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青春っていったら部活でしょ!

「え?本当に?」

「ああもちろんだ。さっきも言った通り俺は時間だけはあまってる。お前のやりたいことに使う時間だってあるわけだ。といっても俺ができる範囲までの話だがな」

「ほ、本当にありがとう」

また泣きやがったか。まったく今度は嬉し泣きかよ。こいつも忙しいもんだ。

「レイのやりたいことはわかった。でも具体的には何をするつもりだ?」

「え?」

「え?」

もしかしてだけどこれってやっぱもしかする奴なのか.....。

「もしかしてだけどみんなの青春を後悔のないようにしたいってだけでどうしたらいいかまでは考えてないのか?」

「う、うん」

申し訳なさそうに返事をするレイをみてため息がでた。こいつやっぱアホだ。やりたいことはあるのにそのためにどうしたらいいかわからないなんて。まあ俺も分からないけど。

「えっと。文也はどうしたらいいと思う?」

「いや、そんなの知らないよ。」

レイは「ですよねー」と言って俺から目を離す。

ああ引き受けたこともう後悔してるよ。

「じゃあさレイはどういうものが青春だと思うの?」

「んー。それはやっぱり部活かな」

「よりによって部活かよ。俺部活をやめた人間だぞ」

レイにとったら俺は青春を送っていない人間の代表みたいなものなのかも知れない。そんな俺と一緒に青春をエンジョイさせてあげようなんてまったく無理にも程があるだろ。

「じゃあさもっかい部活入ろうよ」

「は?お前何いってんの?」

「だからもっかい部活入ろうよ」

いやそんなに張り切ってキラキラした目で俺のこと見ても無駄だよ。急に部活入ろうよとかこいつほんとに頭の方は大丈夫なのか?

「俺は帰宅部ってことを活かしてお前に手伝うって言っるんだぞ。それなのに部活なんて入ったら時間がなくなるだろ。それより今更何の部活に入れって言うんだよ」

「文也は頭がかたいのね」

「レイは頭がイカレてるんだね」

「イカれてないもん!」

「痛った」

ほんとにその細い腕から放たれたものとは思えないくらい痛い。いやわりとまじの方で。これ以降こいつの右ストレートには気をつけなければいけない。

「で?何の部活にはいればいいわけよ」

俺はレイの右ストレートをくらった右肩を抑えながら言った。

「入るんじゃないよ。私たちでつくるの!」

「は!?」

俺はレイの突拍子もない発言に大きな声で反応してしまった。

「お兄ちゃんうるさい!!!」

一階から妹の怒鳴り声が聞こえる。

いつ帰ってきたんだよ。帰ったら「ただいま」くらい言えよな。まあ俺はもう半年くらい言った覚えはないけど。

「お、おうすまない」

俺はあわてて下にいるであろう妹にとりあえず謝る。

ほとんど家から帰って飯、風呂の作業を終わらせてからはずっと部屋で携帯をいじり眠くなったら寝る俺だからいつのまにか権力は妹のほうが上になってしまった。まあほとんど口を聞かなくなってしまったからいままでさほど苦労したことはない。

「よし、それで部活を作るってのは?」

先ほどの事はなかったかのように話を元に戻す。

「妹さんの名前は?」

「あ?それ今関係あるか?」

せっかく話を戻したのになんで妹の名前なんて聞くんだ?まあ部活なんて作ろうとか言いだす奴だし考えてることなんて分かりやしないか。

「な、なんとなくね」

なんだろうレイの様子がすこしおかしいような気がする。気がするだけだと思うがどうもよそよそしい。

「まあ隠すことでもないからな。梓だ。高松 梓それが俺の妹の名前だ。」

「そ、そうだったわね」

名前を聞いといてあんまりリアクションが良くない気がする。俺はてっきり「梓ちゃんっていうって言うのね。こんなお兄さん持ったら大変そうね」とか言ってくると思ったが違ったか。

