87歩目「超稼働」
爆発するだろうという黄の予測通り、橋は真ん中を超えたあたりで橋は爆発する。
それほど大きな爆発ではなかったこと、英雄としての体の頑強さ、そして事前に前方に大きくジャンプしたことで黄にダメージは殆どない。
「ちっ」
その代り体は空中で無防備になる、空中を足場に出来る様な能力を黄は持ち合わせていない。
さらに少し遅れて後方から爆発音と共に小さな金属の弾、ベアリング弾が空中の黄に向かってばら撒かれる。
同時に上空から魔法の弾幕とでもいうべき大量の攻撃が降り注いできた。
黄が空中に浮かんでいる時間は一秒にも満たない、軽くでも着地できればすぐさまこの弾幕から離れることができるだろう。
攻撃に追いつかれなければだが。
「……(間に合わねえ)」
後方のベアリング弾が着弾するまでの時間は着地する時間までの半分ほどだろうか、上から降ってくる魔法も速度重視の小さい物のようだが、タイミング合わせてベアリングとほぼ同時だ。
予想以上の罠の出来栄えに、黄は内心敵に拍手を送る。
後方と上空からの飽和攻撃に加えて、逃げ場のない空中に居る時を狙ったタイミング。
そして目の前のガンマンは既に銃をぬき終えている、彼の弾の速度を考えるとこれも他の方向の攻撃とタイミングは同じだ。
黄の体は木乃美自身の物よりも小柄だし、凹凸も少ない方だ。
それでも思いっきり体を丸めて、体を小さくしたとしても弾幕の全てを避けることは出来ない。
幾つかの弾丸は突き刺さり、或いは肉を削いでいくだろう。
魔法の幾つかは、火傷を、あるいは電撃を浴びせて判断と行動を鈍らせるだろう。
その上さらに弾切れのない銃撃から身を守らなければならない。
予想通りの、そして予想以上の必殺の布陣。
一の矢、いや最初の攻撃だけで勝敗はほぼ決したような物。
万全の状態で銃の腕が互角ならば、片方で大きく負傷すれば勝敗は確実なものになる。
「……」
それでも黄は笑いながら敵を見据え続ける。
頭の中が湯だったように熱く、何か千切れてはいけない物が千切れていく感覚と音、そして鼻から垂れる何かを感じながら、黄は銃を引き抜く。
黄はどうやって跳弾を作り出しているのかといえば、予測しているからだ。
彼女の能力は『弾道予測』飛んでくる弾、飛ばした弾がどのような軌道を描くのか予測するものである。
そして現在、バリーと同様に彼女の目に射線が見えていたとしたら、彼女の周囲を蜘蛛の巣のように埋め尽くしていただろう。
銃から発射された軌道だけではない、撃った弾が跳弾になってどう飛ぶかまで、細かく計算されつくしている。
しかも対象は今も高速に動いているベアリングや銃弾や魔法だ。
地面の凸凹から跳弾を計算するのとは頭への負荷が比べ物にならないだろう。
『弾道予測』の超稼働、限界を超えた反撃が繰り出されようとしていた。
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