61歩目「定期報告2」
「弱点とかないんですか?! 強制停止スイッチとか! 致命的な欠陥とか!」
「んー……スイッチとかはないけど、致命的な欠陥はあるよ?それは……」
通信越しにトーラが黙り込み、バリーも思わず黙り込んで通信機に耳を傾ける。
「高性能すぎて人間は愚か専用に調整した人造人間でも制御できないこと!!」
「それを乗りこなしてる馬鹿がいるんですよ! 馬鹿師匠!!」
思わず通信機を投げ捨てようとした手を耳に戻す。
「どうやって乗りこなしてるんだろうねぇ……普通に計器を見て調整しようと思ったら目が十個でも足りないし腕は三倍必要なんだけど」
「さあ? 至って普通の人間の体の様に見えましたけど。恐らく勘じゃないですか」
「というわけで、特等星クラスの英雄をねじ伏せる様な謎の英雄、暫定魔王に加えて戦略級の錬金兵器を乗りこなす変態。更に上からの連絡で、帝国から正式に小鬼に関する通達が来たよ」
「もうですか!?」
あまりの仮想敵国の事務能力の高さと決断の速さにバリーは息をのむ。
仮に王国が同じ手続きをした場合、まず結果が持ち帰られ書類が作られるまで最短でも一日。
さらにその書類が担当の事務方と領主の目に通るまで……書類があまり溜まってないことを前提としても数日。
その後王都に持ち込まれるまでに数日、領主の貴族本人が提出するとなると、さらに倍の日程はかかる。
その後王都の議会に持ち込まれ審議が成される。
審議に対して完全に根回しが住んでいて、協議が茶番だとしても一日かかる。
そして出来上がった無駄に仰々しい長々とした書類が帝国に送られる、最短でも一週間以上だ。
「皇帝の独裁と部下の実権の把握能力、そして機械技術の恐ろしさだねえ。あればっかりは魔法で再現しようとしても難しい」
「文章を秘匿しつつあっという間に遠方に送る技術ですね、王都にも直通が設置されているとか」
「秘匿情報化しているから私らじゃあ解析できない。機械系の英雄はほぼ定刻に現れるから王国に手持ちはいないし。おっと話が逸れた」
こほんと小さく咳払いをして、トーラは真剣な声色で続ける。
「分かっていると思うけど、もう小鬼に手出しは出来ない。そんなことをしたら敵に大義名分を与えることになる」
「しかし! 奴らは魔王に殺人鬼、野放しにするわけには!」
「バリー……二度は言わない。私は理解しようとしない弟子は嫌いだ」
最低限の仕事をしたとか、気にしないで帰ってこいという師匠の声を聞き流しながら、バリーは丁寧に挨拶をして通信を切る。
「分かっていますよ……小鬼には手を出しません」
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