56歩目「撤退」
試作品の前方が青い光を発し始めたのをみてバリーは思わず通信機に向かって叫ぶ。
「副隊長! 伏せろ!!」
向こうの部隊が慌てて伏せるのとほぼ同時に、ジェラートから青い光弾が発射される。
人の頭ほどの光弾が二つ、踊るように螺旋の軌道を描きながら錬金馬車へと吸い込まれた
「うお!?」
「ひゃあ!?」
「隊長!? あれは一体!?」
離れていても立っていられないほどの衝撃と爆風がバリーたちを襲う。
これだけ距離があってもこの衝撃だ、近くにいた第二部隊は派手に吹き飛ばされて転がっていた。
全員呻きながら体を動かしているところを見ると死んではいないようだ。
「発明王トーラの作り出した禁忌の兵器を一つです。師匠の話は複雑過ぎて私でも理解しきれませんでしたが、何でも『空気を圧縮してぷらずま? 弾』にするとかなんとか。高威力すぎて連発は出来ないはずです。今のうちにこちらの馬車で負傷者の回収を―――」
指示を出そうとしたバリーの頬を銃弾が掠める。
「仕掛けておいて不利になったら逃げようなんて甘いんだよ!!」
少女の吠える声と共に今まで以上に激しく銃弾が盾に突き刺さる。
「先ほどの弾はどうやって?」
「盾と盾の隙間に銃弾を連続で叩きこんで無理矢理弾一個分を隙間の作ったみたいです」
「うぐっ!」
「隊長、跳弾でユーキが負傷!」
左腕で相手にしていた部隊が戦闘不能になったため、両腕の攻撃がこちらに集中し始めたらしい。
単純に弾数が二倍になったという話ではない、連射速度も二倍以上に上がり今まで盾の自己修復や『土地平坦』でカバーしていた防御を突破してきているのだ。
「……撤退する!」
―――
小さな破裂音と共に白い煙が王国の連中の姿を包み込む。
「普通の煙じゃねえな……ずいぶん重い感じだ」
何せジェラートで周囲を飛び回っても煙が散らせない、そして部屋に近づくと魔法や銃弾が飛んでくる。
まあそんなもので傷がつくほどジェラートは繊細じゃないけどな、怖いんだよ俺が。
「追い撃ちはしないのか?お嬢ちゃん」
先ほどまで威勢よくバンバン撃ちまくっていたお嬢ちゃんは、黙って銃を煙の方に向けたままだ。
「さすがの俺でも見えない奴は撃てねえよ。ただ向こうから視姦る感じはするから、油断は出来ねえ」
確かに随分と性格に魔法や銃弾が飛んできたような気がする。
こっちは見えないけど向こうは見えるのか? ジェラートといい錬金術っていうのは出鱈目だな。
「それで、マルスの大将の様子はどうなんだ?」
「あっちはあっちで舌で戦ってるぜ。あれで子供だっていうんだから将来恐ろしいよな」
いつもお読みいただきありがとうございます。
完全に遅刻しました。




