62歩目「歓迎の宴」
交渉を終えて無事に(黄は全身に切り傷など細かい怪我をしていたが、木乃美に戻ったので見た目は怪我無しだ)帰ってきた勇者一向(小鬼から見れば)を待っていたのはまたしても目隠しだった。
「いくら恩人とはいえど、聖地の扉の開け方は代々小鬼にのみ伝えられてきました。皆さんには申し訳ないのですが、ご容赦ください」
ちなみに出る時も似たような目隠しをされていた。
最初の時は早い段階で目隠しを取ってもらえたのだが、今回は中々外してもらえない。
暗闇の中手探りで洞窟を進むような物なので、木乃美を初めマルスもラドリオも地面の小さな窪みや出っ張りに躓いて転びそうになる。
そのたびに周囲にいる小鬼……三人は周囲が見えないので恐らくではあるが、彼らに助けられる。
「おい」
「少々お待ちください、もうお外しします」
転びかけるたびにマルスの苛立った声が響くのだが、それでも頑として外そうとしない。
自力で外そうとすれば、
「もう少々! もう少々お待ちくださいませ!!」
とやや切羽詰まったような声で制しされる始末。
三人の感覚では既に洞窟を抜けて大きな空洞へ下っている所だ。
流石に下り坂は外してほしいのだが、
「ここからは危ないですかお手を……マルス様は抱えさせていただきます!!」
半ば無理やり手を取られ、さらにマルスは胴上げでもされるかのように抱えあげられてしまった。
「マルス君、暴れちゃダメですよ?」
「分かっている……暴れたら危ないのは明白だ」
マルスのイライラがピークに達しかけた頃、ようやく三人の目隠しが外された。
「「「お帰りなさいませ勇者様!! 我ら小鬼の危機を救っていただきありがとうございました!!」」」
大広間に響く皆の感謝の声と、精霊の石を細かく砕いたと思われるキラキラ光る粉がふりまかれる。
集会所の前には時間のない中集められたであろう不揃いな岩のテーブルが、布で綺麗に飾られ、大小さまざまな肉料理がおいしそうな湯気と匂いを振りまいている。
中には貴重なキノコや果物を使った料理も並べられていた。
「此度は我々の危機を救っていただきありがとうございました……細やかではありますが宴のご用意をさせていただきました、ゆっくりとお寛ぎください」
小鬼の指導者が前に出て一例をすると、若い小鬼たちによって、木乃美とマルスには美味しい水が、ラドリオにはお酒がふるまわれる。
「なんかこの世界に来て初めていいことをしたって気分だね」
「……まあな」
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