84歩目「ただそれらしいだけ」
―――『side 黄 』
俺が生まれた場所は戦場がよく見える場所だった。
ある時は兵士たちがただ生き残るためだけに戦う大戦場。
ある時は、コンクリートのジャングルで黒服の人間たちが銃を撃ち合う修羅場。
ある時は荒野と夕日を背景に速さを競う決闘場。
俺はイミテーションの銃と俺を抱えてはしゃぐ❘馬鹿と一緒に巨大な画面の向こうの無数の銃弾を見ていた。
別に虐められていたわけではない、ただ年齢一桁の少女に血みどろの戦場とBB弾の痛みは耐えられなかったというだけだ。
❘馬鹿はそのとき確か大学生だったはずだ、お互い人見知りで新しくできた家族にあいつは舞い上がってしまったのだろう。
あいつは自分の趣味に俺が……いや黒がハマるように全力を……いや死力を尽くしたといっていい。
そして黒は嫌とは言えなかった。あいつは新しい居場所を壊したくなかったからだ。
銃の構え方も撃ち方も避け方も全部スクリーンから覚えた。毎日食事と学校と排泄と風呂と睡眠以外の時間すべてに当てられた❘上映時間で俺はどんどん成長した。
初めて黒と変わったのは、確かゾンビ系の映画だっただろうか?
突然剣呑な言葉と共に画面に熱中しだした俺を❘馬鹿は少々驚きつつも嬉しそうに眺めていたよ。
ただ少しづつ様子が変わっていった、当然だろう黒と俺じゃ性質が違いすぎる。
銃撃に興奮する俺を見て驚き、爆撃を見て歓声を上げる俺に怯え、イミテーションを手慣れた手つきで弄り回す俺を化け物を見るような眼で見ていた。
おかしいよな? そうなるように仕向けたのは他ならぬ自分だって言うのに。
ある日学校から帰ったら、部屋の中にあった様々な銃関係の物は綺麗さっぱりなくなっていた。
俺は怒ったね、さんざん熱中させておいてこの仕打ちはあんまりだろ? でもいくら何でも手を上げるわけにはいかない。
だからちょっと脅したわけさ? プレゼントされた水鉄砲でな。
中身もただの水で、殺傷力なんて欠片もない。安いおもちゃだから水圧もないからな。
だけとそれで❘馬鹿は半狂乱になったんだ、ありゃひどい光景だったな。
❘閑話休題
何が言いたいかというと、俺の銃さばきは結局見様見真似だ。
それらしく構えて、頭の中の射線が目標とかち合ったら引き金を引く、ただそれだけだ。
それらしいだけなんだ、本物に勝つためにはそれじゃ足りない。
射線が増えれば増えるほど、対象が動けば動くほど❘頭にかかる負担は大きい。
それでも考えなければならない、俺が❘本物になるためには
いつもお読みいただきありがとうございます。