テンション低くなってるな。「そうだったわね」だと?まるで忘れてたみたいな言い方だな。でも今のレイのテンションならこれくらいの言い間違いはしそうだ。

「今度こそ話を戻すぞ。お前は部活を作るって言ったな?」

「うん、そうだよ」

お、なんかテンション戻ってきてね?なんかレイってテンション上がったり、下がったり波が激しいな。ほんとに忙しい奴だ。

「どんな部活なんだ?」

レイは大きく息を吸うと俺の目をよりいっそう強い眼差しで見てきた。

「その名も!青春執行部だよ!」

「なんかまんまだけどまあいいんじゃないか?」

こいつらしいな。なんか今日初めてあった気がしない。俺はこいつ、レイを知っている。いや似たやつを知っている。いや忘れたか。でもまあこいつと話しているとなんだか懐かしい気がする。アホみたいで突拍子もないことも言うけどそれを聞いているのがとても安心できる。なぜかは知らない。わからない。

「え?いいの?」

「え?ダメなの?」

「てっきりもっと別のにしろとか言うと思った。こんな名前だし」

なんだちゃんと自分でも少しだめだと思ってたのか。でも俺はこれでいいと思う。やりたいのはレイであって俺じゃない。だからこいつの決めた名前にとやかくいう気はない。

「こんなとか言うなよ。レイみたいなアホがつけそうな名前でいいと思うぞ」

「そ、そうかな」

あ、やっぱこいつアホだ。太陽と同じでアホって言ってるのに気づいてない。てか少し照れて俯いちゃってるし。可愛いからやめて。

「ま、まあ名前はそれでいいとしてどうやって作るんだ?」

「え?そんなの文也が先生に『青春執行部を作りたいんです!』って言えばいいんじゃないの?」

は?何言ってんだこいつ。こいつの頭の中はハッピーセットかなんかなのか?てかちゃっかり俺の声とか真似してるし。似てないし。

「いやだよそんなの」

「え?ダメなの?」

何をキョトンとしてんだこいつは。そんなことしても可愛いだけだからやめて。無駄に容姿がいいとこちらもなにかと困ったもんだ。

「『ダメなの?』じゃねえよ。無理だわ。言ったよな俺のできる範囲ならって」

「え?今の私の真似?にてなーい。ハハハッ」

てめぇも似てなかっただろうが。さっきの右ストレートの分もあるから腹パンしたろか。

ついつい右手が出そうだったが寸前のところで左手で止めることが出来た。

「そんなことはどうだっていいんだよ。なんで俺なんだよ。」

「だって私誰からも視認されないし。見えるの文也だけだし。頼れるの文也だけだし」

「な.....」

ちくしょう正論で何も言い返せない。頼れるとか言うなよ。俺だって男だぞ。そんな容姿でそんなこと言われたら断れるものも断らないじゃないかよ!

「私も部活動成立のために協力するから」

「すまねえ。助かるわ」

ん?なんかおかしくないか?

「ってお前のためだろうがよ!何が協力するだよ!俺がお前に協力してんだろ!」

俺はレイのほっぺを両手で横いっぱいに広げる。あ、なんか柔らかい。気持ちいいかも。

「いだい、いだい文也いだいって!」

ああなんか女子のほっぺって柔らかいなあ。冷たいしなんかすっごくいいなあ。

「文也さんお願いれふ部活動せいひつのために協力してくらはい」

「よし、いいだろう」

俺はパっと手を離すとレイは両手でほっぺをさすって「いたかった」なんて言ってる。さっきの右ストレートの分は返せたであろう。

「これでまあ部活を成立するってことは確定だな」

「そうだね!お願いね文也!」

「まあ問題はどうやって成立させるかだがそれは明日ダメ元で先生のにお願いしてからでも構わないだろう」

「文也!あらためてよろしく!」

そう言って握手をかわすために手を前に差し出してきた。

「まあ出来ることくらいならな」

俺はその手を強く握り返した。こいつの心意気はそう簡単にしたいとか思えるものでもない。レイは後悔が残っているのだろう。でもこいつはたぶん気づいてないこれがレイにとって二度目の青春になるってことを。

俺がお前の二度目の青春を後悔のないようにしてやるよ。

「レイ」

「何?」

「俺が後悔をさせないようにしてやる」

「お願いね文也」

俺の意図には気づいていないようだったがそれでいい。お前に二度目の後悔はさせないよ。

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