88歩目「跳弾の蜘蛛の糸」
―――『Side 王国英雄部隊―バリー・ザ・キット』
蜘蛛の巣に捕らえられた蝶に生き残る術はあるだろうか?
羽を完全にからめとられ身動きがとれない、無理に動けば羽が千切れていく。
仮に羽を自らもぎ取り体だけ地面に落ちた所で待っているのは衰弱死か他の捕食者の夕飯だろう。
目の前の彼女はまさにその状態だった。
蜘蛛の巣は銃弾と魔法とベアリング弾、羽を絡めとるなんて生易しい方法ではなくその衝撃を持ってに皮膚を裂き、肉を削ぎ、骨を砕く。
生き残る術なんてない、だから彼女が周囲に向けて銃を撃ち始めた時も僕は笑みを浮かべるだけで動揺すらしなかった。
その射線は出鱈目で僕や上から狙っている魔法使いを狙うものは一つもない。
破れかぶれのがむしゃらな行動、そのようにしか見えなかった。
違和感を感じたのは少しあと、一セクにもみたいな時間だが、射線を見るべく意識が加速している僕ならば把握できる時間だ。
彼女に当たるはずのベアリングや魔法がない。
いや服を掠めたり肌を掠めたり髪の毛を持っていく弾は幾つかある、だがより深い傷になるであろう弾や魔法が悉く存在しないのだ。
よくよく射線を見てみて気付いた、存在しないのではない、彼女の撃ち落とされているのだ。
器用な真似をするものだと感心する、高速で飛んでくる弾を自分の弾で撃ち落とす、それも僅かな時間に大量にとなればどれだけの神技か分かると言うもの。
逆にそれほどの技術をもってしても無傷でこの包囲は突破できないのだ。
見事な技量だ、絶対抜けられないと思われる罠を突破する、それだけで罠を仕掛けた存在には動揺が生まれ付け入る隙が生まれるだろう。
行動を読まれていなければという話だが。
正直な所少しがっかりした、この行動は僕が予測した中で最も分かりやすい行動だったから。
周囲に銃口を向けるということはこちらに向けることができないということ、他の三下ならいざ知らず僕と同格以上のガンマンに対しては愚策と言わざる負えない。
「(あっけないものだ)」
本当にあっけない、彼女の速度では僕の撃った弾を撃ち返すことは出来ない射線は間違いなく額を撃ち抜くように伸びている。
引き金を引いた瞬間痛みを感じた。
痛み?
ベアリングが僕の肩を引き裂いていた、オカシイ、自爆するような設置位置にはしていないはず。
その後も次々と痛みが訪れる、まるで周囲から十字砲火を浴びているようだ。
ここに来てようやく気付いた、これは恐らく跳弾、先ほど撃った弾でこちらに弾を反射させてきたのであろう。
僕は大事なことを忘れていた、自分たちが相手のことを知って対策しているのと同様に、相手も情報を持ち対策をしてくるのだということを。
果たしてどちらが蜘蛛の糸にかかったのか、気づいたのは血塗れになりながら膝をついた瞬間だった。
いつもお読みいただきましてありがとうございます。
活動報告に今度の展開についての文章を上げました、お暇ならば目を通していただけると幸いです。
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