勇者の旅立ち (1)
ーーーあなたの能力に限界を加えるものは、他ならぬあなた自身の思い込みなのですーーー
ナポレオン・ボナパルト
「人生って、何が起こるか本当に分からないもんだなぁ。」
俺は呆然としながら、そう言った。見知らぬ街並み。見知らぬ人々。そしてーーー
「まぁ、既に一度死んでるですけどね〜、あなた。」
天使の様な羽がついたしゃべる本。
「それで、もう一度説明してくれるか?正直まだこの事実を受け止めきれてないんだ。」
「もー、まったく世話のかかる人ですね〜。いいですか〜、あなたは元の世界で死んだ後、神様に選ばれてこの『リグザミン』という世界に転生したのです。」
「で、目的は何だ?俺に勇者になってもらって、魔王でも倒して欲しいのか?」
と、俺は冗談めかして言った。ゲームとかじゃあよくある展開だ。主人公が勇者になって悪を倒す物語。まぁ、そんなものは起こるはずなーーー
「そうですよ〜。あなたが勇者です、才場 怜雄さん。さぁ、張り切って魔王を倒しましょう!」
起こるんかい。んなベタな展開、本当に。びっくりしたわ。
「あ、因みに拒否権はありませんよw。」
こうして、未だに信じられない事態に困惑しながら俺の第2の人生、勇者ライフが始まったのである。
「そう言えば、お前は何なんだ?どこぞのCMの様な天使の羽みたいなつけて。」
たしか、ランドセルのCMだったはず。
「やだなぁーレオンさん。私、これでも一応偉い方の天使なんですよ。ただ、今は本の姿に変身して一対以外の羽を仕舞って、羽を本のサイズに合わせただけですから。あんな合成の羽と一緒にしないでくださいよ〜。」
どうやら、飾りではないらしい。うん、まぁ、この本飛んでるしね。てか、天使かよ。
「あ、そうそう。さっきの様なCMとか、私にしか通じませんよ。後、私はあなた以外には『天の知識書』というアイテムに見えていて、私の声はあなたにしか聞こえませんよ。」
そうか、俺の世界とは全く別なんだな。今度から気をつけよう。ん?俺以外には声が聞こえないってことは………
「あなたさっきから“うわ、何あの変な人。気持ち悪いわー。”って思われてますよwww」
「先に言えよ!」
そう言えばここ、街中だった。