぎ)る。

呪いの武具の一つだからって、殺人衝動に支配され始めたりとかしないよな?


アイテムカタログに載っていた詳細を思い出しながら、ちょっとずつ2号と距離を取っていると、土擦れの音が近付いて来た。



無言で、2号に目配せする。


刻が止まったかの様に、まったく動かない2号。

……気が付いていない?



ジッと鉈を眺めたまま固まった2号の姿に、声を掛けるべきかと呆れか焦りか判らない複雑な感情を覚え始めた所で野良スケルトンのご登場!それも2体っ!!


─ これが公開日が先に決まってるせいで撮影日数が足りてないのに引き受けてしまった監督の心境なのか!?


脚本をねじ曲げ、編集やCGでの力業で乗り切る事に躊躇(ためら)っていると、今までフリーズしていた2号が再起動。一足で間合いを詰めると持っていた鉈で一閃!

あっと言う間に、野良スケルトンの一体を切り伏せた?!


理解が追い付かないままも事態は進行する。

いつの間にか、もう一体の野良スケルトンは1号に引き倒されて仰向けになっていた。

鉈をそのままポイッと投げ捨てた2号が、両足に組み付き野良スケルトンの邪魔をする。

我に返った時には、すでに2体の野良スケルトンが無力化されていた…。


口を半開きにしてつっ立っているオレと、こちらを見上げている1・2号。虚しくジタバタ(もが)く野良スケルトン。


─ その光景は、意図しない所で好評価され、納得出来ぬまま自分の代表作として扱われる…。その理不尽さにも似た感覚を覚えさせた。


ともあれ結果は結果だ。甘んじて受け入れるしか、あるまい…。



~・~・~・~


サクッと野良スケルトンを従魔にした所で、どうやらオレの魔力はホントに尽きたようだ。

使役出来るまで足りてて良かった。

別に体調におかしな所は無い。今まで"違和感"として認識していた魔力が無くなって、むしろ平常にすら感じられる。



「…ともかく、これで今日の一本釣りはこれで打ち止めな訳だ。」


野良スケルトン(新なパシリ)を囲んで、カタカタ言い合ってるスケルトン達に自分の状態を説明する。

無くなった魔力は休めば回復するのだろうが、休める場所に居ないので、今度こそ移動しなければならない。

どのくらい休めば魔力が回復するのか、さっぱり解らないのが不安の種だが……




己の弱さに自信がある身としては、スケルトン達(ボディガード)が頼りなのだ。

ペンダントによって身体能力低下のペナルティを克服し、欠片を取り込む事で色々強化された彼らの動きは、素人が見ても分かる程変わっていた。

特に2号が野良スケルトンを瞬殺した動きは、とても早かった。[剣術]と[俊敏]と……[見切り]の効果も合わさったのかも知れないな。

"獄卒の鉈"自体の相性のお陰もあるだろう。あれって斬るってよりも叩き切ってる感じだしな。


それに比べ平均的なスケルトンは、スキルを余り持っていない。日中の身体能力低下や殴打に弱い事を抜きにしても、素の強さは素人の自分と大差無い…と思う。

それがこの変わり様だ。少なくとも日中の野良スケルトン相手なら、倍の数まで持つだろう。



「そうだそうだ…お前にもコレを渡さないとな~」

─ ペキッ ─


魔核の欠片とペンダントを新入りに渡している時に、足元に散らばる野良スケルトンの残骸を踏みつけた。

黒光りする黒曜石みたいなものが目に止まる。


「おぉぅ。 もしかしてコレが、魔石ってヤツか?」


[従魔術・改]を発動する為に、何度も握りしめた感触とは…何か違ってる様な…気がする?

だいぶフワッフワッした感想だが、ホントに魔核との違いが分かりにくいんだって!


「ちょっと1号、魔核見せて」


『カタッ?』

腰に手を当て、のけ反る姿勢を取る1号。


少し屈んで見上げる形で覗きこむと、やはり黒曜石と同じ様な石が見える。

手にした魔石と見比べても、色艶が違う……様な…… 同じ様な?


「……何が違うのかさっぱり解らん。」


魔石の詮索は一旦保留だな。

瓦礫の下から引っ張り出した袋の中に仕舞いこむ。



~・~・~・~


「え~っと、忘れ物は無いな? それじゃあ、そろそろ移動し… ん?どうしたお前達?」


新入りの強化も終え、持てる物も大してないが荷造りも済んだ。

あとはこのまま出発を~と言う場面で、新入りの肩をそれぞれに掴んだ1・2号コンビが、オレの前で何やらアピールを始める。


一方、されるがままの新入りは、不安そうに視線を彷徨(さまよ)せるのだった……

やっと引っ越しの決意を固めた主人公。

まだお家に居たんだ……

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