74歩目「ラドリオ物語」
ラドリオと呼ばれる少年が生まれたのは、彼の世界の山岳地帯のとある部族だった。
時代は地球で例えるならば、19世紀頃、工業の波が押し寄せて世界がスモッグに包まれつつある時代だ。
この世界の戦争はある理由から空軍が重宝されていた、飛行機ではない、『それ』はあらゆる生物よりも速く飛び、最も薄い羽や眼球ですら鋼鉄の武器を弾くほど固く、上位の存在ならば口から炎や毒を吐く。
この世界はドラゴンと共に発展してきたのだ。
ラドリオの一族はそんなドラゴン社会において高い地位を持ちながら昔ながらの暮らしを営む種族であった。
彼らは昔からドラゴンと共にある一族で、その誰もがドラゴンと心を通わせその背に乗る力を持っていたからである。
海風の一族と呼ばれる彼らの中に生まれたラドリオはその中でも天才と呼ばれていた。
三つの頃には既に上位のドラゴンと言葉を交わし、人間の子供よりもドラゴンと遊んでいる時間の方が多かった。
眠る時とご飯の時以外は殆どドラゴンと共に居るほどである。
「ドラゴンの申し子」「英雄の再来」幼い頃からそう呼ばれたラドリオは、その名に恥じないドラゴン乗りへと成長した。
彼が選んだのは風のドラゴン、ドラゴンたちの中で最も素早い、その代り力や頑強さに劣り、あまりの速さに多くのドラゴン乗りがその力を出し切れなかったことで有名なドラゴンである。
彼の世界でも戦争は何度もあった、そして戦争とはドラゴン乗りの戦いでもあった。
彼らの先人たちは何度も人の手でドラゴンを倒す武器を作り出そうとしたが、人間たちの武器や兵器ではドラゴンたちに傷を負わせることすら難しい。
投げやりや投石ではドラゴンに届くわけもなく。
弓や弩では届いても傷一つ追わず、羽ばたきで吹き散らされる。
火薬と大砲、そして銃が生まれた時は先人たちも今度こそと思っただろう、しかし結果は散々だった。
小銃ではやはり傷一つ追わず、大砲ならば『当たれば』傷を負わせることができたが、空を舞うドラゴンに大砲を当てるのは熟練の砲手ですら至難の業であり、不意打ちや寝込みを襲おうにも、その巨体と発射時の轟音のせいで上手くはいかない。
しかし銃は、乗り手同士でけん制し合う『副武装』に最適だとされ、そこから世界の発想は
「ドラゴンは落とせないが、乗り手は落とせる。乗り手を落とせば味方のドラゴン乗りが片づけてくれる」
という発想になった。
ラドリオが戦争に出向くことになったのは、そんな思考の元、片手で撃てる元込め式の銃や、乗り手を混乱させたり怯ませたりするための砲弾が実戦投入され始めた頃の話だった
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しばらくラドリオの昔話です。
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