57歩目「帝国の要求」
時間は少し前にさかのぼる。
錬金馬車が見えなくなり、さらにしばらく走ったのちに帝国の乗り物はやっと止まった。
「ここまで来れば大丈夫だろう、万が一近づいてきてもレーダーですぐわかる?」
「レーダー?」
「……遠距離から人を探知する機械と言えば分かってもらえるかな?」
乗り物、木乃美はクルマといっていたが、その頭上でくるくる回っている物がレーダーなのだろう。
風もないにも回っている、というより何かを捕らえるために回っているようにマルスには見えた。
「では改めて取引を始めよう。しかし幼い顔をして君もなかなか酷い男だ。あんな少女を囮にするなんて」
「適所適材というやつだ。つまらん話は良い、本題に移ってもらおうか」
画面の前にわざわざ机を置き、正面にマルス、横にどことなく不安そうなゴブリース、そして背後にチラチラと木乃美が戦っている方を気にしているラドリオという構図だ。
「では簡潔にいこう。こちらとしては鉱物の入手と亜人種の『保護』を目的としている。差し当たりそちらに対して炭鉱監査官と保護官を派遣し、小鬼保護区としたい。そのための人員と物資を用意しよう。さらにこちらを物資をそちらに提供することも可能だ」
「なんと!?」
小難しいことを少将は言っているが、要するに
「帝国は種類を問わず鉱物が欲しい、そして亜人種が自分たちに反抗しない様に監視しておきたい。そのために帝国の人間を小鬼の上に置き、その上兵隊で保護という名の監視をする。こちらの機嫌をとれるようならば食い物も分けてやろう」ということだ。
はっきりいって完全降伏宣言にも等しい。
「ああ、それで構わない。ではルートを決めようか?」
「ええ?」
しかしマルスは彼らしからぬ笑顔でこれを了承すたことにゴブリースとラドリオは驚愕する。
少将に至っては、一瞬、ほんの一瞬だが落胆のような物が浮かんだように見えた。
「ルートに関しては俺に任せてくれ……王国から遠くさらに環境を考えると、これらのルートが考えられる」
「ほう……」
驚きながらもラドリオは本来の仕事、ルートについての案を出す。彼の仕事はこれで終わりだ、少将から特に質問もないことを確認すると、彼は馬車の方へと踵を返した。
「どこへいく?」
「決まってるだろ、嬢ちゃんの援護だ」
「そうか……まあいい、お前の役目は終わった。好きにしろ」
おうと返事をしてジェラートの手綱を外しながらふとラドリオは今一度マルスの方を見た。
もしや自分を解放するためにわざと先にルートについて話したのではないかと。
「考えすぎか?……まあ好きにさせてもらうとするか」
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