71歩目「聖都の抜け道」
行先は分かったが、マルスたちにはまだ大きな問題が立ちはだかっていた。
聖都の入り口は東西南北に延びる谷の北側の端を塞ぐ様に存在している。
つまり谷から出るためには、谷底から壁をよじ登るか、北以外の谷の端まで進む必要がある。
それほど大きな谷ではないのだが、小鬼たちをぞろぞろ引き連れて通ればそれは目立つことだろう。
古来より戦いは高所を取った方が有利と言われている。
高所だから絶対勝てるというわけではないが、高所が有利なのは間違いない。
マルスは改めて、集まった兵士たちを見る。
武器は基本的に石の斧や槍、数割ほどが錆びた金属製の武器を持ち、さらに数人は手作りの弓を携えている。
ラドリオについては(マルスは前の戦いについて何も知らないので)戦力としてカウントしない。
「このまま行ったら上からやりたい放題だな」
「何を言う、気甲拳で防御を固めて突っ切ればよいではないか。今回は俺もいるのだ」
「大鬼の英雄、頼もしいのは間違いない。ただし敵をなめ過ぎだ。ダメージを与えられなくともやりようはある」
魔法でどこまでやれるのかは知らないが、それほど大きくない谷底だ。
油を流して炎責めにするなり、大量の水で押し流すなり幾らでも方法はある。
マルスならば大量の泥を用意して行軍速度を制限したのちに岩を投げ込む。
自分の腰丈ほどまで泥沼になれば小鬼はほぼ身動きがとれなくなる。
気甲拳は24アワずっと維持できる盾ではないそうで、意志の強い小鬼で一時間、オグリアスでも三時間が限界だそうだ。
「つまり、ぞろぞろ歩いて行けばいい的だが、急がないと先に出たであろう木乃美に追いつけない。同人数を絞るかだな」
「それなんですが……北の荒野に抜ける道ならございます」
「……どうしてもっと早く言わない! 余計な時間を食っただろうが!」
恐る恐る切り出した小鬼にマルスは思わず怒鳴る。
ずっと考え込んでいるので言い出せなかったそうだ。
北への抜け穴は、小鬼たちの万が一の脱出経路の一つなのだそうだ。
聖都から北へ進む岩の道を抜けると荒野の中にある洞窟の枯れ井戸の中に出るそうだ。
「お前たちは随分手堅く準備しているのだな」
「いえ、この聖都同様有り物を使っているだけにすぎませぬ。井戸自体も古い文明の物らしく小鬼らしさはございません。王国の人間たちが気づいていたとしても、特に価値のない遺物程度にしか思っていない筈です」
「でも荒野の中にあるちょうどいい洞窟なら、連中が野営に使っていたぐふっ」
「黙れ」
余計なことを言いそうになったラドリオの鳩尾にマルスが一発入れる、口に出してしまうと本当にそうなっていそうだからマルスも言わないでいたのだ。
いつもお読みいただきありがとうございます。
二日連日遅刻、ちょっと身を引き締めないと。




