72歩目「古井戸から馬」
今更ながら、木乃美救出作戦(仮名)のメンバーを改めて確認しよう。
人間から木乃美の主であるマルス、運び屋から何時の間にやら魔王マルス一味になってしまったラドリオ。
小鬼族から、将軍(自称)ゴブリオン、集会の時マルスたちに突っかかった武闘派一族の長で、他の小鬼と比べても体格が良い、持っている武器も小鬼たちの中で一番真面な金属製の斧だ。
他にも戦いの心得のある小鬼が十数名、うち弓兵が2名。
ゴブリースのような内政担当は今回は連れてきていない。帝国ならば兎も角王国にとって小鬼は、本能のまま暴れる魔物と同義だ。
話し合いをするまえに、遠くから魔法で排除されるのがオチだろう。
そしてそれ以外の種族として、大鬼の英雄オグリアス、そして錬金術の最高傑作の試作品ジェラート。どちらもこのチームの最高戦力の一つだ。
北の荒野へと続く避難経路は、やはり人間サイズだった。
マルスや小鬼には十分な広さで、ラドリオは時たま頭を低くする程度でよかったが、オグリアスが大変だった。
横にも縦にも人間以上のサイズがあるオグリアスは、所々で危うく通路につっかえかけたりしたのだ。
そのたびに引っ張ったり押したり、気甲拳で壁や天井を削ったりして如何にか全員で進むことができた。
ジェラートの方は中身が機械だから時折
「明らかに骨が折れてないか? あれ」
「ジェラートは折り畳みがきくんだよ」
明らかに馬だったら無理な姿勢で歩いたりしていた。
「出口はある程度の広さがあってよかったな……人の気配もなさそうだ」
「俺が先に行こう、その後は足を生かして先行するけどいいよな?」
「……そういえばそいつ―――」
「ジェラート」
「―――ジェラートはどうやってこれを上るんだ?」
井戸から出ていくには持ってきた縄梯子を上る必要があるのだが、馬の見た目のジェラートにはどう見ても登れそうにない。
「ああ、それなら問題ない……このくらいの穴なら『自分で出られる』」
先頭までやってきたジェラートにラドリオが颯爽とまたがる、ラドリオの服装と相まって随分絵になっただろう、井戸の底でなければだが。
「ジェラート、上へ!」
井戸の底で何やっているんだ? という周囲の視線も気にせずラドリオがそう命令した途端、ジェラートが頭の高さ程度まで垂直にジャンプして、
「不気味過ぎるだろう」
機械音と共に足を『伸ばして』井戸の壁面に突っ張る様にしてとどまった。
そしてそのままの姿勢で上に登っていく、足が伸びたぶんどこか虫のようで気持ち悪い。
下から見上げると馬の頭とラドリオの上半身が見えなくなるので、益々奇妙な虫の様に見える。
「……見なかったことにしておけ」
「……そうしよう」
ここまでマルスとゴブリオンに会話は余りなく少し険悪な雰囲気だったのだが、ここで初めて意見があったようだ。
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